新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…
【鳥瞰蟻瞰】エスアイ精工社長・指尾 成俊氏 QCD+「E(Emotion=感情)」

選ばれる企業になるために
経営者の美意識によって
顧客の感性に訴求する
当社は1986年に創業したカーボン素材などの高精度加工を得意とする従業員13人の会社です。主に半導体の製造工程で使用されるカーボン製治具などを手掛けており、半導体や電子部品メーカーなどと取引を続けています。
金型企業とは業種は異なりますが、大手メーカーのサプライヤとして事業を展開しているという点では共通する課題も多いのではないでしょうか。特に「顧客にいかに選ばれる企業となるか」というテーマはどのサプライヤにとっても重要な課題の一つです。
顧客から見るサプライヤは大きく3つのグループに分類されると思います。一つ目は必要な時だけ声がかかるグループ、二つ目は相見積もりによって常に価格や納期を競争させられるグループ、そして三つ目がメーカーにとって無くてはならないグループです。
我々サプライヤからすると、一つ目、二つ目のグループに入ってしまうと正直つらい。できれば三つ目のグループに入りたいところです。では、どうやって入るか。「QCD(品質・コスト・納期)」を向上させることが重要なのは当然なのですが、私はプラスアルファの要素が必要だと考えます。それが「E(Emotion=感情)」です。
「QCD」は機能であって、食事で言うなら「うまい」「安い」「早い」。これさえ満たしていれば、顧客を満足させることはできます。ただ、それだけでは不十分な場合もあります。例えば新規開拓の時、既存サプライヤが「QCD」を満たしていたら、選ばれるためにはそれ以外で勝負しなければいけません。
また、顧客も本当に「QCD」だけで選ぶかというと、そうではありません。同じ「QCD」でも「この会社から買いたい」、「この人と一緒に仕事がしたい」といった情緒的なものが含まれているはずです。こうした顧客の感性こそ私が唱える「E」につながります。
この「E」には担当者の人柄や身だしなみ、梱包の丁寧さや工場のきれいさ、対応のスピード、技術力など様々な要素が関わってきますが、最も大事だと思うのが経営者の美意識です。何が良くて、何が悪いのか。そうした判断は全て経営者の美意識に基づきます。
当社では汚れやすいカーボンの加工現場をきれいに保つために独自の対策を施したり、顧客への迅速なレスポンスを心がけたりしていますが、誰かに言われて取り組んでいるのではありません。全て私や先代のこだわりによるものです。
数年前に導入した3DCADもその一つです。顧客からの要望ではなく、「カーボンの特性を熟知した当社が、設計から提案できれば、顧客の課題解決に大きく貢献できるはずだ」という私の思いで取り組み始めました。現在では開発段階で必ず声がかかるようになり、顧客にとって無くてはならない存在になっていると思います。
重要なのは顧客の要望ではなく、自らの価値観でものごとを決めていくことです。ただし、それには高い美意識が必要です。だれも見向きもしない方向に進んでも未来はないですからね。
美意識を高めるためには、芸術に触れたり、いろんな経営者に会ったりするなど様々な方法があると思います。一つ注意すべきは、それらの何が良いのか、常に真理を追究することです。そうすれば本物を見極める目を養えるはずです。私も常に意識しながら行動しています。
今後、金型企業を取り巻く事業環境は厳しさを増す部分もあると思います。そうした中で、顧客にいかに選ばれる企業となるのか。「美意識による経営」は、その一つの選択肢だと思います。
金型新聞 2021年10月10日
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