昨秋、日本金型工業会は6年ぶりに改訂した「令和時代の金型産業ビジョン」で、金型メーカーはこれまでのように単に言われたものを作るだけの「工場」から、顧客に価値提供する「企業」への変革が必要だと指摘した。これまで続けてきた…
明輝 岩手・一関工場で挑む金型加工の効率化、高精度化【Innovation〜革新に挑む〜vol.2】
バンパーやグリルなどの自動車部品を中心に、家電製品、一般産業用品といった幅広い産業分野のプラスチック射出成形用金型を手掛ける明輝(神奈川県厚木市、046-224-2251)。同社は20年以上に渡ってMOLDINOの切削工具を愛用し、加工効率の向上や高精度化などに取り組む。今年1月に第2工場を新設した一関工場を訪問した。
一関に第2工場を新設
1948年に熱硬化性樹脂用金型のメーカーとして設立。現在、自動車のバンパーやグリルなどの大物金型からインテークマニホールドやセンターパネルなどの中~小物金型を手掛けている。製造拠点はマレーシア、メキシコ、タイ、アメリカなどグローバルに展開し、国内は神奈川県厚木市の神奈川工場と厚木工場、岩手県一関市にある一関工場の3か所に構える。
中でも一関工場は、金型重量5tまでの中~小物金型や、神奈川工場、厚木工場で製造する大物金型の部品などを加工する。今年1月には敷地内に第2工場を新設。30tクレーンや出力300tのダイスポッティングプレスを導入し、大物金型の修理、改造などに対応できる体制を整えた。大手自動車メーカーの生産集約で東北に集積する自動車産業の需要に対応するのが狙いだという。
敷地内にはシボ加工メーカーの棚澤八光社(大阪府東大阪市)の工場も設置し、金型からシボ加工まで一気通貫での提供を可能にしている。将来的には、大型MCなども設備し、2500tクラスの大物金型も製造できる体制の構築を計画している。
凹凸の深い加工に課題
同社はもともとテレビや白物家電などの家電製品向け金型が主力で、20年ほど前までは9割近くを占めていた。それが2000年以降、家電メーカーの海外シフトによる需要減少に伴い、自動車分野にシフト。現在では手掛ける金型の約8割が自動車向けだという。
自動車向け金型が増加する中、切削加工の現場では家電製品向け金型とは異なる多くの加工課題に直面。特にバンパーやグリルなどの自動車部品の金型は家電製品の金型に比べて、3次元曲面やアンダーカット形状など複雑で凹凸の深い加工が多く、従来の工法だけでは加工効率や精度などに問題があった。
こうした現場での悩みを解決したのがMOLDINOの工具だった。「加工相談からオリジナル工具の製作まで当社の様々な要望に応えてくれた」(黒柳貴宏社長)。現在、同社で使用する工具の約8割がMOLDINOというほど絶大な信頼を置いている。
放電から切削への置き換えを実現
オリジナル工具では、ペンシルネックボールエンドミルがその一例。同社が手掛ける金型の中に深さ2.5~3㎜の側面加工が必要なものがある。従来は放電加工機で加工していたが、生産効率を高めるために切削加工への置き換えを検討。「他社は有効刃長が2㎜で届かなかったが、MOLDINOは4㎜あり、加工できるようになった」(製造課の千田修一課長)。
その他、MOLDINOの様々な工具を使用し、多くの課題を解決してきた。中でもコーティング被膜「パナシアコート」を採用したエンドミルでは、従来の工具で1枚しか加工できなかった主型(S55C)が2枚以上加工できるようになったという。
また、超硬ねじ切りカッタ「エポックスレッドミル」では、これまで不可能だと考えていた焼き入れ処理後のねじ切り加工が可能になった。「術がなく、絶望していたのを、この工具が救ってくれた。それ以来、常備している」(千田課長)。
5軸加工が強み
一関工場は16年ほど前に同社で初めて5軸マシニングセンタ(MC)を導入した工場でもある。そのため、5軸また同時5軸加工に対して高度なノウハウや技術を有し、「一関工場の強みになっている」(黒柳社長)。「V55‐5XA」(牧野フライス製作所)と「V90S」(同)の2台の5軸MCを設備し、導入当時から割り出し5軸ではなく、同時5軸でシームレスな形状加工を実現している。こうした同社の5軸加工を支えるのもMOLDINOの工具だ。
その一つが異形工具「GALLEA(ガレア)シリーズ」。外周に大きなR刃、先端に小さなR刃を持ったソリッドエンドミル「GS4TN」では、カスプの小さい加工面で、磨き時間を従来の5分の1まで短縮した。「海外メーカーの異形工具と比べて外周刃のRが緩和されており、当社の仕上げ代でも加工がしやすい。MOLDINOの工具の良さは、日本の金型加工現場の感覚にあった工夫が施されているところだ」(千田課長)。
MOLDINOの工具が欠かせない
金型製造現場では今後、これまで以上に人手不足の解消や生産性の向上が求められる。そうした中、同社では5軸加工の活用、加工プログラムの効率化などに取り組み、さらなる自動・連続運転の実現を目指す。「こうした取り組みを進めるには安定した精度、寿命で加工できるMOLDINOの工具が欠かせない」(黒柳社長)。同社は今後もMOLDINOとともに金型加工技術の革新に挑む。
会社概要
- 本社機構:神奈川県厚木市金田1030
- 電話:046-224-2251
- 代表者:黒柳貴宏社長
- 創業:1948年
- 従業員:195人(国内)
- 事業内容:プラスチック射出成形用金型設計・製作。
金型新聞 2022年8月10日
関連記事
EV金型・成形品が増加 精工技研(千葉県松戸市、047・311・5111)の2024年3月期売上高は、前年同期比3・1%減の157億8500万円だった。営業利益は24・3%減の10億5200万円。電気自動車(EV)部品向…
AI・ロボット開発のベンチャー企業a‐roboは2023年2月、プラスチック成形中の異常を検知し、成形機を制御するカメラシステム「GROW‐V」を発売した。 カメラの画像情報をもとにAIが金型の異常を検知する。既存のシス…
オートフォームジャパン(東京都港区、03・6459・0881)はスイス・オートフォーム社の日本法人として2007年に設立された。シミュレーションソフトメーカーでは後発となる同社はプレス成形に特化し、圧倒的な計算速度を強み…
先を予測し恐れず投資 自動車のボディやフレーム向けプレス金型を手掛ける進恵技研(栃木県足利市、0284-73-2135)は、ハイテン材(高張力鋼板)用の金型を得意とし、年間約600型を生産する。創業1987年という後発…