金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

25

新聞購読のお申込み

AM技術の可能性
DMG森精機 AM部 ブルーメンシュテンゲル健太郎 部長に聞く

ブルーメンシュテンゲル健太郎 部長

 金属3Dプリンタを使った金属積層技術(AM技術)は様々な分野で広がっている。代表的なものは航空宇宙、医療、自動車で、さらに多方面へ拡大することは間違いない。そこで金属3Dプリンタを活用した次世代の金型づくりの可能性を探るべく、パウダーベッド方式の金属3Dプリンタとパウダーノズル方式と5軸加工機を組み合わせた複合加工機を販売するDMG森精機のAM部のブルーメンシュテンゲル健太郎部長に、金型における金属3Dプリンタの活用方法やメリット、将来性について聞いた。

冷却・補修・異種材の接合

2つの金属3Dプリンタの特長は。

 AM技術は溶接に近く、パウダーベッド方式は一層ずつ積み上げる技術で、形状の自由度は高いが、造形速度は遅い。一方、パウダーノズル方式はベッド方式に比べ、形状の自由度は下がるものの、造形速度は速く、リードタイムが求められる分野に強い。当社はこの2つの技術と切削加工を併せ、ワンストップソリューションの総合力で金型分野に提案できる。

金型のメリットは。

 金型における金属3Dプリンタのメリットは3つ。1つはベッド方式の形状の自由度を活かしたコンフォーマルクーリング(冷却水管)の製作で、成形面に合わせた自由な形状の冷却水管を作ることができる。もう1つは、ノズル方式と5軸加工による金型の補修だ。プレスや鍛造は摩耗が激しく、補修のリードタイム削減と品質の安定に課題を持っていた。従来の補修は溶接、焼入れ、熱処理など複数工程あり、それを1台の機械に集約すれば、人の技能による品質のばらつきがなく、リードタイムも最大80%削減した実績がある。AM技術を使うと、新品同様の高寿命に戻せた事例もある。最後は異種材の接合だ。例えば、プレスや鍛造の母材に焼入れ鋼を使用するが、そこに高速度工具鋼(ハイス鋼)を造形することでコーティングのような役割と同時に、マルテンサイトの効果で硬度も上がり、耐摩耗性に優れた金型にできる。

異種材の活用は広がっているのですか。

 ドイツの金型研究者の間ではキャスティング2・0といって、異種材を組み合わせた金型の研究が活発になっている。キャスティングの課題は冷却で、穴加工だと強度に問題がでる。そこで、熱伝導率の高い銅合金を使い、金型の中に冷やしやすい金属の脈を作る。そうすれば、金型の割れの危険性も少なく、冷却性を高めることが可能だ。大手自動車メーカーでは、銅合金を付加し金型温度を260度から160度に下げることに成功した。新しい金型作りはすでに始まっている。

そのほかの活用は。

 欧州自動車メーカーはホットプレスにAM技術を使う。例えば、冷却だ。業界テーマは耐摩耗性に優れた別材料を異種材の接合として使用できるかだ。そのほか、摩耗の激しい箇所に耐摩耗性に優れた材料を造形(コーティング)し、滑り、めくり上がりを防ぐことも考えている。

今後材料開発が加速

金型分野にAM技術を使う上で必要なことは。

 金型設計だけでなく、金属3D造形も含めデザインを考える人材育成がポイント。また、材料の知識や金型を使用する中で、どこが摩耗しやすいかなど、金型の知見も重要になる。今は機械加工による仕上げが必要で、5軸のプログラミング知識も必要だ。

金属3Dプリンタの今後は。

 科学や機械工学の進歩でAM技術に適した材料の開発が進むだろう。今の金属3Dプリンタ用の材料は他の用途で使っていた材料をAM技術に適合させたもの。3Dプリンタ独自の材料が開発されると、もっと大きなメリットが出てくる。AM技術は成長途中で、変化し続けている。技術も完成しておらず、我々もさらに具体化できるようにしたい。

金型新聞 2020年5月14日

関連記事

関東製作所 渡邉社長インタビュー 【特集:営業ってどうする?】

デジタルマーケティングで見込客を獲得 近年は国内の金型市場が縮小しており、いかに新規開拓を行うかが大きな課題となっており、効率良く営業活動を展開するための仕組みやシステムの構築も求められる。年間の新規引き合い件数500件…

匠ソリューションズ 金型や湯の温度を見える化【金型応援隊】

ベテランの勘・コツに頼らない部品工場を目指し、生産現場への型温・湯温の見える化の要求は高まっている。 匠ソリューションズが開発した生産中の型温・湯温見える化システム「TWINDS‐T」は、①作業を邪魔しない温度データワイ…

【鳥瞰蟻瞰】エスアイ精工社長・指尾 成俊氏 QCD+「E(Emotion=感情)」

選ばれる企業になるために経営者の美意識によって顧客の感性に訴求する 当社は1986年に創業したカーボン素材などの高精度加工を得意とする従業員13人の会社です。主に半導体の製造工程で使用されるカーボン製治具などを手掛けてお…

【この人に聞く】三菱電機産業メカトロニクス事業部事業部長・清水則之氏「生産性高めるサービスを提供する」

 高精度、高性能な放電加工機で金型産業に貢献してきた三菱電機(東京都千代田区、03-3218-2111)。近年は、機械だけでなく、遠隔地からのメンテナンスサービスやAI技術の活用など金型づくりの高度化に対応するサービスや…

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –アジア–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

トピックス

AD

FARO スキャンしたらすぐに結果まで:工数低減を実現

金型のメンテナンス、修復、複製に3次元測定アームを活用 製品を製造するために欠かせない金型ですが、そのメンテナンスには多くの課題が存在します。金型は使用するうちに摩耗し、時... 続きを読む

関連サイト