金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

29

新聞購読のお申込み

【インタビュー】本田技研工業・田岡秀樹氏「自動車は『CASE』から『PACE』へ、金型の重要性は変わらない」

本田技研工業 四輪事業本部ものづくりセンター 完成車開発統括部車両企画管理部 生産製造企画課製造デジタル・グループ エキスパート・エンジニア 田岡  秀樹氏

CASEから「PACE」へ

金型の重要性変わらず

 アフターコロナの世界で、自動車はどう変わっていくのでしょうか。コロナ前と言っても、たった10か月前ですが、自動車業界は「CASE(つながる、自動運転、シェア、電動化)」にどう対応していくかが課題でした。しかしコロナによって、この潮流は大きく変わり、自動車はCASEから「PACE」になっていくとみています。

 PACEとは何か。まず、医療従事者を安全に運ぶには「A=自動運転」は不可欠です。「C=つながる」機能はユーザーの利便性には必要な要素です。電動車の拡大スピードは見極める必要があると思いますが、環境問題から「E=電動化」の流れは変わらない。

 コロナで最も影響を受けるのは「S=シェア」でしょう。感染リスクを考えると、自動車をシェアする流れは相対的に弱まります。その代わりになるのが、「P=パーソナライズド」だと思います。個人的な移動手段や、嗜好品としての自動車に対するニーズです。Sはシェアではなく、嗜好品に不可欠な「スタイリッシュ」になると思います。

 では、PACEで自動車や金型はどう変わるのか。結論から言えば金型の重要性は変わりません。むしろ、よりその重要性は増すと思います。しかし、コロナ前から自動車業界は「プレミアム」と「グローカル」という2つの方向がありましたが、Pでそれがより鮮明になると思います。

 具体的にみていきましょう。嗜好品のプレミアムブランドとして代表的なBMW。同社の最上位機種の「7シリーズ」では、カーボンコアボディを採用するなどハイエンドな自動車づくりを進めています。日本では、今年のワールドカーデザインオブザイヤーを受章した「マツダ3」が好例でしょう。デザイン志向が強く、複雑な形状を採用しており、デザイン特許を取得しています。

 一方、グローカルでは、ダイハツやホンダが挙げられます。ダイハツの「コペン」は、個人の嗜好を満たすため外装品の着せ替えが可能です。ホンダの「N‐BOX」はホンダ史上最も早く販売が200万台に達した車種ですが、日本ならではのローカルな軽自動車でパーソナルな移動手段です。

 プレミアム、グローカルどちらの方向でも、金型が無ければ実現できません。カーボンコアボディや複雑形状には高度な金型が必要です。コペンでは外装品を効率よく作る金型が重要ですし、私が携わった「N-BOX」も金型技術がなければ実現できませんでした。

 つまり、PACEの時代でも金型は重要であり続けるし、もうすでにその変化に対応し始めています。だから、金型メーカーの皆さんには、ひるまずに、自らの技術や強みを見つめ、進んで行って欲しいと思います。

 とはいえ、どんな時代でもリーダーはデータに基づき、仮説を立て、未来予想図を描き続けなければいけません。そこで、最後に私なりの4つの未来の方向性を紹介したいと思います。

 1つ目は「車はより人の脚になる」ということ。ホンダだとスーパーカブのような簡易な移動手段が求められると思います。

 2つ目は「どこでも仕事ができるようになる」ので、1つ目と同じく、ちょっとした移動に伴う、パーソナルな移動手段が必要になると思います

 3つ目は「車はより物を運ぶ補助道具になる」ということ。4つ目は「バーチャルとリアルの融合が加速する」ということ。例えばシミュレーション技術。これまでのように塑性、塗装、溶接、組立など工程ごとでなく、自動車全体で解析を進めることなどが考えられます。

 いずれにせよ、アフターコロナの世界でもPACEの時代になっても、金型屋はすでに前進しています。今後も変わらず、自らの強みを見直し、他社にできない、それぞれの「模倣困難性」を追求していくことが大事だと思います。

金型新聞 2020年11月10日

関連記事

マーポス 切削、プレス加工の監視システム<br>金型分野で事業領域拡大

マーポス 切削、プレス加工の監視システム
金型分野で事業領域拡大

 マーポスは1952年にイタリアで設立され、70年に日本に進出。自動車部品の計測装置や研削盤の定寸装置を始め工作機械の制御・計測装置などを手掛ける。特に金型分野ではタッチプローブでの工具やワーク計測によって金型の高精度加…

ALPHA LASER ENGINEERING 市川修社長インタビュー

研削力高いセラミック砥石 ALPHA LASER ENGINEERINGは昨年11月、独自ブランドの金型用セラミック砥石を発売した。優れた研削能力や耐熱性が特長で、広がる金型リユースの需要に応えていくという。市川社長に開…

米谷製作所 メガキャスト向け超大物金型に挑む【特集:自動車金型の未来】

企業連携で金型技術確立へ EVシフトによって、需要減少が見込まれる内燃機関(ICE)部品の金型。シリンダヘッドやシリンダブロックなどのダイカスト金型を手掛ける米谷製作所はその影響を受ける1社だ。米谷強社長は「今後、内燃機…

金型の異常をAIで検知するカメラシステム【金型応援隊】

AI・ロボット開発のベンチャー企業a‐roboは2023年2月、プラスチック成形中の異常を検知し、成形機を制御するカメラシステム「GROW‐V」を発売した。 カメラの画像情報をもとにAIが金型の異常を検知する。既存のシス…

ケイ・エス・エム 金型技術生かし、医療やロボに参入【金型の底力】

徹底して顧客の声を聞く 高温の射出成形用金型を得意とするケイ・エス・エムは医療機器分野への参入やロボット販売など事業の多角化を進めている。新事業の立ち上げで苦労する企業が多い中、成功しているのは「金型技術をコアにものづく…

トピックス

関連サイト