脱炭素社会に向けた取り組みがものづくりで加速し、金型業界でもその動きが広がりつつある。先手を打つ金型メーカーの対応には大きくは2つの方向性がある。一つは、太陽光パネルの設置や設備の省エネ化などによる自社の生産活動でCO2…
【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題 -取引適正化-
PART4 日本金型工業会 専務理事・中里栄氏に聞く「取引適正化」

取引ガイドラインを改定
イコールパートナーに
ユーザーの意識にも変化
現在、春先に公表予定の「金型取引ガイドライン」の改定版の策定に取り組んでいます。十数年ぶりになりますが、このタイミングで改定するのは、当時と比べ、今は大きく環境が変わろうとしている時だからです。
昨今、SDGs(持続可能な開発目標)に象徴されるように、フェアトレードを推進する動きが加速しています。今やSDGsを意識しない企業はなく、「自社さえ良ければいい」という考え方が減り、取引環境の改善を訴える好機ともいえます。
今回のガイドラインは、こうした社会的背景を反映させたものにする予定です。前回は下請取引支払遅延等防止法(下請法)をベースに「同法に抵触の恐れがあります」という法律を意識した文言が多くありました。今回は金型業界も製造業の重要なサプライチェーンの一員であり、それを強固にするため、一緒に取り組む「イコールパートナーになりましょう」とスタンスで提案したいと思っています。
目指すべきイメージは「正しい金型の発注マニュアル」的なもので、次のようなことを盛り込みたいと考えています。一つは過度な寸法精度の提示の是正です。会員企業からは「不要と思われるほどの精度の提示を求められることがある」という話をよく聞きます。これの是正を促すことは金型メーカーが大変だからということだけではありません。「過度な」品質はコストアップや長い納期にもつながり、ユーザーにとってもマイナスになります。
他にも、図面提出の問題は継続して提示する予定です。「図面は渡したくない」ことが基本です。金型図面はノウハウの塊で、時には金型以上の価値があるからです。もし図面を売らなくてはならない場合「金型本体と同等か、それ以上の費用」を頂けるケースをお伝えしたいと思います。
回収についても言及する予定で、三分割の前金制度を訴えていきたいと思います。世界の取引では、契約時、着手時、納品時にそれぞれ3分の1の支払いが主流です。造船や建築など「一品モノ」の世界も同様の取引が普通です。これを金型でも一般化できるようにしていきたいと思います。
SDGsやカーボンニュートラル、サイバーセキュリティーなど昨今のトレンドを見ていると、個社や一業界だけで取り組むのが難しい問題ばかりです。ユーザーもそれを認識し始めていると思います。ガイドラインの改定が製造業全体がイコールパートナーなって、サプライチェーンを強化する契機になればいいと考えています。
個人的にはユーザーの意識の変化も感じています。発注者側(特にコミュニケーション能力に長けた担当者)から「一方通行的な取引は今の世の中では通用しない」、「フェアトレードな意識でコミュニケーション方法を変えないとものづくりが上手く回らない」という声も聞こえています。
新たなガイドラインによって、さらにこうした意識の変化をユーザー業界に促していきたいと思っています。また、自動車や電機などユーザー業界に広く周知することで、先に述べた施策を実行してもらえるよう働きかけていきます。
金型新聞 2022年1月10日
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