金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

14

新聞購読のお申込み

【新春特別インタビュー①】日本金型工業会会長・小出 悟氏(小出製作所社長)「旧態依然の手法通用せず、今こそ変わるべき時」

旧態依然の手法通用せず 今こそ変わるべき時 〜金型産業ビジョン〜

 1955年静岡県生まれ。78年に工学院大学機械工学科を卒業後、名古屋の金型メーカー高橋精機工業所に入社し、金型づくりを学ぶ。81年にアルミダイカスト金型の小出製作所に入社。その後ずっと営業畑で、国内外を営業として飛び回る。2006年に社長就任後は中国やインドやバングラディッシュに進出。19年には長崎に設計開発、人材育成の拠点を設ける。

 金型業界を取り巻く環境は変化し続けています。とくに、トヨタ自動車の豊田章夫社長が「百年に一度の変革期にある」と指摘した頃から、環境の変化に留まらず、構造が変化してきているように思います。人が採用できなかったり、IoTなど新技術が登場したり、精度要求が急激に高まったり。構造が変化しているのだから、旧態依然のやり方では通用しない。

 そして昨年のコロナ禍。神様から今変わらなければ「もう知らないぞ」と突き付けられているのだと思います。

 こうした状況の中、昨年9月「令和時代の新金型産業ビジョン」を策定しました。詳細は工業会のホームページで紹介していますが、象徴的なワードが「工場から企業へ」です。「企業」は顧客に価値を提供することで利益を追求する存在。言われたものだけを作る「工場」から脱却し、「企業」に変わらなければいけません。

 では、顧客の価値は何か。品質・納期・コストは当然ですが、環境負荷低減、社会的価値の創出など多様化しています。だからこそ、我々も強みだったもの作りや技術以外に目を向け、そこを伸ばす必要があります。

 というのも、ものを作る部分の価値が相対的に下がっているからです。昔はものを作ること自体の価値が80%くらいあった。しかし、機械やソフトの進化によって、その価値は20%程度に下がっていると思います。残りは、どう効率よく作るかといった事前の計画や仕組みを考える部分にあります。

 そこを強化するには今までのやり方では難しい。情報量や精度が飛躍的に高まる中、人が気づかないミスを減らし、的確に処理するにはIoTの活用などが不可欠になると思います。

 また、ビジョンでは、いくつか戦術を挙げましたが、その一つに「連携」があります。これも自由に考えるべきです。例えば設備共有。1社で600時間の稼働は難しいけれど、3社で設備負担して、200時間ずつ使えば600時間は可能かもしれない。総務や経理の連携があってもいい。

 こうした取り組みが必要なのは「日本の金型生産能力1兆5000億円を守る」ためです。この規模が無ければ機械メーカーも工具メーカーも我々を訪問できなくなくなるし、金型づくりのインフラが成り立ちません。再編や連携で事業所数が減ったとしても、1兆5000億円程度の生産能力は必要です。

 そのために何をすべきか。それは各社で異なりますが、ビジョンを参考の一つにしてもらえればと思います。ビジョン通りすればいいということではありません。否定して頂いてもいい。否定することは「うちはどうしようか」と考えるきっかけにもなりますから。考え続けなければ、アイデアも発想も浮かびません。

 何もせず楽をして過ごせる時代ではありません。変化に気づかない、ゆでガエルにならないように、今こそ変わるべき時だと思います。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

―スペシャリスト―ミルテック<br>精密加工の何でも屋

―スペシャリスト―ミルテック
精密加工の何でも屋

五感使うものづくり 精密打抜き用プレス金型、非球面レンズ金型、二次電池用金型及び部品、三次元形状部品、精密治具―。超精密金型や部品加工のミルテックがこれまで手掛けてきた品目の一部だ。『金と銀以外何でも加工する』と話す渡邉…

【ひと】住友電工焼結合金金型開発室長 ・栢野正治さん 技能検定への功労が瑞宝単光章に

技能検定に挑む技術者の目は普段のそれと輝きが異なるという。レベルの違う課題に出会い、技術の海の広さと、自らを知る。「受検者のそうした『成長』の一端に携われることが嬉しい」。 岡山県の技能検定委員として機械加工や放電加工を…

【新春特別インタビュー⑦】大貫工業所社長・大貫 啓人氏「売れるものをつくり、境地まで突き詰めることが大事」

売れるものをつくる 物価の高い国で勝負 境地まで突き詰めることが大事 〜海外展開〜  1964年生まれ、茨城県出身。大学卒業後、87年大貫工業所に入社。営業で新規得意先を次々と開拓する一方で、得意先とのやり取りを通じて金…

グループシナジー生かす ALPHA LASER JAPAN 木元武一社長 【この人に聞く】

ギガキャスト向け提案強化 独ALPHA LASER社のレーザー溶接機を正規輸入販売するALPHA LASER JAPAN(佐賀県鳥栖市、0942・50・9662)は今年6月、金型製作や溶接補修などを手掛けるGALAXYホ…

【金型応援隊】ジーシステム 改善重ね導き出した生産システム

多台持ちで生産効率化 ジーシステムはプレス金型用プレートなどの研磨加工を手掛ける。車の電動化や5Gの広がりを背景に電子部品向けの需要が拡大している。於保信一郎社長は、「さらに効率化して生産性を高め、需要に応えていきたい」…

トピックス

関連サイト