金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

08

新聞購読のお申込み

切削加工の領域を拡大 矢野雄介氏 (碌々スマートテクノロジー社長)【この人に聞く】

微細加工機メーカーの碌々スマートテクノロジー(東京都港区、03・3447・3421)は昨年、「碌々産業」から社名を変更した。創立120周年を迎え、これまで標榜してきた「微細加工機のリーディングカンパニーへ」から「微細加工のソリューションカンパニーへ」の変革を目指す。7月に社長に就任した矢野雄介氏に注力する取り組みや、今後の展開を聞いた。

碌々スマートテクノロジー社長 矢野雄介(やの・ゆうすけ)氏
1975年生まれ、静岡県出身。2001年東洋大学工学部卒業後、碌々産業(現碌々スマートテクノロジー)入社。22年取締役営業本部長、23年社長。座右の銘は、高杉晋作の辞世の句の一部、「おもしろきこともなき世をおもしろく」

ニーズの先を想像し、提案

注力する取り組みは。

一つはお客様の「困った」を解決すること。現場にはまだ顕在化していない「困った」がたくさん眠っている。このニーズを具現化し、解決策を提案していきたい。そのために昨年10月、「お客様困りごと技術相談室」という部署を立ち上げた。必要な技術を検討したり、適した人材を選任したり、お客様の課題解決に向けた指揮を執る指令室としての役割を担う。

なぜ、注力するのか。

加工機メーカーの差は、機械の性能面よりも顧客の課題に対してより具体的に提案できるかの方が大きいと考えている。アプリケーションとセットで提案できることが重要であり、そこに強みのある会社でありたい。ただ、当社が目指すのは「困りごと」を解決することだけに留まらない。ニーズよりもさらに先にあるものを想像して提案することだ。

具体的には。

切削加工の領域を広げることはその一つ。これまでレーザーや放電などの工法で加工していた被削材や形状を切削加工で可能にする技術開発に取り組んでいる。切削加工に置き換えることで加工にかかる時間やコストを大幅に削減できる。また、磨きなど人の手がかかる工程を極力減らす開発や提案も進めている。

機械開発の方向性は。

微細加工における複合化だ。工程集約によって、できるだけ他の工程や機械に渡らず、微細加工機の中で完結させることを目指している。再段取り無しで追い込み加工が可能なシステム「COSMOS(コスモス)」はその一例。今後は研削加工の領域を取り込みたいと考えている。

その他には。

大きいワークに対する微細加工のニーズはこれから増えてくる。例えば、燃料電池用金属セパレータといったワークサイズが大きく、高さ精度が必要なものなど。当社では現在、大物ワークに対応する高精度微細加工機「Vision(ビジョン)」の改良版を開発し、加工テストを受け付けている。あとは微細高精度加工の自動化。ワークのハンドリングだけでなく、クランプや切粉処理なども含めて提案していく。

金型業界に対して。

量産に金型が必須なのは変わらない。今後、製品側の要求精度はより厳しくなり、±1、2μmといった精度の金型が必要になる。当社はそうした金型の加工が可能な機械や技術を提供していく。

金型新聞 2024年1月10日

関連記事

この人に聞く2015<br>天青会(金型工業会東部支部)<br>小泉 秀樹会長(ペッカー精工社長)

この人に聞く2015
天青会(金型工業会東部支部)
小泉 秀樹会長(ペッカー精工社長)

金型以外にも視野 原点から新たな発見  日本金型工業会東部支部天青会の会長に今年5月、就任した。「原点に立ち返って、色々な視点から根本を見直せるような活動をしていく」と今年度のテーマに「原点回帰」を掲げる。  天青会に入…

この人に聞く2016<br>牧野フライス製作所 井上 真一社長

この人に聞く2016
牧野フライス製作所 井上 真一社長

要望に合わせ創造と変革  「色々と教えると新しい経営はできないだろうから、あなたには多くは教えない」―。工作機械業界のカリスマ、牧野二郎前社長がそう伝えるほど、全幅の信頼を置く。 顧客重視をより進化  入社時に「機械もソ…

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –北米–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

この人に聞く
ニチダイ 伊藤 直紀 副社長

 冷間鍛造金型などを手掛けるニチダイは2018年3月期、目標としていた売上高150億円を超え、19年3月期には売上高174億円と過去最高を更新。だが、昨年から続く米中貿易摩擦や新型コロナウィルスの感染拡大に加え、主要顧客…

【ひと】明輝 技術部・センシル クマールさん 高度な技術に挑むインド出身の金型設計者

インド・ムンバイ出身。2018年に来日し、プラスチック金型メーカーの明輝に入社した。担当は設計。自動車内外装品や機能部品など大小様々な金型を手掛けている。 金型技術者だった父親の影響で幼い頃から金型に興味を持っていた。地…

トピックス

関連サイト