パンチやダイ、強力ばねなどプレス金型部品を取り扱うオネストンは2021年に創業50周年を迎える。プレス部品専門商社として基盤を築き、近年は「1個づくり」をテーマにした特殊品対応やリバースエンジニアリングほか、アメリカ・…
トヨタの型づくりはどう変化していくのか?モビツー・大澤部長×モノエン・堀田部長インタビュー【変わるトヨタの型づくり】
PART4:モノエン・モビツーのトップに聞く金型メーカーに期待すること
技能絶やさぬ取り組み / 型にとらわれぬ柔軟な視点
人の動き、 カンコツを定量化
次世代車の中でも、やはり電動化へのインパクトは大きい。金型への影響をどうみますか。
大澤 電動化で高出力のモーターや電池が求められる中、部品が高精度になり、型技術は高度化していく。どんな加工技術が必要になるか注視しておくことが重要だと思う。
特にパワートレーン系の競争は激化していくと思います。お客様が求める車、すなわちクリーンで、航続距離が長く、快適な車に見合ったパワートレーンユニットが作れる型技術、ひいてはモノづくり技術が必要になる。
外装部品はどうですか。
大澤 昨年末に電動車を30車種発表したように、電動車のトレンドに合った意匠性の高い金型はこれまでと変わらず求められると思う。
堀田部長はどうですか。
堀田 同じく、高精度、微細化は加速し、意匠性の高いモノが必要になると思う。異なる視点でいえば試作でしょうか。様々な素材が登場しているので、試作のバリエーションは増えていく。安価な金型や3Dプリンタの活用なども考えられる。こうした変化に対して、大澤部長もよく言われますが、型を造るのではなく「形」を創るという視点が必要だと思う。
大澤 我々は金型を造ってはいますが、その目的は車に必要な部品の「形」を創ること。その目的のためなら、金型レスで創るという方法があってもいい。
「金型レス」とは厳しいご意見です。
大澤 アプローチは2つあります。一つは金型レスと言いましたが、金型を早く安く造ること。例えば、極限まで機能を最小限にしてしまえばそうした金型も可能です。もう一つは本当に金型なしで創ること。金型メーカーさんはそうした対応は得意だと思う。
どうしてですか。
大澤 金型メーカーさんは様々な加工機を持ち、加工工程や重要点を熟知しているからです。それはいろいろなモノづくりを理解しているということ。金型にこだわらず、治具や簡易型など、カタチを創ることができる手段を考えられるはずです。時代に即して柔軟に対応することが大切だと思う。
CNへの対応も喫緊の課題となっています。
堀田 解の一つはデジタルのフル活用だと思う。デジタルを使って一発で作り込み、金型の戻りを減らせれば、その分の電力量は削減できる。ただ、デジタル活用は当社だけでは完結できないことも多く、協力先を巻き込みながら進めたいと思う。
また現在、エネルギーマネジメントや24時間稼働などを進めているところで、我々がCNのトップバッターとなって皆さんにいろいろな手法を紹介できればいいと思う。
大澤部長は。
大澤 大きくは3つあります。一つは型の軽量化や最適化。日本のプレス型は欧米に比べ3分の2ほど軽く、扱う際のエネルギーが少なくて済む。これをもっと追求する。2つ目は無駄な材料を減らすこと。1枚の鉄からいかに多く製品を作るか。とにかく無駄なものは出さない。3つ目がリユースやリサイクル。型部品のリユースを考えています。また、二酸化炭素を出さない素材開発など、様々なメーカーと協業しながら進めているところです。
一緒に高い山を目指したい
金型メーカーに期待することを教えて下さい。
堀田 デジタル化への対応を進め、仲間になって欲しい。一方で、リアルにモノを作る部分はなくならないし、そこを絶やしてはいけない。なので、いろいろな工法を試すなど、量産の技術を探索して欲しいと思います。
また、我々の技術が必ずしも優れているわけではない。実際に他社と同じワークを5軸加工で比較した際、大変勉強になった。そんな、切磋琢磨できる関係であって欲しいですね。
大澤 最も言いたいのは、「技能を絶やさないで欲しい」ということです。技能は日本の宝です。アメリカでは型技術が衰退し、海外から金型を購入せざるを得ず、苦労したこともあります。そうならないために、技能を絶やしてはいけない。
何をすればいいでしょう。
大澤 デジタルが有用なのは明らかになってきました。人の動きをモーションキャプチャで把握したり、カンコツを定量化したりできます。我々1社だけでなく、一緒にこうした取り組みを共に進めたいですね。
「一緒に」ですか。
大澤 豊田章男社長が「自動車業界にいる550万人とともに歩む」と表現しています。それと同じことです。我々は日本の産業を大事にしたい。デジタルを使えば技能を定量化することもでき、人づくりも早くできます。登山で例えるなら、これまで1合目から登っていた山に、5合目から登れるかもしれない。そうするともっと高い山に登ることも可能です。皆さんと一緒に高い山を目指したいと思います。
金型新聞 2022年6月9日
関連記事
常識にとらわれない金型 イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る 〜新ビジネス〜 1975年生まれ、静岡県出身。98年立命館大学卒業後、富士通に入社し、システム販売などに従事。2004年稲垣金型製作所に入社、18年…
企業間連携でフィールド広げる 自動車骨格部品などのアルミ押出金型を手掛けるエフアンドエムは今年1月、5軸加工機の導入コンサルティングサービスを始めた。長年運用してきた経験やノウハウを活かし、金型や部品メーカーのニーズにマ…
属人をシステム化へ ツール測定機や工具管理システムなどを展開するZOLLER Japanの焼きばめ装置搭載ツール測定機「redomatic」は、工具を取り付ける焼きばめ工程から工具測定までを自動かつ高精度で行い、安全で効…
プログラム作成やワーク搬送 人手不足への対策だけでなく、品質向上の観点からも自動化ニーズは高まっており、それに対応する技術は進化している。また、プログラム作成やワークの搬送など自動化の領域が多様化している。 金型づくりで…