金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JUNE

20

新聞購読のお申込み

【この人に聞く】トーヨーエイテック 表面処理開発担当役員・山中 敏雄氏「アルミの凝着抑える新被膜 」

トーヨーエイテック(広島県南区、082-252-5212)が今年2月に発表したアルミのプレス金型用DLCコーティング「TOYO Arc‐DLC」。高硬度で強固に密着するため、軟質で融点の低いアルミをプレス加工しても金型に凝着しにくい。マルチマテリアルでアルミの採用が進む自動車のボディや骨格をはじめ、家電や建材など幅広い分野の金型に需要を見込む。開発の狙い、新被膜の特長、そして今後の展開は—。表面処理開発担当役員の山中敏雄氏に聞いた。

車のマルチマテリアルに応える

やまなか・としお
1964年生まれ、広島県出身。87年芝浦工業大学工学部電子工学科卒、マツダ入社。2004年トーヨーエイテック工機管理部生産計画管理課マネージャー、12年執行役員工機製造部長兼品質保証部長、19年執行役員表面処理製造部担当兼表面処理開発担当。

高硬度、強固に密着 

開発の狙いは。

複数の素材を組み合わせるマルチマテリアル。その素材の一つとして注目されているのがアルミだ。欧米、そして日本の自動車でボディや骨格への採用が進む。しかし難点は柔らかく融点が低いこと。プレス加工を繰り返すと金型との摩擦や熱で表面に凝着する。この課題を解決するため、新たに炉をつくり開発した。

その特長は。

大きく4つ。1つ目は「硬度が高い」こと。DLCはダイヤモンドとグラファイトの成分を含む硬質炭素被膜。特殊な製法で水素の含有を少なくし、ダイヤモンドに近い性質にした。それにより極めて高い硬度(50GPa)を実現した。

2つ目は「金型に強固に密着する」こと。照射するイオンを調整し、被膜と金型の界面に混ざり合った分厚い層をつくった。いわば被膜が金型に根を張っているような状態で、衝撃を受けても簡単に剥がれない。

金属と金属が摩擦すると凝着するが、金属とDLCは凝着しない。DLCを被膜処理した金型に凝着するのは、DLCが劣化し剥がれるから。「高硬度」と「高い密着性」。新被膜はこの特長によりハードなプレス加工を数万、数十万と重ねても、その性能を保ち続けて凝着を抑える。

あと2つの特長は。

3つ目は「金型が変形、寸法変化しない」。被膜の高温処理の温度は480度以下。焼き戻しの温度よりも低く、変形や変寸を防げる。4つ目は「除膜できる」。金型を傷つけずに除膜できる独自の方法を開発。これにより何度でも再被膜し金型を使い続けることができる。

今後の展開は。

アルミは自動車を軽量化する素材として採用が広がっている。ボディや骨格に加え、駆動系部品などにも使われており、プレス加工の生産性や品質向上はさらに課題となっていくだろう。

一方、家電や建築部材など様々なものにアルミはかねてから使われている。それらのプレス加工の現場では「金型に凝着する」という固定概念が深く根を下ろしている。新被膜はそうした課題を解決するために開発した。新たに生まれるニーズ、そして潜在するニーズに応えていきたい。

金型新聞 2021年10月10日

関連記事

【鳥瞰蟻瞰】枚岡合金工具代表取締役社長・古芝義福氏 「3S活動のカギはぶれない姿勢とビジョン」

事業継続のために始めた3S人を変え、行動体質にカギはブレない姿勢とビジョン  当社は冷間鍛造金型や文書・図面管理ソフト『デジタルドルフィンズ』、教育事業を手掛け、従業員数は23名です。社内のフリーアドレス化、リモートワー…

リーダーの条件[part1] 経営のカリスマが心掛けていること

サイベックコーポレーション 顧問 平林 健吾氏  1944年生まれ、長野県出身。工作機械メーカー、プレス部品メーカーを経て、73年に信友工業(現サイベックコーポレーション)を設立。2009年顧問。18年旭日単光章を受賞。…

デジタル技術を活用し工法の最適化、人材育成、新製品開発に挑む熱間鍛造金型メーカー【金型の底力】

伊藤製作所(愛知県弥富市)は熱間鍛造金型やダイセットを主力とし、クランクシャフトなどの自動車向けや建機・重機、免振装置、航空機といった幅広い市場で活躍する。特に大型の金型やダイセットが得意で、ダイセットは500~6300…

迫る金型の技術革新
岐阜大学 三田村一広特任教授に聞く

 「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表されるように、「百年に一度の変革期」と言われる自動車業界。金型にとってもその影響は大きく、舵取り次第では将来の成長を左右しかねない。特に、金型へのインパ…

日本発条がササヤマと資本提携する理由【ササヤマ challenge!Next50】

自動車のシートなどを手掛ける日本発条は2015年、ササヤマと資本提携した。日本発条にとって技術連携のパートナーであるササヤマはどんな存在なのか。魅力、期待すること、今後取り組みたいことは。シート生産部の岡井広行氏と安田雅…

トピックス

関連サイト