金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

18

新聞購読のお申込み

【鳥瞰蟻瞰】由紀ホールディングス 代表取締役社長・大坪正人 氏「中小製造業をグループ化、優れた技術守り次代につなげる」

中小製造業のグループ化
事業に集中できる環境を整備
優れた技術守り次代につなぐ

2006年に金型ベンチャー企業から父が経営するねじメーカーの由紀精密に入社しました。そこで感じたのは企業規模が小さすぎて、あらゆる機能が無さすぎるということ。間接人員が雇用できず、事業戦略や人事、技術開発、広報などといった機能が持てない。これが今後の事業継続、成長の課題でした。

そのとき出会ったのが、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)グループ(仏)会長兼CEOのベルナール・アルノー氏の自伝でした。多くの高級ブランドを抱えるLVMHグループは、各ブランドが独立し、それぞれの個性を伸ばしながら、グループ全体の競争力を高めています。

こうした形は日本の中小製造業にも向いているのではないか。そう考えて、17年に由紀ホールディングス(HD)を設立しました。翌年、中小製造業のホールディングス会社の株式を取得し、そこから中小製造業をグループ化する事業モデルの確立を進めてきました。現在の傘下企業は、由紀精密も含めて13社になります。

グループ化で取り組んだのは、人事や広報、財務などの機能を由紀HDに集約し、グループ各社が事業に専念できるインフラを整備することでした。由紀HDには各分野のスペシャリストがおり、各社に対して現場改善の取り組みや新規開拓の営業支援などのサポートを行っています。

こうしたインフラの整備によって、グループ各社は効率良く事業を運営できます。また、事業に集中できるようになることで、これまで以上に技術や業績を伸ばすことができ、結果として優れた技術を守ることにもつながります。

日本の金型技術は、間違いなく世界トップレベルです。これまでに欧米やアジアなど世界のものづくりをみてきましたが、「これは日本には真似できないな」と思ったものは、実はほとんどありませんでした。それほど日本の技術レベルは高い。

一方で、金型ユーザーの海外生産拠点では金型の現地調達が進んでおり、今後さらなる加速も予測されます。とはいえ、全ての海外企業が日本ほどの技術を持っているかというとそうではない。ではどうなるか。高度な技術が無くても済むような製造方法や製品設計に変えてしまうのです。

そうなると、これまであった技術はいつか失われてしまいます。日本刀が良い例です。昔は優れた刀鍛冶がたくさんいたので、多くの名刀を生み出すことができましたが、今はそうした技術が残っていないため、かつてのような代物を作ることが難しくなっています。

こういう事例は現在の製造業でもたくさんあると思います。せっかく良い技術があるのに、それが無くなってしまうのは寂しいですし、もったいない。私はこうした事態をなんとかして防ぎたいのです。中小製造業のグループ化は、そのための一つの形です。今後は、これまでの取り組みで確立した「YUKI Method(ユキメソッド)」をさらに広げていきたいと考えています。

金型新聞 2021年3月10日

関連記事

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –欧州–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

金型産業の未来・トヨタ自動車<br>高見 達朗氏に聞く

金型産業の未来・トヨタ自動車
高見 達朗氏に聞く

粗形材改革の〝要〟 孫の代まで続く金型産業 「金型は、常に進化させながら孫の代まで延々と続く重要産業」――トヨタ自動車ユニット生技領域長、常務理事高見達朗氏はこのほど、日本の金型産業について熱く語った。日本産機新聞の自動…

ハマダ工商 AMで新たなものづくり【金型の底力】

樹脂やプレス金型の製作から少量の成形まで手掛けるハマダ工商は今年2月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。水管を自由に設計した冷却効果の高い金型で、反りを抑えた防犯レンズカバーの成形品を提供するのが狙い…

黒田製作所 会長 (岐阜県金型工業組合 理事長)黒田 隆氏
〜鳥瞰蟻瞰〜

若者の興味を引け 金型はものづくりの喜びがある広く知られる業界へ  若手を育てることは、金型メーカーにとって技術の伝承はもちろん、業界の活性化という点でも大切なことです。量産のものづくりがある限り、マザーツールである金型…

元本田技研工業 田岡秀樹氏に聞く【特集:自動車金型の未来】

電動化に3つの方向性 電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小…

トピックス

関連サイト