北米のアルミニウム協会などの調査によると、自動車の1台当たりのアルミ使用量は軽量化のために増えていくという。プレスや押し出しもあり、アルミ=ダイカストと限らないが、アルミの動向はダイカスト型にとって影響は少なくない。で…
型種や工法の壁無くし、デジタルを活用 【変わるトヨタの型づくり】
モビリティカンパニー目指し、金型づくりを大変革
クルマを造る会社から、多様な移動手段を提供する「モビリティカンパニー」に変化するトヨタ自動車。モノづくりでも変革を進めている。2020年に試作や量産など内製部門を集約した「モノづくり開発センター」を設立。車両系と駆動系の金型を手掛ける2つの部も同センター内に集約した。型種や工法別の垣根をなくし、新たなモビリティ開発のために、新たなモノづくりが必要だからだ。デジタル技術を駆使しながら、大きく変わるトヨタの型づくりを取材した。

巨大なプレス金型を入念にチェックする。測定器を使うこともあるが最終的な調整は目視や直線の定規を当てることで、また平らに削って直線を出した微細な砥石を当てることで行う。手に持った砥石で金型の表面を撫で、その当たり方で金型の状態がわかる。手作業でミクロン単位で調整するという。
…出典トヨタイムズ
モノづくり開発センター
自動車開発のスピードアップ・新たなモビリティの開発目指し、2020年に発足

モビリティツーリング部
- 所在地:元町工場、貞宝工場
- 従業員数:695人
- 製造する金型:ボデーやバンパーなど大型の樹脂金型やプレス金型
モノづくりエンジニアリング部
- 所在地:貞宝工場、本社、元町工場
- 従業員数:1589人
- 製造する金型:エンジンや駆動部系の金型や精密部品加工

「モビリティカンパニーになる」—。豊田章男社長が2020年にそう宣言し、単にクルマを造る自動車会社から、あらゆる移動手段を提供する会社にモデルチェンジを進めている。最近では「新たなモビリティを通じて幸せを量産する」(豊田社長)ため、カバーする領域は自動車に留まらず、街づくりにまで及ぶ。
その変化は加速し続けている。昨年末には30年までに電動車30車種を投入すると発表。水素エンジンの車両開発など次世代自動車には全方位で挑む。さらに、新たなモビリティやデータ活用を模索する実験都市「ウーブン・シティ」を静岡県裾野市に建設中だ。
こうした変化や事業領域の拡大は、モノづくりひいては金型づくりにも変化をもたらしている。では、トヨタの型づくりはどう変化しているのか。

その象徴的な組織の一つが20年に発足したモノづくり開発センターだ。「社内の試作・設備・金型などの内製部門を集約したセンター」(同センターのモビリティツーリング部大澤晋一郎部長)。狙いは金型も含め、車の開発スピードを上げることだが、「新たなモビリティを生み出すには、新たなモノづくりが必要」(同センターのモノづくりエンジニアリング部堀田政嗣部長)だからだ。
金型づくりも同じ流れにある。元々同社の金型部門は工法や型種別に分かれていた。ボデーやバンパーなど大型の樹脂やプレス金型はスタンピングツール部、エンジンや駆動系はダイエンジニアリング部が担っていた。
その後、スタンピングツール部は板金プレスや樹脂金型など大型の外装部を中心とした「モビリティツーリング部」となった。ダイエンジニアリング部は、これまでの金型領域に加え、試作・設備を統合し、1μmクラスの精密加工や新たなモビリティに関する部品を手掛ける「モノづくりエンジニアリング部」と改称。両部ともモノづくり開発センター内にある。
両部は今も分かれているものの、大澤部長は「境目の意識はない」。堀田部長も「モビリティの変化により車両系、パワートレーン系ではくくれないものが増えている」とし、金型を中心にモノづくり力を結集し、新たなモビリティ開発を進めている。
そのツールの一つが、デジタルのフル活用だ。CAEを活かした後戻りのない金型づくり、匠の技の見える化、新たなモビリティ開発—。以降では、モビリティツーリング部、モノづくりエンジニアリング部の両部で取り組む、新たなモノづくりや型づくりをみていく。
PART1:デジタル活用(7月4日公開)
PART2:匠の技をデジタルに帰す(7月4日公開)
PART3:新たなクルマづくり(7月6日公開)
PART4:両部長インタビュー(7月6日公開)
金型新聞 2022年6月9日
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