金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

09

新聞購読のお申込み

リーダーの条件[part1] 経営のカリスマが心掛けていること

サイベックコーポレーション 顧問 平林 健吾氏

 1944年生まれ、長野県出身。工作機械メーカー、プレス部品メーカーを経て、73年に信友工業(現サイベックコーポレーション)を設立。2009年顧問。18年旭日単光章を受賞。冷間鍛造順送工法を国内で初めて開発。メーカーと共同で設備の開発にも取り組み、リンクモーションプレス機などを開発した。座右の銘は「不撓不屈」、好きな言葉は「先見術」。

 リーダーは、全てを分かっていないといけません。自分ができないこと、分からないことは、社員に指示することはできないですからね。新しいものをどんどん取り入れ、自分で動かして、使えるということを社員に見せていく。こういうことが、リーダーには必要です。

 私も29歳で独立し、現在の会社を立ち上げましたが、金型製作は一から学びました。当時まだ出始めだったワイヤカット放電加工機を県から融資を受けて約2000万円かけて導入し、金型づくりに挑みました。当時のワイヤカットには自動結線機能がなかったので、機械の横で寝泊まりしながら、休みなく機械を動かし続けたことを記憶しています。また、CAD/CAMも一から学び、自分で試行錯誤しながら覚えていきました。

 現在、当社はメーカーと共同開発したプレス機や高精度マシニングセンタなど最新鋭の設備を導入し、金型づくりも高度化していますが、原点はここにあります。金型づくりに一から取り組み、原理原則を理解したからこそ、新しい機械や技術を取り入れることができているのだと思います。

 今はデジタル化の時代です。IoTやAIといった次世代技術を活用し、これまで我々が培ってきたノウハウをいかにデジタル化するかが、今後の金型づくりのカギになると考えています。

 これらの新しい技術がどういう仕組みで、どのように自社に取り入れることができるのか。これからのリーダーには、こうした知識を身に付け、理解することが求められると思います。そして、そこで得た知識やノウハウを自身の中に留めるのではなく、社員に伝えていくことも大事です。そうすることで、会社全体のレベルアップにつながります。

 ものづくりはこれから大きく変化します。リーダーは、この変化を敏感にとらえ、先を読んで対応していかなければなりません。それには、常に新しい情報を手に入れることが重要です。国の動きを把握することはその一つ。国の方針と異なった方向に進んでしまえば、補助金などの支援策を活用することができず、新たな設備投資も難しくなります。また、業界団体や大学、研究機関など外部の方と積極的に交流することも大事です。会社の中に閉じこもっていては、新しい情報も入ってきませんからね。

 今の金型メーカーの経営者の多くは2代目や3代目で、設備や人もある程度揃っているという状況にあると思います。こうした中で一番大事になってくるのは、「ミッション(使命)」です。自分の会社の「ミッション」は何なのか、進むべき方向は。リーダーは、こうしたことを常に頭に置いた上で対応する必要があると思っています。

 世界的に脱ガソリン車の動きが広がり、金型産業への影響が懸念されていますが、一つ言えるのは、金型は量産する上では無くてはならない技術で、今後も決して無くなることはないということ。ただし、作り方は変わっていくはずです。新しい素材が登場したり、機械がより高度化したり。先入観にとらわれず、柔軟な発想で新しい技術や新しい分野に挑戦し、変化に対応できるリーダーこそ、これからの時代に必要なのだと思います。

金型新聞 2021年2月10日

関連記事

【新春特別インタビュー⑦】大貫工業所社長・大貫 啓人氏「売れるものをつくり、境地まで突き詰めることが大事」

売れるものをつくる 物価の高い国で勝負 境地まで突き詰めることが大事 〜海外展開〜  1964年生まれ、茨城県出身。大学卒業後、87年大貫工業所に入社。営業で新規得意先を次々と開拓する一方で、得意先とのやり取りを通じて金…

この人に聞く2016 <br>C&Gシステムズ 塩田 聖一社長

この人に聞く2016
C&Gシステムズ 塩田 聖一社長

開発やサポートを強化 金型業界を支え続ける存在に  金型用CAD/CAMメーカー、C&Gシステムズの業績が回復を続けている。グラフィックプロダクツとコンピュータエンジニアリングが合併してから6年間の年平均成長率が9%を超…

粉末冶金・プラ型メーカーを買収 F&Cホールディングス 藤巻秀平社長【この人に聞く】

プラットフォーマー目指す 鋼材商社の藤巻鋼材を中核とするF&Cホールディングス(名古屋市東区、052・972・611)は今年4月、粉末冶金や樹脂金型を手掛ける山崎TECH(大阪府枚方市)を買収した。さまざまな加工メーカー…

海外人材の採用と育成の心得 佐藤 修一氏(東栄精工 社長)【この人に聞く】

人手不足や採用難で悩む金型メーカーは多い。対応策として海外人材や女性など多様な人材活用の重要性が指摘されている。しかし、そうした人材を生かすには職場の環境や社員の意識を変えるなど簡単ではない。プラスチック金型メーカーの東…

この人に聞く
オークマ 家城 淳社長に聞く

 令和元年に新社長に就任したオークマ・家城淳社長。市場が不透明化している中、「機電情知一体」「日本で作って世界で勝つ」を掲げるオークマの今後について家城社長の思いを聞いた。  家城淳社長愛知県出身。85年大隈鉄工所(現オ…

トピックス

関連サイト