金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

30

新聞購読のお申込み

ものつくり大学 西 直美教授に聞く
ダイカスト金型の未来

成形技術の進化で変わる金型

構造部品など増える

 電気自動車(EV)が金型づくりにも大きな影響を及ぼすことは間違いない。とりわけ、エンジンがなくなることでダイカスト型の減少を懸念する声も多い。元リョービで、日本ダイカスト協会の技術部長を務めた、ものつくり大学の西直美教授にダイカスト製品や金型の将来を聞いた。

西直美教授ーEVでエンジンンの減少が懸念されている。
 「長期的には、エンジンやミッションなど大型のダイカスト品は減っていくだろう。一方、EVでもバッテリケースなどはなくならないし、ヒートシンクや構造部品などは増える可能性もある」。
 「大型メーカーが小物に進出し競争が厳しくなることもあるだろう。さらに、樹脂、ハイテンなどマルチマテリアル化が進むので、他分野と競争も厳しくなる。ダイカストの優位性を保つ技術革新が必要だ」。

ー例えばどんなもの?
 「鋳造品のガスを減らすことができる高真空ダイカストなども一つだ。型内を100ヘクトパスカル(大気圧の10分の1)以下の状態にすることで、鋳造後のガスを減らせ、薄肉成形も可能になり、熱処理や溶接ができるので、今後もっと増えていくと思う」。

ー金型も変わる?
 「真空を維持するために、金型にOリングを埋め込んだり、押出ピンにもシールを張ったりするなどシール技術がより重要になると思う」。

ー構造部品などでもアルミ化の提案も増えている。
 「薄肉化の一方、エンジンマウントやナックルなど構造部品の厚物などもアルミ化が期待されている分野だ。ここでは、低速で溶湯を充填する層流ダイカスト成形が増えている。厚物で熱量が多いため、長寿命の型が必要になるので、コーティングなど表面処理技術が重要な要素になる。同じ厚物向けでは、低圧鋳造とダイカストを組み合わせ、小さなマシンで大きな部品を成形できる方法なども出ていている」。

ー材料面での進化はいかがでしょうか。
 「これも重要な視点だ。アルミとして使われているのは鋳造しやすいADC12が9割以上を占める。しかし靭性や延性が低いという欠点があり、自動車の重要保安部品には適用できない。そこで最近では、鉄の含有量を減らし、マンガンを添加した合金などが開発・実用化されており、自動車のサブフレームやアーム類などに採用されている。また、熱伝導率を高めたヒートシンクに適した材料なども開発されている。こうした素材の開発もチェックしておくべきだ」。

ー今後必要なことは。
 「鋳造、材料両方の技術や知見が必要になる。マルチマテリアル化が進むなかで、金属積層造形の活用なども一部で進んでいるように、ダイカストの優位性を確保する技術革新を続けていくことが重要だ」。

金型新聞 平成29年(2017年)12月10日号

関連記事

【特集:2023年金型加工技術5大ニュース】3.自動化

プログラム作成やワーク搬送 人手不足への対策だけでなく、品質向上の観点からも自動化ニーズは高まっており、それに対応する技術は進化している。また、プログラム作成やワークの搬送など自動化の領域が多様化している。 金型づくりで…

【特集】金属3Dプリンタ<br>金型づくりはどう変わるのか

【特集】金属3Dプリンタ
金型づくりはどう変わるのか

▶︎▶︎採用目指す動き広がる ▶︎▶︎金沢大学古本達明教授に聞く 金属3Dプリンタの未来「将来不可欠なツールに」 ▶︎▶︎事例①日産自動車 ダイカスト部品で活用探る ▶︎▶︎事例②J・3D ハイブリッド構造でコスト抑制 …

既存設備で増産に成功した南信精機製作所のAM活用術

金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…

横田悦二郎氏

【プレス型特集】強みを維持し続けるには…
日本金型工業会 学術顧問 横田 悦二郎氏に聞く
プレス金型の強みと未来

ゼロベースで知恵絞る 得意な分野で連携を 顧客の生産技術をサポート  日本金型工業会の学術顧問を務める、日本工業大学大学院の横田悦二郎教授は、日本のプレス金型の強みを「他の型種に比べ、技術の蓄積が生かせる部分が大きい」と…

田部井製作所 CAE活用し、金型改修を削減【特集:尖った技術を使いこなせ】

要求精度と短納期に対応 自動車のインナー部品(ドアインナー、フロアなど全般)向けプレス金型などを手掛ける田部井製作所はシミュレーションソフトを活用し、パネル精度の向上と金型改修回数の削減に取り組んでいる。顧客からの高まる…

トピックス

関連サイト