金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

07

新聞購読のお申込み

切削加工の領域を拡大 矢野雄介氏 (碌々スマートテクノロジー社長)【この人に聞く】

微細加工機メーカーの碌々スマートテクノロジー(東京都港区、03・3447・3421)は昨年、「碌々産業」から社名を変更した。創立120周年を迎え、これまで標榜してきた「微細加工機のリーディングカンパニーへ」から「微細加工のソリューションカンパニーへ」の変革を目指す。7月に社長に就任した矢野雄介氏に注力する取り組みや、今後の展開を聞いた。

碌々スマートテクノロジー社長 矢野雄介(やの・ゆうすけ)氏
1975年生まれ、静岡県出身。2001年東洋大学工学部卒業後、碌々産業(現碌々スマートテクノロジー)入社。22年取締役営業本部長、23年社長。座右の銘は、高杉晋作の辞世の句の一部、「おもしろきこともなき世をおもしろく」

ニーズの先を想像し、提案

注力する取り組みは。

一つはお客様の「困った」を解決すること。現場にはまだ顕在化していない「困った」がたくさん眠っている。このニーズを具現化し、解決策を提案していきたい。そのために昨年10月、「お客様困りごと技術相談室」という部署を立ち上げた。必要な技術を検討したり、適した人材を選任したり、お客様の課題解決に向けた指揮を執る指令室としての役割を担う。

なぜ、注力するのか。

加工機メーカーの差は、機械の性能面よりも顧客の課題に対してより具体的に提案できるかの方が大きいと考えている。アプリケーションとセットで提案できることが重要であり、そこに強みのある会社でありたい。ただ、当社が目指すのは「困りごと」を解決することだけに留まらない。ニーズよりもさらに先にあるものを想像して提案することだ。

具体的には。

切削加工の領域を広げることはその一つ。これまでレーザーや放電などの工法で加工していた被削材や形状を切削加工で可能にする技術開発に取り組んでいる。切削加工に置き換えることで加工にかかる時間やコストを大幅に削減できる。また、磨きなど人の手がかかる工程を極力減らす開発や提案も進めている。

機械開発の方向性は。

微細加工における複合化だ。工程集約によって、できるだけ他の工程や機械に渡らず、微細加工機の中で完結させることを目指している。再段取り無しで追い込み加工が可能なシステム「COSMOS(コスモス)」はその一例。今後は研削加工の領域を取り込みたいと考えている。

その他には。

大きいワークに対する微細加工のニーズはこれから増えてくる。例えば、燃料電池用金属セパレータといったワークサイズが大きく、高さ精度が必要なものなど。当社では現在、大物ワークに対応する高精度微細加工機「Vision(ビジョン)」の改良版を開発し、加工テストを受け付けている。あとは微細高精度加工の自動化。ワークのハンドリングだけでなく、クランプや切粉処理なども含めて提案していく。

金型業界に対して。

量産に金型が必須なのは変わらない。今後、製品側の要求精度はより厳しくなり、±1、2μmといった精度の金型が必要になる。当社はそうした金型の加工が可能な機械や技術を提供していく。

金型新聞 2024年1月10日

関連記事

~ひと~
武林製作所 技術部 山中 慎也さん(39)

指先でミクロンとらえる磨きの達人  指先はミクロンの誤差をとらえる。神経を研ぎ澄まし、砥石に力を加え、鏡面に仕上げていく。その技能で「なにわの名工若葉賞」にも選ばれた。金型磨きの達人だ。  整備士として勤めていた車の販売…

【インタビュー】京セラ 執行役員 機械工具事業本部長・長島 千里氏「微細加工市場に参入 」

大手切削工具メーカーの京セラは9月、高硬度材加工用(微細加工)のソリッドボールエンドミル「2KMB」を発売し、微細加工市場に参入した。これまで旋削チップなどを強みとしていた同社が焼入れ鋼など高硬度材を使用する微細加工市場…

久野功雄氏

【プレス型特集】
久野金属工業 久野 功雄専務に聞く
飽き性を夢中にさせたプレス金型の魅力

自動車を中心に高精度かつ複雑形状な部品の開発、金型製造、量産まで手掛ける久野金属工業。EVなど次世代自動車の部品を生産する一方、ITを活用した改善活動など社内改革も積極的に行っている。その改革を推進してきたのが入社19年…

自動車メーカーに聞く ギガキャストに取り組む理由 トヨタ自動車門野英彦氏【特集:ギガキャストの現在地】

トヨタ自動車は昨年、2026年に投入を予定している次世代EVの生産工場にギガキャストを取り入れると発表した。従来数十点の板金部品で作っていたものをアルミダイカストで一体成形することで、部品点数を大幅に削減し、生産工程を半…

【金型の底力】日本精機 金属3Dプリンタの技術や知見を蓄積

ダイカスト金型メーカーの日本精機は金属3Dプリンタを活用した金型づくりに本格的に乗り出す。7月に金属3Dプリンタ2台を導入した。きっかけはSKD61相当材で造形が可能になり、金型への適用領域の可能性が広がってきたこと。ま…

トピックス

関連サイト