金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

20

新聞購読のお申込み

【この人に聞く】トーヨーエイテック 表面処理開発担当役員・山中 敏雄氏「アルミの凝着抑える新被膜 」

トーヨーエイテック(広島県南区、082-252-5212)が今年2月に発表したアルミのプレス金型用DLCコーティング「TOYO Arc‐DLC」。高硬度で強固に密着するため、軟質で融点の低いアルミをプレス加工しても金型に凝着しにくい。マルチマテリアルでアルミの採用が進む自動車のボディや骨格をはじめ、家電や建材など幅広い分野の金型に需要を見込む。開発の狙い、新被膜の特長、そして今後の展開は—。表面処理開発担当役員の山中敏雄氏に聞いた。

車のマルチマテリアルに応える

やまなか・としお
1964年生まれ、広島県出身。87年芝浦工業大学工学部電子工学科卒、マツダ入社。2004年トーヨーエイテック工機管理部生産計画管理課マネージャー、12年執行役員工機製造部長兼品質保証部長、19年執行役員表面処理製造部担当兼表面処理開発担当。

高硬度、強固に密着 

開発の狙いは。

複数の素材を組み合わせるマルチマテリアル。その素材の一つとして注目されているのがアルミだ。欧米、そして日本の自動車でボディや骨格への採用が進む。しかし難点は柔らかく融点が低いこと。プレス加工を繰り返すと金型との摩擦や熱で表面に凝着する。この課題を解決するため、新たに炉をつくり開発した。

その特長は。

大きく4つ。1つ目は「硬度が高い」こと。DLCはダイヤモンドとグラファイトの成分を含む硬質炭素被膜。特殊な製法で水素の含有を少なくし、ダイヤモンドに近い性質にした。それにより極めて高い硬度(50GPa)を実現した。

2つ目は「金型に強固に密着する」こと。照射するイオンを調整し、被膜と金型の界面に混ざり合った分厚い層をつくった。いわば被膜が金型に根を張っているような状態で、衝撃を受けても簡単に剥がれない。

金属と金属が摩擦すると凝着するが、金属とDLCは凝着しない。DLCを被膜処理した金型に凝着するのは、DLCが劣化し剥がれるから。「高硬度」と「高い密着性」。新被膜はこの特長によりハードなプレス加工を数万、数十万と重ねても、その性能を保ち続けて凝着を抑える。

あと2つの特長は。

3つ目は「金型が変形、寸法変化しない」。被膜の高温処理の温度は480度以下。焼き戻しの温度よりも低く、変形や変寸を防げる。4つ目は「除膜できる」。金型を傷つけずに除膜できる独自の方法を開発。これにより何度でも再被膜し金型を使い続けることができる。

今後の展開は。

アルミは自動車を軽量化する素材として採用が広がっている。ボディや骨格に加え、駆動系部品などにも使われており、プレス加工の生産性や品質向上はさらに課題となっていくだろう。

一方、家電や建築部材など様々なものにアルミはかねてから使われている。それらのプレス加工の現場では「金型に凝着する」という固定概念が深く根を下ろしている。新被膜はそうした課題を解決するために開発した。新たに生まれるニーズ、そして潜在するニーズに応えていきたい。

金型新聞 2021年10月10日

関連記事

金型・プレス加工メーカーと精密板金加工メーカーがロックバンド・ギタリストとコラボし、特注ギターパーツを製作

プレス加工・金型製作を手掛ける新栄ホールディングス(東京都中央区、中村新一社長、以下「新栄HD」)と精密板金加工などを手掛ける浜野製作所(東京都墨田区、浜野慶一CEO)の2社が連携し、4人組ロックバンド「Plastic …

「なりたい自分になれるかも」金型メーカーに就職した女性広報

狭山金型製作所 総務部 東香奈恵さん 総務部で営業のサポートや動画によるマニュアル作成などを担当する。そうした「本業」に加え、インスタグラムやフェイスブックなどSNSで狭山金型の日常や取り組みを発信する金型メーカーでは珍…

日新精機 社長 中村 稔さん
〜ひと〜

ユーチューブでものづくりの魅力伝える  「皆さん、どうもこんにちは」。動画投稿サイト「ユーチューブ」で、自身を模したキャラクターとアニメーションにのせてものづくりの基礎知識を解説する。話題は自身が手掛ける冷間圧造金型に関…

【金型の底力】美濃工業 金型の内製化に着手

コストダウン、納期短縮図る 自動車用アルミダイカスト部品メーカーの美濃工業(岐阜県中津川市、0573-66-1025)は2021年3月、埼玉県熊谷市に「熊谷金型センター」を設立し、金型製造を開始した。20年10月には静岡…

日本の金型変わる経営環境 未来の扉どう開く<br>セントラルファインツール 三宅 和彦 社長に聞く

日本の金型変わる経営環境 未来の扉どう開く
セントラルファインツール 三宅 和彦 社長に聞く

研究開発が新たな道  リーマン・ショック以降需要が回復しているものの、これがいつまで続くのか。自動車の電気化やインターネットの技術革新が産業構造にどんな影響を及ぼすのか。それが、日本の金型メーカーの多くの経営者が抱く未来…

トピックス

関連サイト