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豊田自動織機が金属AMのコスト増を吸収した方法とは
金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産性向上や、金型の長寿命化など得られるメリットは少なくない。では、金属AMの活用を進める現場では、そのコストをどのようにして吸収しようとしているのか。金属AMを活用しながら、コスト削減に工夫を凝らす企業の取り組みを取材した。
設計自動化や材料削減
コスト増をほぼ吸収
金属AMで必ず課題に挙げられるコスト。金属AMでカーエアコン用コンプレッサのダイカスト製品と金型部品を製作する豊田自動織機大府工場では、様々な取り組みで、高くなったコストを「ほぼ吸収できている」(コンプレッサ事業部アルミ技術部デジタル企画室佐藤良輔室長)という。寿命向上や材料の削減、生産性向上、設計の自動化などあらゆる手法でコストを切り出してきたからだ。
元々金属AM採用の狙いは、自由な水管によって冷却効果を高め、溶着したアルミを除去する磨き作業を削減すること。型温を溶着、湯まわり、離型剤残りなどを考慮し、130~230℃に設定するなどして、磨きの激減に成功した。
ある部品では9万ショットでも磨きなしを実現。4年前にEOS社の金属AMを導入以来、約650個の部品を製造し、その全てで磨き時間低減効果が得られ、そのうち約8割で磨きなしを実現。昨年度は年間206時間の磨き時間を削減できたという。
こうした効果の一方、「工芸品を作っているわけではない」(佐藤室長)と、採算面の改善にも取り組んできた。今や「型費単独で、従来比2倍前後高くなるコストをほぼ吸収できている」という。
その方法は多岐にわたる。一つは型寿命向上。水冷回路を型表面近くまで寄せるため、割れによる水漏れが発生しやすかったり、管路が細く詰まりが発生したり、当初は寿命が短かった。硬度の最適化や水質の管理をすることで、導入当初の寿命の約3倍まで改善したという。
2つ目が製造面でのコスト削減だ。同社が使うマルエージング鋼粉末は「キロ当たり単価が従来金型鋼材の数十倍」。このコストを抑えるために考えたのが金属AMでの造形部を少なくすること。「アルミが接する部分だけを造形し、土台部を鋼材で製作し、土台部も再利用するようにした」(写真)。また、機械の型部品あたり償却費を抑えるために、稼働率向上も図る。治具の開発や複数個取りにすることで、「年間約1800時間の稼働時間を確保している」という。
金属AMに置き換える部品の選択も重要になるという。佐藤室長は「冷却に課題があり、寿命が短いもの、もしくは生産性が極端に悪化しているものでないと高い効果は得られない」と話す。
3つ目として、生産性向上によるコスト削減も進めている。その一つが離型剤の塗布量の削減。従来は大量の離型剤を塗布していたが「金属AMの金型は内部冷却の効果が高い」ため、少量の原液の塗布で済む。それでも「成形サイクルが10%向上」し、1個当たりの製品コスト削減につなげていく。
設計工数の削減にも取り組んでいる。金属AMは水管を自由に設計できる一方、設計の自由度が高く、CAEでの型温解析と回路修正を繰り返す必要がある。このため、従来の金型では1時間程度だった冷却穴の設計時間が「1型当たり約30時間必要になるものがある」という。そこで、自動で水管の位置を最適化できるシステムを構築中。「改良の余地はあるが、実際の設計工数は半減し、手動設計では困難な数百回の試行を自動計算できるようになる」。
こうした取り組みの結果、金属AMで制作する部品は増加してきた。現在、同工場で生産するダイカスト部品は年間約3500万個。その1割程度を金属AMが組まれた金型で生産する。佐藤室長は「全て金属AMに置き換わるわけではないが、今やなくてはならない装置。コストも勘案しながら、2割程度まで引き上げたい」とし、さらなる活用領域の拡大を図る考えだ。
豊田自動織機 会社概要
- 本社:愛知県刈谷市豊田町2-1
- 代表者:大西朗社長
- 創業:1926年
- 従業員:6万6997人
- 事業内容:繊維機械、産業車両、自動車部品の製造販売。
金型新聞 2022年5月10日
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