金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

FEBRUARY

18

新聞購読のお申込み

黒田機型製作所 金属AMで新事業【金型の底力】

プレス金型やウレタン発泡成形金型を手掛ける黒田機型製作所は今年4月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。高い冷却効果が求められるバイオ樹脂向けの金型開発に着手する。主力の自動車業界に加え、新たな事業の柱に育てる考え。かつて木型から金型に事業転換した時と同じく、次世代に向け、新分野の開拓に挑む。

4月に導入したドイツEOS社の金属3Dプリンタ

同社は1946年、黒田隆嗣社長の祖父で宮大工だった隆政氏が創業した。木工造形に知識が深かったため、日産自動車向けの木型を手掛ける企業としてスタート。その後、木型だけにとどまらず、パネル検査用のゲージを手掛けるなど事業を拡大。「最盛期は木型メーカーとしては60人を抱えるなど、好調だった」。

とはいえ、木型は機械化やNC化の流れで減少していく。80年代後半にアルバイトとして家業を手伝っていた黒田社長は厳しい経営状況を痛感。当時の幹部社員の薦めもあり、静岡のプラスチック金型メーカーで修行し、CAD/CAMのスキルを習得した。

大型加工機でウレタン発砲成形のアルミを加工する

91年に入社してからは「何か挑戦しなければ会社がなくなる」という危機感から、ユーザーからの支援もあり、自動車パネルのトリム工程金型に参入。その後も、現在も主力の一つである、アルミ材を活用したウレタン発泡成形金型の製作を開始。のちにトリムレス発泡金型の特許も取得。こうした関連性が薄い事業の多角化について「若かったし、やるしかなかった」と笑う。

こうした事業が安定してきた中、「次」を考えざるを得なくなったのは、コロナ禍と主力の自動車業界の変化だ。「このまま引退できるかなと思っていた(苦笑)。しかし、環境変化は激しく、このままでは将来の事業継続は難しく、新たな事業の柱が必要」と判断。事業再構築補助金を活用し、ドイツEOS社の金属3Dプリンタを導入した。

設計力も強み

ターゲットはバイオ樹脂向けの金型で、自動車に次ぐ新たな柱の構築を急ぐ。社内にバイオ樹脂に明るい人材がいたことがきっかけだが、技術的にも「バイオ樹脂は成形性が悪く、シビアな型温管理が必要。金属AMなら水管造形に対応できると思った」という。また「金属AMは『導入すれば何でもできる』夢の装置ではない。造形ノウハウが差別化要素になるのも魅力。早く参入し、ノウハウを蓄積できれば競争力の強化につながる」。

さらに、目下のところは、バイオ樹脂向け金型技術の確立が最優先ながら、金属AMを導入したことで、「次の『絵』も描けそうだ」と言う。それは既存事業の検査ゲージへの適用だ。「自動車部品形状の複雑化や難構造化で、検査ゲージの構造は複雑化していて制限も多い。将来はこの分野にも金属AMが適用できるかどうか検討したい」。

黒田 隆嗣社長

黒田社長は自社の強みについて「工程削減・工法転換の提案力」だという。「検査ゲージのユニット化や、トリム工程の切れ刃にあたるセクショナルダイの単品加工などで、お客様のトータルコスト削減を提案してきたことが評価されてきた」。

金属AM導入を契機として、バイオ樹脂向け金型の製作や工法転換を提案するなど、木型から金型に参入した時と同じく、第二の事業再編を急ぐ。

会社の自己評価シート

金属3Dプリンタはもとより、大型の加工機を多く持つなど「設備力」を高く評価。木型から金型に変化したように「変化に対応する力」も高い。一方で、「PR・発信力」と「収益力」を低くみており、両要素の改善が必要とみている。

会社概要

  • 本社: 神奈川県横浜市都筑区川和町105
  • 電話: 045・931・3811
  • 代表者: 黒田隆嗣氏
  • 創業: 1946年
  • 従業員: 45人
  • 事業内容: ウレタン発泡成形金型、プレス金型、検査ゲージ、治工具の設計製作及び部品加工。

金型新聞 2023年6月10日

関連記事

【ひと】明輝 技術部・センシル クマールさん 高度な技術に挑むインド出身の金型設計者

インド・ムンバイ出身。2018年に来日し、プラスチック金型メーカーの明輝に入社した。担当は設計。自動車内外装品や機能部品など大小様々な金型を手掛けている。 金型技術者だった父親の影響で幼い頃から金型に興味を持っていた。地…

「大型レーザーや自動化に注力し、生産性向上、現場改善を提案する」 木元武一氏(ALPHA LASER JAPAN取締役COO)【この人に聞く】

独・アルファレーザー社は1994年に設立されたレーザーシステムメーカー。世界で初めて移動式レーザー溶接機を開発し、肉盛溶接現場に革新をもたらしてきた。近年では高出力モデルの開発や、3Dプリンタ事業などにも注力する。日本市…

【鳥瞰蟻瞰】福井精機工業社長・清水一蔵氏「これからの金型の価値は、生産技術支えるプロデュース力」

金型の価値が変わる これからの価値とは、生産技術支えるプロデュース力  高度な技能や経験、専門知識がなくても金型が作れる環境になってきました。なぜなら、これまで職人技と言われた金型加工は工作機械や切削工具などの発達によっ…

【ひと】ヤマシタワークス・福田 真弓さん 薬剤の金型を加工するママさんNC担当者

二人の子供を持つママさんNC加工担当者。入社のきっかけは、よくあるパート募集。応募したのは勤務時間が10時から15時までと働きたい時間に合致していたから。ただ、通常のパートと違ったのが、募集の職種が「NC加工」だったこと…

棚澤八光社 岩手工場新設、東北でシボ加工を提供【金型応援隊】

シボ加工などを手掛ける棚澤八光社は今年4月、岩手県一関市に国内10拠点目となる岩手工場を設立した。集積が進む自動車産業を中心に東北地区の顧客に対し、より迅速かつ充実したサービスを提供していく。 岩手工場には10t/10t…

トピックス

関連サイト