金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

22

新聞購読のお申込み

がんばれ!日本の金型産業特集
米山金型製作所 村松 善太郎 社長 

ナノの世界に挑む

マイクロニードルなど超精密の金型

米山金型製作所 技術

先端径0.01㎜のピンが1.2㎜ピッチで無数に立ち並ぶマイクロニードルと呼ばれる医療や化粧品向けの金型。求められる寸法公差は、±2.0μm台と超精密。米山金型製作所が取り組むのは、こうした超精密加工にこだわった金型づくりだ。

もともと(設立1989年)、デジタルカメラや弱電部品を中心に手掛けていたが、リーマン・ショックを機に受注が減少。その後、車載用コネクタなどの自動車部品をメーンとし、成形機100t以下の幅広い金型を手掛けるようになった。

超精密にこだわるようになったのは2006年頃。「今までの仕事では、検収に時間がかかり、利益が出にくい。何か付加価値のあるものを作らなければ、生き残れない」(村松善太郎社長)という危機感から補助金などを活用して、微細加工用高速マシニングセンタや、高精度測定機など最新鋭の設備を導入したのが始まり。マイクロニードル型以外にも、幅0.2㎜高さ0.1㎜の凸形状のマイクロ流路や、Ra(面粗度)10nmのライトガイド用金型など様々な微細精密金型を製作する。

こうした加工技術を会得するには、「色んな案件で事例を増やしてノウハウを積み重ねることが重要。とりあえず試しで加工するとか、無料で加工するなんてこともある」(村松社長)。毎年、10回以上の展示会に出展し、そうした案件に触れられる機会を作っている。

昨年には、工場を増設し、設備も強化した。「ナノマシンクラスの加工にどれだけ近づけるか。これに挑戦したい」とヘール加工など、今まで以上に精密な加工に取り組む考えだ。

知識・経験に伴う指導を

米山金型製作所 人

「人材育成が一番の課題」と話す村松社長。昨年まで各現場の責任者に育成を任せていたが、なかなか若手が育たず、頭を悩ませていた。

同社の従業員の年齢構成は20代から60代までと幅広く、比較的バランスも良い。ただ、「20、30代と40代以上の間に分厚い壁がある」という。それは、40代以上が、所謂「見て覚えろ」の世界で教えられてきた世代に対し、30代以下にはそれが通用しないという世代間の違いから生まれる。

村松社長は、「若手の世代は、学校でも丁寧に説明を受けながら教えられて育ってきた。それをいきなり見て覚えろと言われても難しい。逆に年配の世代は、『見て覚えろ』で教えられてきたから、その指導方法しか知らない。これこそ人材育成がうまくいかない要因」と分析する。

そこで今年から同社では、そうした差を埋めるために、まずは若手従業員が、金型に対してどれだけの知識や興味を持っているか把握することにした。「そもそもが分かってないのに、先の段階の話をしても身に付くわけがない」と金型の基礎が学べるDVDを見せて、感想文を書かせることで理解度を測った。そこで得られた結果をもとに、それぞれの理解度に応じて、今後の指導方針を決め、育成に取り組んでいく。

また、社内を複数に分けて、それぞれで独立採算制を取る方法も検討中だ。「仕事の分業化によって、自分で判断することが少なくなっている」と若手が自発的に考え、取り組まざるを得ない状況を作り、技術力の底上げを狙う。


会社メモ

村松善太郎社長

村松善太郎社長

代表者=村松 善太郎氏
創業=1989年
所在地=長野県下伊那郡松川町大島402-12
資本金=700万円
TEL=0265・36・5476
FAX=0265・36・6309
従業員数=26人
事業内容=プラスチック射出成形金型設計・製作、プラスチック射出成形金型修理・メンテナンス、金型部品製作、治工具部品製作など
主な設備=高速マシニングセンタ(碌々産業)5台、CNCジグボーラー(安田工業)1台、立型マシニングセンタ(牧野フライス製作所など)3台、横型マシニングセンタ(牧野フライス製作所)1台、ワイヤーカット放電加工機(三菱電機など)4台、形彫り放電加工機(ソディックなど)3台、平面研削盤(ナガセインテグレックスなど)3台、非接触表面形状測定機(Zygo)1台、ツールモニタリングシステム(Jeyecore)1台、3DCAD/CAMシステム(C&Gシステムズなど)12台などその他多数。


金型新聞 平成29年(2017年)5月12日号

関連記事

山内由華さん 金型技術展2022を企画、開催した【ひと】

大阪産業創造館で8月に開催した「金型技術展2022」を企画、運営した。大阪産業創造館が金型をテーマとする展示会を開くのは初めて。金型メーカーや関連企業44社が出展し、コロナ禍ながら会期1日で688人が訪れた。 金型をテー…

光洋メタルテック 新鍛造ラインを確立

リードタイム短縮、工数低減 ジェイテクトのグループ会社、光洋メタルテック(三重県伊賀市)は、従来の縦型熱間プレス工法で実現できない複雑な形状を全自動の鍛造プレスローリング工法でAT車用多段変速機に使用される遊星ギヤリング…

精密、高精度 ニーズに応える型材・部品特集

 超精密、高精度、短納期、長寿命化—。こうした高度化する金型へのニーズに対応するには、あらゆる加工技術や素材技術が必要だ。中でも、鏡面性が得られるのか、離型性が高いのか、長寿命化が図れるのかなど、金型の本質的な機能に直結…

大型金型の加工から計測まで
オークマ

高速高品位5面加工門形マシニングセンタ「MCR-S」 オークマの公式製品紹介は、こちらから 現場の課題  金型の加工において、加工時間そのものはもちろん、加工後にワークを3次元計測機に搬送、据え付ける時間や、型合わせ、磨…

金型サロン インテックス大阪で4月22日開催

環境負荷軽減について講演 型技術協会は4月22日、金型関係者交流会「金型サロンin大阪」をインテックス大阪(大阪市住之江区)で開催する。今回はパナソニックの山本英郎氏が環境問題に対するこれまでの活動を中心としたエコマテリ…

トピックス

関連サイト