金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

16

新聞購読のお申込み

水素エンジン車に生かされる型づくり技術とは?【変わるトヨタの型づくり】

PART3:新たなクルマづくり

若手の挑戦と育成両立

CFRPのフードインナー
若手と匠が協力、人材育成にも
CFRPを使ったレース車

新たなモビリティの一つである、水素エンジン車でも新たなモノづくり技術が生かされている。昨年7月に大分県のオートポリスで行われたスーパー耐久シリーズ。ここに出走したカローラベースの水素エンジン車には、外板パネルに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使われており、それには、モビリティ—ツーリング部の新たな技術が採用されている。

水素エンジン車には水素タンクが必要だが「100㎏程度重くなる」(モビリティーツーリング部新価値創造課の嶋方克好課長)ため、レースで走るには、車体を軽くしなければならない。軽量化の方策として、フードのインナー、アウター、フロントドアインナー、アウターなど外板部品の一部をCFRP化した。

「レース車という一品モノ」(嶋方氏)のため、オートクレープ方式で成形。一般的な型とケミカルウッド型など部品ごとに3種類の型を製作した。嶋方氏は「カーボンではヘミング曲げができないため端末の処理や、ルーフは全周アンダーカットの閉じ断面になるため、成形方法をどうするかなどの課題に直面した。また、成形時の温度による製品寸法の精度変化も苦労した」と振り返る。こうした課題を解決し、水素タンク分の3割程度軽くすることに貢献した。

今回のCFRPはレース用の水素エンジン車への適用だが、すでにプリウスPHVやGRブランド車などの一部の部位で採用されている。量産となると「まだまだサイクルタイムと材料コストが課題」(嶋方氏)というが、マルチマテリアル化の一つとして、CFRPは広がる可能性を秘めている。

また、今回の取り組みが特徴的だったのは「若手の挑戦と育成を両立させた」ことだ。プロジェクトにはあえて、入社3年目までの若手をリーダーとして抜擢。とはいえ、いきなり若手だけでは難しいため、若手と匠をうまく協業してもらうようにした。

まず、選抜したリーダーたちはプロジェクト全体の日程を設定。「自らの部署だけでは全体を俯瞰(ふかん)した日程を組むことは難しい。成形、塗装、組立に強い部署や匠にヒアリングしながら設定してもらった」(嶋方氏)。その後も、自らに足りない知見は匠に聞くなどして、パネルは成形、塗装、組立、サブアセンブリーまで7週間で完成させたという。

他部署と交流仕事の幅広げる

嶋方氏は若手に挑戦させた狙いについて「視野を広げるため」と話す。「若手は自分の仕事で精一杯。これはこれで重要だが、他部署の人と交流すれば仕事の幅が広がり、視野も広がる」。

同社では、こうした交流も育成の重要な手段と考えており、他のプロジェクトでも頻繁に行われているという。「我々の部署は、金型づくりは得意。しかし、成形以降の組付けなどの課題は理解しづらかった。今回、他部署の考えを学ぶことで、車づくりへの理解をより深めることにもつながった」(嶋方氏)。

金型新聞 2022年6月9日

関連記事

中辻金型工業 切削工具を自社開発

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

トヨタの型づくりはどう変化していくのか?モビツー・大澤部長×モノエン・堀田部長インタビュー【変わるトヨタの型づくり】

PART4:モノエン・モビツーのトップに聞く金型メーカーに期待すること 技能絶やさぬ取り組み / 型にとらわれぬ柔軟な視点 人の動き、 カンコツを定量化 次世代車の中でも、やはり電動化へのインパクトは大きい。金型への影響…

昭芝製作所 自社開発したシステム活用し、金型の棚卸や探索時間を削減【特集:デジタル活用術】

プレス金型から加工までを手掛ける昭芝製作所は「金型スマート棚卸・探索システム」を自社で開発し、2019年に導入。同システムは、無線自動識別(RFID)を活用し、簡単に金型の探索や棚卸ができる。 同社では約4000型を管理…

進む自動化・見える化 複数の加工工程を集約する生産システムの構築【特集:2022年金型加工技術5大ニュース】

金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…

ササヤマ 笹山勝社長に聞く コア業務に専念できる環境に【特集 攻める設備投資】

自動車のシートや骨格部品などのプレス金型を手掛けるササヤマは金型の競争力を高めるため、金型づくりのDXとベトナム子会社のデータ製作力の強化に取り組む。デジタル技術で金型づくりを効率化し、ベトナム子会社を同社グループのデー…

トピックス

関連サイト