金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JUNE

02

新聞購読のお申込み

フジ 金属積層造形で異種材金型を製造【金型の底力】

自動車やオートバイ用エンジンなどの金型を手掛けるフジは、金属積層造形(AM)と5軸複合加工ができるDMG森精機の「LASERTEC65 DED hybrid」を2022年6月に導入した。国内で約10台しか導入されていない機械を活用し、異種材料を結合(バイメタル)した付加価値の高い金型作りや補修する金型の長寿命化に取り組む。

導入した金属積層造形機「LASERTEC 65 DED hybrid」

設備投資をした背景として、市場拡大を続ける電気自動車(EV)の台頭がある。フジは自動車やオートバイなどのエンジン部品のアルミ鋳造金型を主に手掛けており、創業50年で4000型以上の納入実績を持つ。

同社は、エンジン関連の仕事が売上の大半を占めており、EV化の影響を免れない。「今後エンジン車の絶対数が減り、競争の激化が予想される。この流れに対抗するには、付加価値の高い金型作りや成長が期待される航空・宇宙関連の特殊部品製造などに取り組む必要がある」(北川巡哉社長)。

金属AMで製造したバイメタル金型

付加価値の高い金型を作るため、取り組んでいるのがバイメタルの金型作りだ。導入した金属AM機を活用し、耐摩耗性が求められる形状面は工具鋼、内部は熱伝導率が高い銅合金といった従来の加工法では不可能な金型を作ることができる。

バイメタルの金型を作るには、金属AMのDED(ダイレクト・エナジー・デポジション)方式を採用する必要があり、新しい機械を選んだ決め手にもなった。金型で多く使われるPBF方式(パウダーベッド・フュージョン)と比較し、速く造形できるのが特長で、金型補修にも適している。

本社工場

「DEDと金型を掛け合わせた市場はブルーオーシャン(未開拓市場)。市場が成熟する前に機械を使いこなせれば、他社との差別化ができる」(北川社長)。50年間培ってきた金型作りの技術と相性も良く、同社の特長を活かせるのも大きいという。

また金属AMを活用し、補修する金型の長寿命化にも取り組んでいる。DED方式による金型補修は、TIG溶接による補修と比較し、熱疲労を軽減できる。これにより、金型の寿命が3倍近く向上した研究結果もある。

金型の長寿命化に加え、補修にかかる時間も短縮できる。従来の金型補修は損傷した領域を除去した後、TIG溶接、仕上げ加工という3つの段取りが必要だった。しかし、金属AMと5軸複合加工ができるハイブリッド機を活用することで、金型補修がワンチャックで完結する。「溶接にかかる時間は従来と比較し、8分の1程度。段取り時間なども考慮すると大幅に時間短縮できる」(北川社長)。

これらの新しい取り組みに興味を持つ企業は多く、「設備投資前と比較し、取引先も約3倍に増えた」(北川社長)。今後は、航空・宇宙関連の特殊部品製造にも注力する。

同社は、金型業界の「フロントランナー」を目指し、日々挑戦を続けている。「現状維持は衰退に過ぎない。将来の夢と希望から逆算して、目標設定する集団を作ることが重要だ。夢なき所に人は育たず。それを当社のポリシーとして社会に貢献したい」(北川社長)。鋳造用金型の設計製作を軸として、50年間走り抜けてきた同社。ここからさらに50年継続していく企業を目指す。

会社の自己評価シート

未来に投資する力、チーム力に9点をつけた。「将来の夢や希望から逆算し、目標設定している」と北川社長。先行きが不透明な外部環境の中でも、未来を見据え、積極的に投資を行っている。

会社概要

  • 本社: 埼玉県川口市領家2-22-12
  • 電話: 048・224・7161
  • 代表者: 北川巡哉社長
  • 創業: 1970年
  • 従業員: 110人(連結)
  • 事業内容: アルミ・鋳鉄部品の鋳造用金型、各種治具の設計・製作、特殊部品の積層造形など

金型新聞 2023年5月10日

関連記事

―スペシャリスト―吉備NCグループ<br>極める精密放電

―スペシャリスト―吉備NCグループ
極める精密放電

障害者を技術訓練 ±1ミクロンの要望に応える 手掛ける領域「何でも」 経済産業省の統計によると、2013年の金型メーカーの事業所は15年前に比べ、6割強の8000社程度にまで減っている。金型の供給力低下も問題だが、それ以…

この人に聞く
オークマ 家城 淳社長に聞く

 令和元年に新社長に就任したオークマ・家城淳社長。市場が不透明化している中、「機電情知一体」「日本で作って世界で勝つ」を掲げるオークマの今後について家城社長の思いを聞いた。  家城淳社長愛知県出身。85年大隈鉄工所(現オ…

黒田製作所 会長 (岐阜県金型工業組合 理事長)黒田 隆氏
〜鳥瞰蟻瞰〜

若者の興味を引け 金型はものづくりの喜びがある広く知られる業界へ  若手を育てることは、金型メーカーにとって技術の伝承はもちろん、業界の活性化という点でも大切なことです。量産のものづくりがある限り、マザーツールである金型…

冨士ダイス 西嶋守男社長に聞く<br>世界で認知されるブランドに

冨士ダイス 西嶋守男社長に聞く
世界で認知されるブランドに

生産効率向上し、需要増に対応  耐摩耗工具メーカーとして国内トップシェアを誇る冨士ダイス。超硬合金製のダイスやロール、製缶用金型、ガラスレンズ成形用金型など耐摩耗工具に特化した事業を展開し、来年には創業70年を迎える。「…

【金型の底力】チヨダ工業 豊富な資源を活用し、新たな価値を創出

木質流動成形でSDGsに貢献 技術で差別化を図る 「木質流動を世の中に広め、木材が樹脂やアルミに変わる新たな材料として注目され、持続可能な社会作りに貢献したい」と話すのはチヨダ工業の早瀬一明社長。SDGsやカーボンニュー…

トピックス

関連サイト