金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

05

新聞購読のお申込み

【新春特別インタビュー①】日本金型工業会会長・小出 悟氏(小出製作所社長)「旧態依然の手法通用せず、今こそ変わるべき時」

旧態依然の手法通用せず 今こそ変わるべき時 〜金型産業ビジョン〜

 1955年静岡県生まれ。78年に工学院大学機械工学科を卒業後、名古屋の金型メーカー高橋精機工業所に入社し、金型づくりを学ぶ。81年にアルミダイカスト金型の小出製作所に入社。その後ずっと営業畑で、国内外を営業として飛び回る。2006年に社長就任後は中国やインドやバングラディッシュに進出。19年には長崎に設計開発、人材育成の拠点を設ける。

 金型業界を取り巻く環境は変化し続けています。とくに、トヨタ自動車の豊田章夫社長が「百年に一度の変革期にある」と指摘した頃から、環境の変化に留まらず、構造が変化してきているように思います。人が採用できなかったり、IoTなど新技術が登場したり、精度要求が急激に高まったり。構造が変化しているのだから、旧態依然のやり方では通用しない。

 そして昨年のコロナ禍。神様から今変わらなければ「もう知らないぞ」と突き付けられているのだと思います。

 こうした状況の中、昨年9月「令和時代の新金型産業ビジョン」を策定しました。詳細は工業会のホームページで紹介していますが、象徴的なワードが「工場から企業へ」です。「企業」は顧客に価値を提供することで利益を追求する存在。言われたものだけを作る「工場」から脱却し、「企業」に変わらなければいけません。

 では、顧客の価値は何か。品質・納期・コストは当然ですが、環境負荷低減、社会的価値の創出など多様化しています。だからこそ、我々も強みだったもの作りや技術以外に目を向け、そこを伸ばす必要があります。

 というのも、ものを作る部分の価値が相対的に下がっているからです。昔はものを作ること自体の価値が80%くらいあった。しかし、機械やソフトの進化によって、その価値は20%程度に下がっていると思います。残りは、どう効率よく作るかといった事前の計画や仕組みを考える部分にあります。

 そこを強化するには今までのやり方では難しい。情報量や精度が飛躍的に高まる中、人が気づかないミスを減らし、的確に処理するにはIoTの活用などが不可欠になると思います。

 また、ビジョンでは、いくつか戦術を挙げましたが、その一つに「連携」があります。これも自由に考えるべきです。例えば設備共有。1社で600時間の稼働は難しいけれど、3社で設備負担して、200時間ずつ使えば600時間は可能かもしれない。総務や経理の連携があってもいい。

 こうした取り組みが必要なのは「日本の金型生産能力1兆5000億円を守る」ためです。この規模が無ければ機械メーカーも工具メーカーも我々を訪問できなくなくなるし、金型づくりのインフラが成り立ちません。再編や連携で事業所数が減ったとしても、1兆5000億円程度の生産能力は必要です。

 そのために何をすべきか。それは各社で異なりますが、ビジョンを参考の一つにしてもらえればと思います。ビジョン通りすればいいということではありません。否定して頂いてもいい。否定することは「うちはどうしようか」と考えるきっかけにもなりますから。考え続けなければ、アイデアも発想も浮かびません。

 何もせず楽をして過ごせる時代ではありません。変化に気づかない、ゆでガエルにならないように、今こそ変わるべき時だと思います。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

【ひと】BESTOWS 代表取締役・西田 勇さん 現場を知るソフトウェア研究者

大学発ベンチャーとしてBESTOWSを設立した、神戸大学工学部助教。製造AIの研究開発や産業機械・専用機などの設計・製作を手がけるアルムのCTOも務めており、AIが加工プログラムを自動で作成する「アルムコード1」の開発に…

金型企業の代弁者として情報を発信<br>日本金型工業会 小出 悟 会長に聞く

金型企業の代弁者として情報を発信
日本金型工業会 小出 悟 会長に聞く

 人材の不足や育成、CASE(コネクティビティ・オートノマス・シェアード・エレクトリック)に代表される自動車産業の変化による影響、台頭する新興国など、日本の金型産業は様々な課題を抱えている。これらに対してどう立ち向かって…

この人に聞く
パンチ工業 森久保 哲司 社長

ものづくりへの回帰 昨年11月、パンチ工業(東京都品川区、03-6893-8007)の社長に就任した。「ものづくりへの回帰」を掲げ、商品開発や加工技術のレベルアップなどに取り組み、今まで以上にユーザーの要求に応えていく考…

鳥羽工産 甦れ!往年の名車たち【金型の底力】

「コロナ禍で航空機など需要が落ち込み、試作車市場も変化している」と語ったのは鳥羽工産の傍島聖雄社長。同社は金型製作(プレスや射出成形)から量産(少ロット)まで一貫生産体制を強みに、これまで自動車の試作型や試作車の製作、航…

【金型の底力】山善金型 様々な顧客ニーズに応えられる会社に

限界を作りたくない生産工程を見える化 「様々な顧客ニーズに応えられる会社にしたい」と話すのは、山善金型の山下和也社長。同社は精密なプラスチック金型を武器に、日用品から自動車部品、医療機器など幅広い顧客を獲得。モットーは『…

トピックス

関連サイト