金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

09

新聞購読のお申込み

【鳥瞰蟻瞰】由紀ホールディングス 代表取締役社長・大坪正人 氏「中小製造業をグループ化、優れた技術守り次代につなげる」

中小製造業のグループ化
事業に集中できる環境を整備
優れた技術守り次代につなぐ

2006年に金型ベンチャー企業から父が経営するねじメーカーの由紀精密に入社しました。そこで感じたのは企業規模が小さすぎて、あらゆる機能が無さすぎるということ。間接人員が雇用できず、事業戦略や人事、技術開発、広報などといった機能が持てない。これが今後の事業継続、成長の課題でした。

そのとき出会ったのが、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)グループ(仏)会長兼CEOのベルナール・アルノー氏の自伝でした。多くの高級ブランドを抱えるLVMHグループは、各ブランドが独立し、それぞれの個性を伸ばしながら、グループ全体の競争力を高めています。

こうした形は日本の中小製造業にも向いているのではないか。そう考えて、17年に由紀ホールディングス(HD)を設立しました。翌年、中小製造業のホールディングス会社の株式を取得し、そこから中小製造業をグループ化する事業モデルの確立を進めてきました。現在の傘下企業は、由紀精密も含めて13社になります。

グループ化で取り組んだのは、人事や広報、財務などの機能を由紀HDに集約し、グループ各社が事業に専念できるインフラを整備することでした。由紀HDには各分野のスペシャリストがおり、各社に対して現場改善の取り組みや新規開拓の営業支援などのサポートを行っています。

こうしたインフラの整備によって、グループ各社は効率良く事業を運営できます。また、事業に集中できるようになることで、これまで以上に技術や業績を伸ばすことができ、結果として優れた技術を守ることにもつながります。

日本の金型技術は、間違いなく世界トップレベルです。これまでに欧米やアジアなど世界のものづくりをみてきましたが、「これは日本には真似できないな」と思ったものは、実はほとんどありませんでした。それほど日本の技術レベルは高い。

一方で、金型ユーザーの海外生産拠点では金型の現地調達が進んでおり、今後さらなる加速も予測されます。とはいえ、全ての海外企業が日本ほどの技術を持っているかというとそうではない。ではどうなるか。高度な技術が無くても済むような製造方法や製品設計に変えてしまうのです。

そうなると、これまであった技術はいつか失われてしまいます。日本刀が良い例です。昔は優れた刀鍛冶がたくさんいたので、多くの名刀を生み出すことができましたが、今はそうした技術が残っていないため、かつてのような代物を作ることが難しくなっています。

こういう事例は現在の製造業でもたくさんあると思います。せっかく良い技術があるのに、それが無くなってしまうのは寂しいですし、もったいない。私はこうした事態をなんとかして防ぎたいのです。中小製造業のグループ化は、そのための一つの形です。今後は、これまでの取り組みで確立した「YUKI Method(ユキメソッド)」をさらに広げていきたいと考えています。

金型新聞 2021年3月10日

関連記事

キヤノンモールド 技能育伝推進課長 植武 春彦さん(56) 〜ひと〜

育成のプロ、名匠塾の塾長  社内の技術者に研削や切削など加工の基礎を教える「名匠塾」の塾長。塾生は10年間で全社員の3分の1に当たる168人。同社のものづくりを支える育成のプロだ。  入社時は「おシャカ製造機」と言われる…

日本の金型変わる経営環境 未来の扉どう開く<br>セントラルファインツール 三宅 和彦 社長に聞く

日本の金型変わる経営環境 未来の扉どう開く
セントラルファインツール 三宅 和彦 社長に聞く

研究開発が新たな道  リーマン・ショック以降需要が回復しているものの、これがいつまで続くのか。自動車の電気化やインターネットの技術革新が産業構造にどんな影響を及ぼすのか。それが、日本の金型メーカーの多くの経営者が抱く未来…

スペシャリスト<br>超硬材料 共立合金製作所

スペシャリスト
超硬材料 共立合金製作所

自動車の電動化に商機  「日本に残る分野に経営資源を投下していく」。そう話すのは「エバーロイ」ブランドで知られる、超硬材料メーカーの共立合金製作所の池田伸也超硬事業部長。同社が国内で伸びると判断するのは、①大型の超硬材料…

ヒシヌママシナリー・菱沼慎介社長 世界から選ばれる会社へ【この人に聞く】

新しい市場ニーズに対応 ダイカストマシンメーカーのヒシヌママシナリー(埼玉県嵐山町、0493・62・3311)は昨年11月、菱沼慎介常務が社長に就任した。同社はマシンだけでなく、自動化装置や金型温調機などの周辺装置も含め…

リーダーの条件Part3
いま活躍するリーダーの心得

 新型コロナで需要が減速し、自動車の電動化で産業構造が変わるかもしれない。先の見通しにくい混沌とする時代に、リーダーはどういったことを心掛け、自らの指針としているのか。時代をリードに考えを聞いた。 伊藤製作所 伊藤 澄夫…

トピックス

関連サイト