「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表されるように、「百年に一度の変革期」と言われる自動車業界。金型にとってもその影響は大きく、舵取り次第では将来の成長を左右しかねない。特に、金型へのインパ…
【この人に聞く】トーヨーエイテック 表面処理開発担当役員・山中 敏雄氏「アルミの凝着抑える新被膜 」
トーヨーエイテック(広島県南区、082-252-5212)が今年2月に発表したアルミのプレス金型用DLCコーティング「TOYO Arc‐DLC」。高硬度で強固に密着するため、軟質で融点の低いアルミをプレス加工しても金型に凝着しにくい。マルチマテリアルでアルミの採用が進む自動車のボディや骨格をはじめ、家電や建材など幅広い分野の金型に需要を見込む。開発の狙い、新被膜の特長、そして今後の展開は—。表面処理開発担当役員の山中敏雄氏に聞いた。
車のマルチマテリアルに応える

やまなか・としお
1964年生まれ、広島県出身。87年芝浦工業大学工学部電子工学科卒、マツダ入社。2004年トーヨーエイテック工機管理部生産計画管理課マネージャー、12年執行役員工機製造部長兼品質保証部長、19年執行役員表面処理製造部担当兼表面処理開発担当。
高硬度、強固に密着
開発の狙いは。
複数の素材を組み合わせるマルチマテリアル。その素材の一つとして注目されているのがアルミだ。欧米、そして日本の自動車でボディや骨格への採用が進む。しかし難点は柔らかく融点が低いこと。プレス加工を繰り返すと金型との摩擦や熱で表面に凝着する。この課題を解決するため、新たに炉をつくり開発した。
その特長は。
大きく4つ。1つ目は「硬度が高い」こと。DLCはダイヤモンドとグラファイトの成分を含む硬質炭素被膜。特殊な製法で水素の含有を少なくし、ダイヤモンドに近い性質にした。それにより極めて高い硬度(50GPa)を実現した。
2つ目は「金型に強固に密着する」こと。照射するイオンを調整し、被膜と金型の界面に混ざり合った分厚い層をつくった。いわば被膜が金型に根を張っているような状態で、衝撃を受けても簡単に剥がれない。
金属と金属が摩擦すると凝着するが、金属とDLCは凝着しない。DLCを被膜処理した金型に凝着するのは、DLCが劣化し剥がれるから。「高硬度」と「高い密着性」。新被膜はこの特長によりハードなプレス加工を数万、数十万と重ねても、その性能を保ち続けて凝着を抑える。
あと2つの特長は。
3つ目は「金型が変形、寸法変化しない」。被膜の高温処理の温度は480度以下。焼き戻しの温度よりも低く、変形や変寸を防げる。4つ目は「除膜できる」。金型を傷つけずに除膜できる独自の方法を開発。これにより何度でも再被膜し金型を使い続けることができる。
今後の展開は。
アルミは自動車を軽量化する素材として採用が広がっている。ボディや骨格に加え、駆動系部品などにも使われており、プレス加工の生産性や品質向上はさらに課題となっていくだろう。
一方、家電や建築部材など様々なものにアルミはかねてから使われている。それらのプレス加工の現場では「金型に凝着する」という固定概念が深く根を下ろしている。新被膜はそうした課題を解決するために開発した。新たに生まれるニーズ、そして潜在するニーズに応えていきたい。
金型新聞 2021年10月10日
関連記事
指先でミクロンとらえる磨きの達人 指先はミクロンの誤差をとらえる。神経を研ぎ澄まし、砥石に力を加え、鏡面に仕上げていく。その技能で「なにわの名工若葉賞」にも選ばれた。金型磨きの達人だ。 整備士として勤めていた車の販売…
金型はものづくりの原点であり多くの製品の大量生産に欠かせないマザーツール。社会的な役割や金型の技術革新や金型づくりにおいてその魅力は何だろうか。日本金型工業会の山中雅仁会長と元ホンダエンジニアリング・車体領域・執行役員の…
粗形材改革の〝要〟 孫の代まで続く金型産業 「金型は、常に進化させながら孫の代まで延々と続く重要産業」――トヨタ自動車ユニット生技領域長、常務理事高見達朗氏はこのほど、日本の金型産業について熱く語った。日本産機新聞の自動…
金型工業会会員6社 インド金型展に出展 日本金型工業会(山中雅仁会長・ヤマナカゴーキン社長)の会員6社が、インド最大規模の金型技術展示会に出展した。自動車や電機など製造業が急成長する市場で需要開拓の足掛かりをつけるのが狙…


