金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

30

新聞購読のお申込み

【鳥瞰蟻瞰】エスアイ精工社長・指尾 成俊氏 QCD+「E(Emotion=感情)」

選ばれる企業になるために
経営者の美意識によって
顧客の感性に訴求する

当社は1986年に創業したカーボン素材などの高精度加工を得意とする従業員13人の会社です。主に半導体の製造工程で使用されるカーボン製治具などを手掛けており、半導体や電子部品メーカーなどと取引を続けています。

金型企業とは業種は異なりますが、大手メーカーのサプライヤとして事業を展開しているという点では共通する課題も多いのではないでしょうか。特に「顧客にいかに選ばれる企業となるか」というテーマはどのサプライヤにとっても重要な課題の一つです。

顧客から見るサプライヤは大きく3つのグループに分類されると思います。一つ目は必要な時だけ声がかかるグループ、二つ目は相見積もりによって常に価格や納期を競争させられるグループ、そして三つ目がメーカーにとって無くてはならないグループです。

我々サプライヤからすると、一つ目、二つ目のグループに入ってしまうと正直つらい。できれば三つ目のグループに入りたいところです。では、どうやって入るか。「QCD(品質・コスト・納期)」を向上させることが重要なのは当然なのですが、私はプラスアルファの要素が必要だと考えます。それが「E(Emotion=感情)」です。

「QCD」は機能であって、食事で言うなら「うまい」「安い」「早い」。これさえ満たしていれば、顧客を満足させることはできます。ただ、それだけでは不十分な場合もあります。例えば新規開拓の時、既存サプライヤが「QCD」を満たしていたら、選ばれるためにはそれ以外で勝負しなければいけません。

また、顧客も本当に「QCD」だけで選ぶかというと、そうではありません。同じ「QCD」でも「この会社から買いたい」、「この人と一緒に仕事がしたい」といった情緒的なものが含まれているはずです。こうした顧客の感性こそ私が唱える「E」につながります。

この「E」には担当者の人柄や身だしなみ、梱包の丁寧さや工場のきれいさ、対応のスピード、技術力など様々な要素が関わってきますが、最も大事だと思うのが経営者の美意識です。何が良くて、何が悪いのか。そうした判断は全て経営者の美意識に基づきます。

当社では汚れやすいカーボンの加工現場をきれいに保つために独自の対策を施したり、顧客への迅速なレスポンスを心がけたりしていますが、誰かに言われて取り組んでいるのではありません。全て私や先代のこだわりによるものです。

数年前に導入した3DCADもその一つです。顧客からの要望ではなく、「カーボンの特性を熟知した当社が、設計から提案できれば、顧客の課題解決に大きく貢献できるはずだ」という私の思いで取り組み始めました。現在では開発段階で必ず声がかかるようになり、顧客にとって無くてはならない存在になっていると思います。

重要なのは顧客の要望ではなく、自らの価値観でものごとを決めていくことです。ただし、それには高い美意識が必要です。だれも見向きもしない方向に進んでも未来はないですからね。

美意識を高めるためには、芸術に触れたり、いろんな経営者に会ったりするなど様々な方法があると思います。一つ注意すべきは、それらの何が良いのか、常に真理を追究することです。そうすれば本物を見極める目を養えるはずです。私も常に意識しながら行動しています。

今後、金型企業を取り巻く事業環境は厳しさを増す部分もあると思います。そうした中で、顧客にいかに選ばれる企業となるのか。「美意識による経営」は、その一つの選択肢だと思います。

金型新聞 2021年10月10日

関連記事

短時間でプレス解析 南工【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】

トライ後の改修減らし生産性アップ 自動車の骨格部品などのプレス金型を手掛ける南工は昨年、解析速度の速いプレスシミュレーションソフトを導入した。短期間で高精度の塑性変形予測を割り出し、設計品質を高め、トライ後の改修時間も短…

ユウワ CO2排出量の削減など環境負荷低減

脱炭素社会に向けた金型づくり スマートフォン向け電子部品などの微細精密モールド部品の金型から量産までを手掛けるユウワは、脱炭素社会の実現に向けた金型づくりを進めている。昨年7月から本社工場の全電力を再生可能エネルギー由来…

米山金型製作所が「微細成形ラボ」を設立するワケ

微細成形ラボを設立 量産化までの支援サービスを提供 自動車や医療などの精密プラスチック射出成形用金型を手掛ける米山金型製作所は今年9月、微細成形技術が提供可能な「微細成形ラボ」を設立する。既存設備よりも大型の射出成形機を…

【ひと】ベントム工業社長・本田大介さん システム会社を立ち上げた金型経営者

システム会社立ち上げた金型経営者  クラシック音楽事務所の営業から父親が創業した鋳造・ダイカスト金型メーカーに転職。会社を受け継いだ後、工程管理を手掛けるシステム開発会社を設立した。異色の金型経営者だ。  入社した当初は…

【インタビュー】冨士ダイス 社長・久保井 恒之社長「順応力を持った企業目指す」

今年4月、ダイスなど超硬合金製の耐摩耗工具や金型を手掛ける冨士ダイス(東京都大田区、03-3759-7181)の社長に就任した。自動車産業の大変革など同社を取り巻く事業環境が加速度的に変化する中、「変化に対して順応力を持…

トピックス

関連サイト