常識にとらわれない金型 イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る 〜新ビジネス〜 1975年生まれ、静岡県出身。98年立命館大学卒業後、富士通に入社し、システム販売などに従事。2004年稲垣金型製作所に入社、18年…
IT、汎用機、資格の取得 技能者の育成、新時代
~匠の技 機械や工具で~
最適な金型の構造を考えたり、納期短縮やコスト削減の手法を生み出したりできる技能者の育成がこれまで以上に重要になっている。従業員の減少や分業化で金型を総合的に理解する人が減っているためだ。金型づくりで差別化できる工程が金型構想や設計、組付け、仕上げなど人による部分がより大きくなっていることもある。こうした中、金型メーカー各社ではスマートフォン(スマホ)などのデジタルツールやシミュレーションソフトを活用したり、汎用機を使ったり、外部資格の取得を推奨したりするなどして、技能者の育成を図っている。
中核人材には指導力も
「設計と組付け、仕上げを重点的に強化する」。ある金型メーカー社長はそう言い切る。「機械の進化やAIの登場で、組付けなど人でしかできない部分に価値が生まれる可能性が高い」からだ。別の金型メーカー社長も「設備も重要だが、型構造や生産技術を知り尽くす技能者の有無が競争力の源泉になる」と話すなど、技能者の育成はこれまで以上に重要になっている。
とはいえ「体系的な教育は難しく、どうしても現場で教えるOJT(オンザジョブトレーニング)が主流になる」という声も多い。そんな中で、各社工夫を凝らしながら、技能者を育成している。
近年はIT技術を活かすメーカーも多い。あるプラスチック金型メーカーではスマートフォンやカメラで磨き職人や熟練技能者の動作を撮影。「なぜここを磨いたのか」、「その際に気を付けること」などをメモにして添付し、遠隔の工場の人材育成や、マニュアル作成に役立てている。
解析ソフトを育成に活かす企業も。あるプレス型メーカーでは、成形品とシミュレーション結果を比較し、「なぜ想定と異なる結果が出たのか」などを若い技術者に考えさせるそう。「熟練者は答えを知っているが、考えさせることが重要」と社長は言う。
IT活用の一方、汎用機を使って技能者を育成するメーカーもある。その目的について、社長は「技能者に必要な音やにおいなど、違いを見つける能力は自らの手で加工しないと身につかない」という。汎用機のスキルはNC加工の技術を高めるのにも役立つ。汎用機を学んだばかり技術者は「汎用機は手順を考慮しないと加工できないこともある。今ならもっと効率よくNC機も使えると思う」と話す。社長も「機械性能を極限まで引き出すには機械の基礎を知ることが必要」という。
大学などの外部機関を使う企業もある。自らも技術のMBA(経営学修士)と言われるMOT(技術経営修士)を持つ経営者は社員にも取得を薦めている。「技能を活かすマネジメント力もこれからは必要になる」との考えがあるからだ。
昨年開始した日本金型工業会の「金型マスター認定制度」も同じ視点だ。同工業会の小出悟会長もマスター制度について「腕が良いだけでは良い人材とは言えなくなっている。中核を担う人材にはマーケティングやマネジメントといった能力が求められる」。
いつの時代も人材育成の重要性は指摘されてきたが、小出会長はこう警鐘を鳴らす。「自動車業界など外部環境の変化に対応できても、人手不足によって内部から産業が瓦解しかねない」。技能者の育成は待ったなしだ。
金型新聞 平成30年(2018年)9月10日号
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