金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

07

新聞購読のお申込み

コアコンセプトテクノロジー CTO 田口紀成氏に聞く
〜DXがなぜ必要か〜

 あらゆる業界で叫ばれているDX(デジタルトランスフォーメーション)。各企業には、デジタル技術を使い、ビジネスモデルや組織、働き方など会社そのものの構造を大きく変えていくことが求められている。金型業界も例外ではない。次代を勝ち抜くためには、DXを実現し、競争力を高める必要がある。では、そもそも金型におけるDXとは何か。そして、どうすればDXを実現できるのか。「DXリーディングカンパニー」を掲げ、システム開発やITコンサルを手掛けるコアコンセプトテクノロジーのCTOである田口紀成氏に聞いた。

・田口紀成氏
 1977年生まれ、茨城県出身。2002年明治大学大学院卒業後、インクス入社。製造業向け三次元CAD/CAMシステムの開発に従事。09年コアコンセプトテクノロジーの設立メンバーとして参画し、15年取締役CTOに就任。14年からは理化学研究所客員研究員も兼務する。

暗黙知を定量化

貴社について。

 2009年創業で、業務・ITコンサルティング、システム開発、構造解析や熱解析などの解析サービス、IoTソリューションなどを手掛けてきた。現在はこれらを個別に提供するだけでなく、顧客のあらゆる課題に対して、DXをキーワードに総合的なサポートを行っている。

DXへの関心は高い。

 当社への引き合いも年々増加傾向にある。おそらく多くの人が期待されているのは、コスト削減だろう。ただ、それではこれまでのコスト削減策と変わらない。DXで重要なのは、定性的なものを定量化すること。熟練技能者の勘やコツといった暗黙知を形式知化したり、データを駆使した「データドリブン」での営業活動を展開したり。こうした取り組みがDXにつながる。

なぜ今、必要か。

 例えば、人に依存した活動が中心だと、今回のコロナ禍で既存の受注が減少し、新規受注の獲得に動こうとしても難しい。インターネットを活用したマーケティング活動ができれば、新しいニーズを掘り起こすことができ、海外市場も見えてくる。これまでの業種、分野、エリアから大きく商機が広がる。また、人手不足という課題も解消できる。デジタル技術を取り入れることで、あらゆる可能性が広がる。

DXを実現するには。

 まずは、どういう製造工程で、どのくらいのコストで作れるのかを「見える化」することが大事。見積もりは人への依存度が高く、DX実現のボトルネック。この「入り口」を変えれば、仕事を大きく変えられるはずだ。

データ分析し加工や営業に

どう「見える化」を。

 加工形状をパターン化して整理する。加工形状を分類すれば、その分類ごとに使う機械や工程など加工の流れが決まり、原価も分かる。これは一品一様の金型でも可能だ。ただ、それには製造工程の整備、工具やCAMの標準化などが必要になる。これが実現できれば、見積りにかかる工数の削減、人材の問題などが解消でき、今よりも多くの仕事をとれるようになる。一方でデジタル化にも課題はある。

どんな課題か。

 デジタルデータは完璧ではなく、CAD/CAM間のデータ受け渡し誤差やコンピュータの演算精度などによってばらつく。開発から設計、製造まで、デジタルデータによる一気通貫のエンジニアリングチェーンを構築するのは難しい。これを解決するために、全く新しいコンセプトのCAMシステムの開発に挑んでいるが、課題も多い。現状は人の力が必要。人は設計などの上流工程か磨きなどの最終工程で、中間の工程はコンピュータに任せ、自動化もしくは半自動化という形で進めていくのが現実的だろう。

金型メーカーが目指すべきところは。

 DXでより高精度を目指し、今までにない新しいものをつくってほしい。デジタル技術を駆使することで、これまで人の手に頼っていた鏡面加工や微細加工もより簡単に実現できるようになる。既存の機械でも一桁上の精度の世界が見えてくる。新しい世界をつくるためのツールとして取り入れてほしい。

金型新聞 2020年8月10日

関連記事

この人に聞く
オークマ 家城 淳社長に聞く

 令和元年に新社長に就任したオークマ・家城淳社長。市場が不透明化している中、「機電情知一体」「日本で作って世界で勝つ」を掲げるオークマの今後について家城社長の思いを聞いた。  家城淳社長愛知県出身。85年大隈鉄工所(現オ…

久野金属工業 金型・プレス・組立一貫生産【金型の底力】

プレス業界の活性化に ハイテン材など高張力鋼板や難加工材のプレス金型及びプレス加工を手掛ける久野金属工業は、次世代車向けのプレス部品の製造を強化するため、約30億円を投じ、愛知県豊明市に新工場を建設。金型からプレス加工、…

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –メキシコ–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

【ひと】ケーワールドism社長・澤井健司さん(55) 金型技術生かし自社商品をヒットさせた

金型技術活かし自社商品をヒットさせた  『日本一の金型職人になりたい』と、金型製作に没頭した若き日の澤井健司社長。町工場が集積する大阪・八尾で金型作りに励む日々だったが、ひょんなことから独立し、ケーワールドismを設立。…

【鳥瞰蟻瞰】エスアイ精工社長・指尾 成俊氏 QCD+「E(Emotion=感情)」

選ばれる企業になるために経営者の美意識によって顧客の感性に訴求する 当社は1986年に創業したカーボン素材などの高精度加工を得意とする従業員13人の会社です。主に半導体の製造工程で使用されるカーボン製治具などを手掛けてお…

トピックス

関連サイト