金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

23

新聞購読のお申込み

オギハラ 長谷川 和夫 社長
〜新素材の金型に挑む〜

いかにトライ数を減らすか

長谷川和夫社長

 1954年生まれ、静岡県出身。77年日本大学卒業後、オギハラ入社、86年オギハラ・アメリカ・コーポレーション(現タイサミット・アメリカ・コーポレーション)、2013年同副社長、16年1月オギハラ社長に就任。

―アルミ材用金型に取り組んだきっかけは。
 「1988年にホンダのNSXに関わったのがきっかけ。オールアルミボディを採用した自動車で、当社では一部の金型を手掛け、量産はほぼ全てのアルミ部品の生産に携わった。当時は材料の開発が進んでおらず、プレスや溶接など加工に苦労した記憶がある」

―当時に比べて、何が変わりましたか。
 「材料と接合技術の進化が大きいのではないか。アルミ材の開発が進み、絞るときに割れ難くなるなど、当時に比べて格段にプレスしやすくなった。また、接合技術も進歩した。抵抗溶接だけでなく、トグルロック、リベット留め、接着剤など様々な工法が開発され、アルミ材で自動車を組めるようになっている」

―一般のプレス用金型との違いは。
 「最大の難点はスプリングバックだろう。高張力鋼坂(ハイテン材)と同じくらい大きいので、設計どおりの形状を出すのが難しい。当社では、10年ほど前から導入した3Dスキャナを使って工程ごとに全てスキャンし、データを蓄積して成形シミュレーションの精度を上げている。ただ、トライアウトの回数は減っているが、まだまだ課題は多い」

 「また、せん断ピアス加工などの加工くずの処理も課題だ。アルミは加工くずが出やすく、これが加工面につくと面品位の悪化に繋がるなどトラブルの原因になる。金型にディンプル(くぼみ)を付けて加工くずを逃がす処理や、ブローを取り付けて吸い込むほか、鏡面にしてバリを抑制するなど様々な工夫を加えている」

技能に頼らない作り方

―今後のアルミ材活用の動きをどう見ますか。
 「30年以上前からフォード社(米)のリンカーンでは、フードパネルにアルミ材を使っていた。アメリカでは当時から『フタ物はアルミ材』という考えが主流だった。今後は日本の自動車メーカーでも採用が進むだろう。また、アルミと高張力鋼坂(ハイテン材)、アルミと炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など複合化の流れも拡大していくと見ている」

アルミ材活用という点ではダイカストという選択肢もあります。
 「プレスの強みは量産性。生産数やコストによって使い分けていくことが重要だろう」

―今後の展開は。
 「シミュレーションの精度を上げ、戻り作業のない生産体制を構築する。さらに、アメリカや、中国工場の量産で得た情報をフィードバックして金型に織り込み、規格化することで、人の技量に頼らない金型づくりに取り組んでいく」

―金型メーカーができることは。
 「今後もアルミに限らず様々な技術開発が進むだろう。コストやデザインなどあらゆる側面から最適な車づくりを追求するのが完成車メーカー。我々金型メーカーは、常にそうした動きに対応できるように準備しておくことが重要だ」

金型新聞 平成29年(2017年)5月12日号

関連記事

【インタビュー】京セラ 執行役員 機械工具事業本部長・長島 千里氏「微細加工市場に参入 」

大手切削工具メーカーの京セラは9月、高硬度材加工用(微細加工)のソリッドボールエンドミル「2KMB」を発売し、微細加工市場に参入した。これまで旋削チップなどを強みとしていた同社が焼入れ鋼など高硬度材を使用する微細加工市場…

冨士ダイス 西嶋守男社長に聞く<br>世界で認知されるブランドに

冨士ダイス 西嶋守男社長に聞く
世界で認知されるブランドに

生産効率向上し、需要増に対応  耐摩耗工具メーカーとして国内トップシェアを誇る冨士ダイス。超硬合金製のダイスやロール、製缶用金型、ガラスレンズ成形用金型など耐摩耗工具に特化した事業を展開し、来年には創業70年を迎える。「…

この人に聞く
碌々産業 海藤 満社長

加工技術者に新たな呼称  ミクロン台の誤差に収まる精度、鏡のように美しい仕上げ面—。こうした加工は、卓越した技術力と並々ならぬこだわりを持った技術者が高精度な機械を駆使して初めて実現する。この職人と呼ばれる人たちを「マシ…

芝浦機械 工作機械カンパニー
工作機械技術部第一開発課 シニアエキスパート 天野 啓氏
〜鳥瞰蟻瞰〜

目指すは「恒・高精度化」 それを見極められる人の育成が、より重要に  超精密金型の世界で目指すべきは「加工工程の『恒・高精度化』」だと考えています。どこで成形しても高い水準で同じ品質が得られること。つまり、高いレベルでの…

新日本工機・中西 章社長「ものづくり力向上を支援」

「30年間お客様とものづくりを改善し続けられる存在でありたい」—。そう話すのは一昨年に新日本工機の社長に就任した中西章氏。ライフサイクルの長い大型機械が強みなだけに、「長期間にわたって、顧客のものづくりをサポートするのは…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト