金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

04

新聞購読のお申込み

【新春特別インタビュー⑧】オーニック社長・難波 健氏「異なる人材活躍するワンチームとなる」

考え方や能力異なる 人材活躍するワンチーム 時代の変化にしなやかに ~ダイバーシティ~

 1976年生まれ、北海道札幌市出身。99年工学院大学工学部機械工学科を卒業し、オーニックに入社。2013年、社長に就任。経営理念であり創業者(叔父)の意思を受け継ぎ、障がい者が働きやすい職場づくりに日々取り組む。趣味は映画鑑賞、読書。尊敬する人は父・難波功一氏。近ごろのマイブームは靴磨き。

 コロナ禍で需要が減り、一方で脱ガソリン車の動きは産業構造をも揺るがしかねない。日本の金型を取り巻く環境はいま、大きく変化しています。そんな変化の時代を乗り越えるカギの一つが、ダイバーシティ経営だと感じています。

 性別や国籍、身体的能力にこだわらず多様な人が働く。考え方や能力、生い立ちを個性として認め、それぞれの働き方ができる環境をつくる。それは働く人の不便を改善するだけでなく事業全体の改善にもつながるからです。

 オーニックは障がいを持つ人を雇用するために創業した金型部品メーカー。身体的、知的、精神的な様々な障がいを持つ人が働いています。私は1999年に入社し、2013年に叔父の後を継ぎ、働く人が能力を発揮できる職場づくりを続けてきました。

 漢字を読めない知的障がいの人のためにマニュアルの全ての漢字にルビを振る。下半身で温度を感じることが苦手な車イスの人のために作業現場の室温を一定に保つ。

 それはその人たちのためにしたことでした。けれど、ルビを振ったことで他の人もミスが減り、恒温にしたことで金型部品の品質が良くなった。事業全体の改善にもつながったのです。

 それと、ダイバーシティこそいまのような変化の時代に柔軟に対応できるのでは、とも感じています。様々な感性や発想を改善活動や事業展開に取り入れることで、時代の変化にしなやかに対応できると思うのです。

 ものづくりにおいて、人の多様性に合わせるダイバーシティよりも、人の能力や思想が同一的な方が生産性は上がります。けれどそれは市場が一定方向に成長している時の論理で、市場が変化する状態では多様な感性が混在する方が針路を見誤らないと思います。

 ダイバーシティというと障がい者や外国人を雇用することと思われがちですが、私はそうは思いません。成功体験や固定概念の無い新入社員の意見を取り入れる。保育園に子供を送り迎えする社員が参加できる時間に会議を開く。工具は女性が持てる重さにする。

 そうした「多様」な人が活躍できる職場をつくる。そして、「仕事の成果」そのものを尺度として評価する。それがダイバーシティではないでしょうか。ですから、そんなに身構えなくても明日からでもできるんです。やってみればきっと新たな発見や成果につながります。

 それに、全体の成果のために個性を生かす「適材適所」が得意な日本人は、その素養を持っていると思います。それも世界トップクラスの。だから、ダイバーシティでワンチームとなった日本企業はかなり強いと思いますよ。

 オーニックは?。これからはもっと重度の高い障がいを持つ人を受け入れていきます。日本のあらゆる企業でダイバーシティが進んだら、現状のままだと存在価値がなくなりますから。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

この人に聞く
ニチダイ 伊藤 直紀 副社長

 冷間鍛造金型などを手掛けるニチダイは2018年3月期、目標としていた売上高150億円を超え、19年3月期には売上高174億円と過去最高を更新。だが、昨年から続く米中貿易摩擦や新型コロナウィルスの感染拡大に加え、主要顧客…

【新社長に聞く】共和工業・熊谷勇介社長「金型通じ、顧客の夢カタチに 」

くまがい・ゆうすけ1985年大東文化大学経済学部卒、同年共和工業入社。2013年海外営業部長、20年常務執行役員社長補佐、新潟県三条市出身、58歳。 大型の樹脂型を手掛ける地元三条市の共和工業に入社したのは1985年。以…

田口型範 社長 田口 順さん(70)
〜ひと〜

親子2代で旭日単光章を受けた  昨年11月、秋の叙勲で「旭日単光章」を受賞した。創業以来72年連続で黒字経営を続けたこと、2007年に経済産業省から「元気なモノ作り中小企業300社」を受けたことなどが認められた。「個人で…

黒田機型製作所 金属AMで新事業【金型の底力】

プレス金型やウレタン発泡成形金型を手掛ける黒田機型製作所は今年4月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。高い冷却効果が求められるバイオ樹脂向けの金型開発に着手する。主力の自動車業界に加え、新たな事業の柱…

久野功雄氏

【プレス型特集】
久野金属工業 久野 功雄専務に聞く
飽き性を夢中にさせたプレス金型の魅力

自動車を中心に高精度かつ複雑形状な部品の開発、金型製造、量産まで手掛ける久野金属工業。EVなど次世代自動車の部品を生産する一方、ITを活用した改善活動など社内改革も積極的に行っている。その改革を推進してきたのが入社19年…

トピックス

関連サイト