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「魅力ある組織に人は集まる 楽しく役立つ活動増やす」 東北金型工業会会長(プラモール精工社長)・脇田高志氏【鳥瞰蟻瞰】

東北金型工業会会長(プラモール精工社長)・脇田高志氏

魅力ある組織でなければ人は集まってきません。東北金型工業会をより魅力ある団体にするために、会長就任後すぐに、3つの分科会を作りました。若手が中心となって積極的に参加してもらい、勉強会などを通じ、メリットや魅力を感じてもらいたかったからです。また、カーボンニュートラル(CN)など個社では、学びづらいことを勉強することも魅力になると思っています。

東北金型工業会は1967年、通商産業省(現経済産業省)の肝いりで、東北の金型業界の発展を目指し、設立。今年で55年の長い歴史を持つ団体です。金型メーカーだけでなく、機械や工具など金型づくりに関する様々な企業57社が参加しているのが特徴です。

歴史ある団体ですが、私が入会したのは10年ほど前。83年に金型部品や成形を手掛けるプラモール精工を創業し、長年金型業界で仕事をしてきましたが、こうした活動にあまり興味はありませんでした。そんな時に、日進工具の故後藤勇会長に「それじゃだめだよ」と言われ、入会することに。参加してみると、仲は良いし、非常に楽しく過ごさせてもらってきました。

ただ一方で、せっかく業界の人が集まるのだから、楽しいことに加えて、「もっと役に立つことをできればいいのに」とも考えていました。そして、会長就任と同時期に聞いたのが、大阪の金型協会の解散のニュースです。これは他人事ではないと強く感じました。早速、危機意識を役員と共有。「もっと有意義な交流ができないか」と議論し、すぐに3つの分科会を立ち上げました。

「セミナー企画」、「工場見学交流会」、「会員PR会」の3つです。それぞれの分科会では、若手の経営者に責任者になってもらい、色んな企画を考えてもらっています。若いリーダーが先頭に立たないと組織は活性化しませんから。

また、個人や一企業で、できることには限界があり、みんなが集まるから生まれたり、学べたりすることも工業会の魅力だと思っています。その一つとして、近く「SDGs(持続可能な開発目標)におけるCN」をテーマにした研修会を開きます。

なぜこのテーマを選んだのか。今後の金型業界には不可欠になると考えているからです。長年、金型業界に携わってきて感じるのはこの30年間大きな進歩がないということ。機械や工具は進化しましたが、金型づくりは大きくは変わっていません。それは「対処療法」で進めてきたからです。

例えば、当社が強みとする射出成形の分野では、樹脂が未充填だったり、バリが出たりという問題が発生します。大抵の場合、その都度「どう対処しようか」と考えます。本来は、それらを発生させないために、「根本的にどうすべきか」と考えるべきだと思うのです。

CNやSDGsといった大きな課題の前では、こうした対処療法で対応できません。CNやSDGsに本気で向き合うことが、根本的な問題や対応策を考える良い機会となると思います。

また、研修会は私が講演します。有識者を呼んでも良かったのですが、そのほうが皆さんにとって、身近に感じてもらえると考えたからです。私が話せば、いろんな意見を言うこともできますし、双方向のやり取りも可能です。「私もやってみよう」という雰囲気になることも期待しています。

私の役割は次世代につなぐ「線路」を作るようなものだと考えています。こうしてみんなで「やってみようか」とか「やってよかった」ことを積み重ねることで、東北金型工業会の魅力をもっと高めていきたいですね。

金型新聞 2022年9月10日

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