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加工全体をCAE解析、開発リードタイムを短縮[プレス加工技術最前線]

自動車の電動化や軽量化ニーズの高まり、短納期化、熟練作業者の減少など、プレス加工を取り巻く環境は大きく変化している。プレス加工メーカーへの要求も高度化しており、これまで以上に技術革新を進め、変化するニーズに対応することが必要になっている。メーカー各社は、電動化部品や超ハイテン材への対応、プレス加工全体の解析などに挑む。また、これらの加工を支えるプレス加工機も進化を続けている。本特集では、こうしたプレス加工技術の最新動向に迫る。

トヨタ自動車 ー設備まで含めた動的精度解析ー

センシング中のプレス機

トヨタ自動車で精密部品のプレスや樹脂金型を手掛けるモノづくりエンジニアリング部では、金型だけでなく、プレス機を含めた加工全体のCAE解析を進めている。解析精度を高め、型修正を減らし、開発リードタイムを短くするのが狙いだ。

同部で手掛けるステータコアなどの金型はミクロンオーダーが大半。「従来のように金型だけでなく、設備まで含めた動的精度を解析しないと成形後の金型補正は減らせない」(モノづくりエンジニアリング部の要素技術開発室の藤原慎平グループ長)ため、プレス機まで含めた解析に着手した。

では、解析のために、金型やプレス機のどこをどうセンシングし、モデル化するのか。「金型をどれだけ精緻に仕上げても、金型はプレス機の剛性や精度に倣ってしまう」ため、まずはプレス機をモデル化。細かな荷重変化による影響やプレス機のスライド平面度など、プレス機の剛性と精度を反映させたモデルを作成した。

さらに、どのような因子を加えればどんな現象が起きるのかなどを細かく描いた「機能ブロック図」を作成し、センシングや原因究明が必要な部位を分析。このブロック図は「関係者との課題解決をスムーズにし、アプローチすべきことを明確にする羅針盤のようなものになった」ともいう。

機能ブロック図

結果、プレス機に歪みセンサ6か所、金型に型温度センサ4か所、変位センサを金型とプレス機のZ方向に8か所、金型のXY方向に4か所に取り付けた。それだけでは連続的な挙動が分からないため、富士テクニカルリサーチが開発した光ファイバー製の線形センサで、連続して型温度と歪みのデータを取れるようにした。また、変位センサは部位で要求精度が異なるため、0・025μm~2μmまでの3種類を活用した。

さらに「金型の静的精度は保証してもプレス機への取り付け時など、色んな段階でプレス機はひずむ」ため、プレスに至る過程で逐一歪みを測り、解析モデルに反映していった。こうした結果、12μmあった実機と解析の乖離を1μmまで抑え、型の補正時間を20日に短縮した。

ただ解析精度は1μmになったが、プレス機の変位自体がなくなるわけではない。このため、変位を見込んだ事前補正や、変位を抑制できる金型の開発も進めている。

一つが事前に見込みを織り込む方法。「例えばあらかじめ5μm変位が分かっているなら、金型で事前にずれを織り込む」。しかし、これだと解析と異なる経年的な変化が出た場合、型補正が発生するデメリットがある。

もう一つが変位自体を抑制する方法。ここでは2つのアプローチで進めている。ひとつはプレス機の影響が金型に伝わらないように、プレス機と金型をガイドで連結させない方法。プレス機の影響は受けない反面、高速プレスには不向きだ。

藤原慎平グループ長

もう一つは、プレス機と金型を締結させるが、プレス機の影響を極力減らせる独自構造の金型開発も進めている。「いずれもメリット、デメリットがあるので最適な方法を検討したい」という。

今後について、今回の取り組みは単発の評価型だったため「n数を増やしていくこと、そして外部から影響を受けないロバスト性を高めていく。将来は精密プレスだけでなく、大型や樹脂成形にも展開していきたい」(藤原グループ長)。

金型新聞 2022年8月10日

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