自動車や電子部品などの開発サイクルが短くなる中、製品開発における課題の一つとなっているのが試作品や試作用金型の製作だ。加工プログラムやジグを作る高度なノウハウが必要で、それにかかる時間も手間も負担が大きい。しかし切削加工…
アルム NCプログラム作成完全自動化へ
金型製作における時間とコストのボトルネックの一つがNCプログラム作成。今なおノウハウを持つ技能者が手間をかけて作成することが殆どだ。だがアルムが開発したソフトウェア「ARUMCODE1(アルムコードワン)」は人工知能(AI)技術で3Dモデルから自動でプログラムできるという。その特長や開発の背景、さらに進化し続ける新機能について解説する。
3DCADデータから形状解析や加工パス設定、NCプログラムを作成
ARUMCODE1はAIが加工プログラムを自動で作成するソフトウェア。3DCADデータをドロップしワークの材質などを指定すると、形状を解析して、工具や切削条件、加工パスを設定し、NCプログラムを作成する(見積もり作成も可能)。この一連のプロセスにかかる時間は、例えばポケットや穴、凸部などが複数あるサンプルワークで約3分程度。
従来のCAMは使う工具や加工条件など一部の工程を人の手で設定する必要があるため、いわば、「部分的な自動化」ツールであった。
これに対しARUMCODE1は、工具選定や加工条件設定も含め、図面データを読み込ませてから加工プログラムを作成するまで人が一切関わらない「完全自動化」ツールである。
「完全自動化」の世界観から生まれたARUMCODE1
当社は2006年の創業以来、主に自動車産業向け工場内生産ラインを設計製造してきた。しかし2015年に多品種少量の部品加工企業を子会社化したことを機に、加工企業のある実態を目の当たりにした。
それは、NCプログラミングコストが製造原価の50%を占めている現実。さらには、経験豊富な熟練加工者が本来やるべき高度な加工に専念できず、簡単な図面の加工プログラム作成に相当の時間を奪われているということ。
こうした実際の現場の課題を当事者の立場で経験したからこそ、人の手を一切介さない「完全自動化」が製造業の未来にとって不可欠だと確信し、7年かけて開発したのがARUMCODE1である。
子会社で検証した4つの導入効果

昨年9月のARUMCODE1ベータ版リリースに先立って、子会社でテスト版を実際に導入した。2年かけて定量的な効果を検証したところ次の4点が浮かび上がった。
- NCプログラミングの工数がほぼ無くなり、製造原価の50%削減を実現できた。
- 日中に行っていたNCプログラム作成を夜間に無人化し、生産性が向上した。
- CAM作業から解放され、30%だったマシン稼働率が80%にアップした。
- 小ロット品製造への対応力がアップしたため、年間受注件数も180%増加した。
これにより、2015年に事業承継して以来、赤字続きだった子会社の前期決算が初めて黒字転換。今期も黒字が見込まれ、ARUMCODE1の導入による経営改善効果を実証的に確認できた。
「完全自動化」へ進化 〜工具の摩耗や欠損を測定し加工パスを自動補正〜

今年5月にリリース予定のARUMCODE1バージョン2は、「完全自動化」という世界観をより具現化したものとなる。
例をあげると、新たに搭載する「オートツールマネージャー」機能は、工具の摩耗や欠損状況を機上カメラで測定し、その結果をフィードバックして、工具データベースに登録された工具径・長、切れ刃長、突出量などの情報を自動更新、加工パスを自動補正するものである。
これにより属人的だった工具セットにかかる段取り時間を50%以上軽減することが可能となる。流曲線形状やプレス・モールド金型などXZ、YZ方向を含む2.5次元加工も可能となるため、完全自動化に対応する加工品の範囲も飛躍的に広がる。
記者の目
金型加工の機械化が進む一方でそのプログラムは今も人が作っている。しかしここ数年、自動化する機能を持つソフトや機械が相次いで開発されている。金型業界にもDXの波が広がる中で競争力強化に役立つ次世代の技術として注目される(中)。
アルム
- 代表取締役CEO 平山 京幸氏
- 石川県金沢市戸水1-61
- TEL:076-225-7743
金型新聞 2022年2月10日
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