金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

26

新聞購読のお申込み

水素エンジン車に生かされる型づくり技術とは?【変わるトヨタの型づくり】

PART3:新たなクルマづくり

若手の挑戦と育成両立

CFRPのフードインナー
若手と匠が協力、人材育成にも
CFRPを使ったレース車

新たなモビリティの一つである、水素エンジン車でも新たなモノづくり技術が生かされている。昨年7月に大分県のオートポリスで行われたスーパー耐久シリーズ。ここに出走したカローラベースの水素エンジン車には、外板パネルに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使われており、それには、モビリティ—ツーリング部の新たな技術が採用されている。

水素エンジン車には水素タンクが必要だが「100㎏程度重くなる」(モビリティーツーリング部新価値創造課の嶋方克好課長)ため、レースで走るには、車体を軽くしなければならない。軽量化の方策として、フードのインナー、アウター、フロントドアインナー、アウターなど外板部品の一部をCFRP化した。

「レース車という一品モノ」(嶋方氏)のため、オートクレープ方式で成形。一般的な型とケミカルウッド型など部品ごとに3種類の型を製作した。嶋方氏は「カーボンではヘミング曲げができないため端末の処理や、ルーフは全周アンダーカットの閉じ断面になるため、成形方法をどうするかなどの課題に直面した。また、成形時の温度による製品寸法の精度変化も苦労した」と振り返る。こうした課題を解決し、水素タンク分の3割程度軽くすることに貢献した。

今回のCFRPはレース用の水素エンジン車への適用だが、すでにプリウスPHVやGRブランド車などの一部の部位で採用されている。量産となると「まだまだサイクルタイムと材料コストが課題」(嶋方氏)というが、マルチマテリアル化の一つとして、CFRPは広がる可能性を秘めている。

また、今回の取り組みが特徴的だったのは「若手の挑戦と育成を両立させた」ことだ。プロジェクトにはあえて、入社3年目までの若手をリーダーとして抜擢。とはいえ、いきなり若手だけでは難しいため、若手と匠をうまく協業してもらうようにした。

まず、選抜したリーダーたちはプロジェクト全体の日程を設定。「自らの部署だけでは全体を俯瞰(ふかん)した日程を組むことは難しい。成形、塗装、組立に強い部署や匠にヒアリングしながら設定してもらった」(嶋方氏)。その後も、自らに足りない知見は匠に聞くなどして、パネルは成形、塗装、組立、サブアセンブリーまで7週間で完成させたという。

他部署と交流仕事の幅広げる

嶋方氏は若手に挑戦させた狙いについて「視野を広げるため」と話す。「若手は自分の仕事で精一杯。これはこれで重要だが、他部署の人と交流すれば仕事の幅が広がり、視野も広がる」。

同社では、こうした交流も育成の重要な手段と考えており、他のプロジェクトでも頻繁に行われているという。「我々の部署は、金型づくりは得意。しかし、成形以降の組付けなどの課題は理解しづらかった。今回、他部署の考えを学ぶことで、車づくりへの理解をより深めることにもつながった」(嶋方氏)。

金型新聞 2022年6月9日

関連記事

関西金型メーカー5社に聞く
インターモールド特別座談会

激化する競争に勝ち残る  2017年がスタートして早や3カ月が過ぎたが、不安定な世界情勢の中で日本の金型メーカーは各社各様の課題に取り組んでいる。インターモールド・金型展の開幕を前に関西の金型メーカー様にお集まり頂き、現…

精密、高精度 ニーズに応える型材・部品特集

 超精密、高精度、短納期、長寿命化—。こうした高度化する金型へのニーズに対応するには、あらゆる加工技術や素材技術が必要だ。中でも、鏡面性が得られるのか、離型性が高いのか、長寿命化が図れるのかなど、金型の本質的な機能に直結…

【特集:2023年金型加工技術5大ニュース】2.脱炭素化

求められるスコープ3への対応 2050年の温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」の実現を目指す動きが活発化している。これまで直接的あるいは間接的なCO2排出量を示す「スコープ1・2』への対応に加…

メンテナンスに革命を 清水一蔵氏(福井精機工業社長)【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…

【鍛造金型特集】鍛造型、好調を持続<br>その背景や今後は

【鍛造金型特集】鍛造型、好調を持続
その背景や今後は

自動車生産台数の増加 EV化への対応も必要  鍛造金型が好調を持続している。経済産業省の機械統計によると、2016年の鍛造金型の生産金額は307億円とリーマンショック前の200億円を大幅に上回る。数量では減少傾向にあるこ…

トピックス

関連サイト