金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

30

新聞購読のお申込み

【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題 -取引適正化-

PART4 日本金型工業会 専務理事・中里栄氏に聞く「取引適正化」

取引ガイドラインを改定
 イコールパートナーに
  ユーザーの意識にも変化

現在、春先に公表予定の「金型取引ガイドライン」の改定版の策定に取り組んでいます。十数年ぶりになりますが、このタイミングで改定するのは、当時と比べ、今は大きく環境が変わろうとしている時だからです。

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)に象徴されるように、フェアトレードを推進する動きが加速しています。今やSDGsを意識しない企業はなく、「自社さえ良ければいい」という考え方が減り、取引環境の改善を訴える好機ともいえます。

今回のガイドラインは、こうした社会的背景を反映させたものにする予定です。前回は下請取引支払遅延等防止法(下請法)をベースに「同法に抵触の恐れがあります」という法律を意識した文言が多くありました。今回は金型業界も製造業の重要なサプライチェーンの一員であり、それを強固にするため、一緒に取り組む「イコールパートナーになりましょう」とスタンスで提案したいと思っています。

目指すべきイメージは「正しい金型の発注マニュアル」的なもので、次のようなことを盛り込みたいと考えています。一つは過度な寸法精度の提示の是正です。会員企業からは「不要と思われるほどの精度の提示を求められることがある」という話をよく聞きます。これの是正を促すことは金型メーカーが大変だからということだけではありません。「過度な」品質はコストアップや長い納期にもつながり、ユーザーにとってもマイナスになります。

他にも、図面提出の問題は継続して提示する予定です。「図面は渡したくない」ことが基本です。金型図面はノウハウの塊で、時には金型以上の価値があるからです。もし図面を売らなくてはならない場合「金型本体と同等か、それ以上の費用」を頂けるケースをお伝えしたいと思います。

回収についても言及する予定で、三分割の前金制度を訴えていきたいと思います。世界の取引では、契約時、着手時、納品時にそれぞれ3分の1の支払いが主流です。造船や建築など「一品モノ」の世界も同様の取引が普通です。これを金型でも一般化できるようにしていきたいと思います。

SDGsやカーボンニュートラル、サイバーセキュリティーなど昨今のトレンドを見ていると、個社や一業界だけで取り組むのが難しい問題ばかりです。ユーザーもそれを認識し始めていると思います。ガイドラインの改定が製造業全体がイコールパートナーなって、サプライチェーンを強化する契機になればいいと考えています。

個人的にはユーザーの意識の変化も感じています。発注者側(特にコミュニケーション能力に長けた担当者)から「一方通行的な取引は今の世の中では通用しない」、「フェアトレードな意識でコミュニケーション方法を変えないとものづくりが上手く回らない」という声も聞こえています。

新たなガイドラインによって、さらにこうした意識の変化をユーザー業界に促していきたいと思っています。また、自動車や電機などユーザー業界に広く周知することで、先に述べた施策を実行してもらえるよう働きかけていきます。

※特集のトップページはこちらから

金型新聞 2022年1月10日

関連記事

フタバ産業 超ハイテンを冷間で量産【特集:プレス加工最前線】

自動車のボデー部品や排気系部品など手掛けるフタバ産業は1470MPa超ハイテン材の冷間プレス部品の量産を確立、今年1月に発売した新型プリウスに採用された。先代プリウスはホットスタンプを用いた部品を採用していたが、冷間プレ…

自ら商品を生み出す道に 山添重幸氏(かいわ社長)【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…

日新精機が繁忙期対策のために進めることとは

協力企業との連携推進 時期によって業務の量に差が生じることは少なくない。特に金型業界では、製品のモデルチェンジや更新のタイミングなどに受注が集中するため、繁忙期と閑散期で現場の稼働状況は大きく異なる。繁忙期には残業や休日…

型種や工法の壁無くし、デジタルを活用 【変わるトヨタの型づくり】

モビリティカンパニー目指し、金型づくりを大変革 クルマを造る会社から、多様な移動手段を提供する「モビリティカンパニー」に変化するトヨタ自動車。モノづくりでも変革を進めている。2020年に試作や量産など内製部門を集約した「…

【特集:技能レス5大テーマ】5.工具管理・測定

属人をシステム化へ ツール測定機や工具管理システムなどを展開するZOLLER Japanの焼きばめ装置搭載ツール測定機「redomatic」は、工具を取り付ける焼きばめ工程から工具測定までを自動かつ高精度で行い、安全で効…

トピックス

関連サイト