マツキ 社長 鈴木 崇嗣さん(41) 昨年、初の自社商品としてルアーのプラスチックモデル「ルアープラモ」を発売した。クラウドファンディングサイトで目標金額の500%超を達成し、現在は全国のホビーショップや釣具店などで販売…
【鳥瞰蟻瞰】由紀ホールディングス 代表取締役社長・大坪正人 氏「中小製造業をグループ化、優れた技術守り次代につなげる」

中小製造業のグループ化
事業に集中できる環境を整備
優れた技術守り次代につなぐ
2006年に金型ベンチャー企業から父が経営するねじメーカーの由紀精密に入社しました。そこで感じたのは企業規模が小さすぎて、あらゆる機能が無さすぎるということ。間接人員が雇用できず、事業戦略や人事、技術開発、広報などといった機能が持てない。これが今後の事業継続、成長の課題でした。
そのとき出会ったのが、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)グループ(仏)会長兼CEOのベルナール・アルノー氏の自伝でした。多くの高級ブランドを抱えるLVMHグループは、各ブランドが独立し、それぞれの個性を伸ばしながら、グループ全体の競争力を高めています。
こうした形は日本の中小製造業にも向いているのではないか。そう考えて、17年に由紀ホールディングス(HD)を設立しました。翌年、中小製造業のホールディングス会社の株式を取得し、そこから中小製造業をグループ化する事業モデルの確立を進めてきました。現在の傘下企業は、由紀精密も含めて13社になります。
グループ化で取り組んだのは、人事や広報、財務などの機能を由紀HDに集約し、グループ各社が事業に専念できるインフラを整備することでした。由紀HDには各分野のスペシャリストがおり、各社に対して現場改善の取り組みや新規開拓の営業支援などのサポートを行っています。
こうしたインフラの整備によって、グループ各社は効率良く事業を運営できます。また、事業に集中できるようになることで、これまで以上に技術や業績を伸ばすことができ、結果として優れた技術を守ることにもつながります。
日本の金型技術は、間違いなく世界トップレベルです。これまでに欧米やアジアなど世界のものづくりをみてきましたが、「これは日本には真似できないな」と思ったものは、実はほとんどありませんでした。それほど日本の技術レベルは高い。
一方で、金型ユーザーの海外生産拠点では金型の現地調達が進んでおり、今後さらなる加速も予測されます。とはいえ、全ての海外企業が日本ほどの技術を持っているかというとそうではない。ではどうなるか。高度な技術が無くても済むような製造方法や製品設計に変えてしまうのです。
そうなると、これまであった技術はいつか失われてしまいます。日本刀が良い例です。昔は優れた刀鍛冶がたくさんいたので、多くの名刀を生み出すことができましたが、今はそうした技術が残っていないため、かつてのような代物を作ることが難しくなっています。
こういう事例は現在の製造業でもたくさんあると思います。せっかく良い技術があるのに、それが無くなってしまうのは寂しいですし、もったいない。私はこうした事態をなんとかして防ぎたいのです。中小製造業のグループ化は、そのための一つの形です。今後は、これまでの取り組みで確立した「YUKI Method(ユキメソッド)」をさらに広げていきたいと考えています。
金型新聞 2021年3月10日
関連記事
今年4月、ダイスなど超硬合金製の耐摩耗工具や金型を手掛ける冨士ダイス(東京都大田区、03-3759-7181)の社長に就任した。自動車産業の大変革など同社を取り巻く事業環境が加速度的に変化する中、「変化に対して順応力を持…
我が社しか実現できないモノを 少し高くても選んで頂けるそれがブランド力 従来のお客様と金型メーカーには阿吽の呼吸のようにお互いを必要とする関係があり、スムーズに仕事を進める上で大切です。ですが、…
「金型づくりへのパッションが強い」—。今年4月、キヤノンモールドの社長に就いた畠山英之氏が抱いた同社への第一印象だ。その情熱を武器に、超精密金型など同社でしかできない型づくりを進める一方、海外拡大や外販強化など「事業ポー…
T・D・Cモールド 製造部 製造係 松尾 由貴子さん 加工精度±2μm以内の微細精密な金型のモデリングや加工プログラムを作成する。そのスキルは社内外でも高く評価され、昨年には工作機械メーカーの碌々産業が優れた加工技術者に…


