金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

04

新聞購読のお申込み

ヤマト技研 設備投資、加工技術力を向上し、新規分野の加工ニーズに対応【Innovation〜革新に挑む〜vol.7】

プレス用金型の設計・製作を中心に事業を展開するヤマト技研。近年は金型のメンテナンスや部品加工なども手掛け、事業領域を拡大する。新規分野のニーズに対応するため、プレス成型解析や、同時5軸マシニングセンタ(MC)、5面門型MCや3Dスキャナ型3次元測定機などの新規設備を導入する他、MOLDINO(モルディノ)とともに加工技術力の向上にも取り組む。同社工場を訪問した。

昨年導入した5面門型MC

新規開拓、事業領域を拡大

同社は1985年にプレス用金型メーカーとして創業し、87年に法人化。自動車シート部品など400tクラスの順送プレス用金型・TRF・ロボット搬送型を得意とし、事業を展開してきた。一方で、5年前からは新規顧客の開拓に注力。年間で5~6社ほどだった取引先は、50社程度まで拡大した。

非接触3D機上計測の導入

また、近年は金型以外の事業にも注力する。2015年に部品加工事業を開始。金型部品をはじめ、アルミ・ステンレス部品、機械カバーや骨組みなどの製缶加工なども手掛けている。さらに4年前から金型のメンテンナス事業にも取り組み始めた。プレス加工メーカーと協業し、金型保守の協力体制を構築している。

「金型は受注の波が大きく、平準化が課題だった。谷間を埋めるために、金型で培った工程設計やモデリングのノウハウ、金属加工技術、組立調整、メンテナンスなどの各工程を事業化しようと考えた」(青木孝悌社長)。

5面門型MCで大物加工に対応

事業領域を拡大する中、新規分野の加工ニーズに対応するため、設備投資や加工技術力の向上に力を入れる。ここ5年で立形MCや5軸MC、ワイヤ放電加工機、3Dスキャン型3次元測定機などを導入。こうした設備増強に伴い、本社工場から徒歩1分ほどの土地に第二工場も設立した。

大型の製缶加工にも対応

昨年には大物加工に対応するため、5面門型MCを導入。最大で3×2mの大物ワークの加工を可能にした。非接触機上計測も搭載し、機械から下ろすことなく、追い込み加工が可能。ワークの脱着に伴う位置合わせや芯出し作業が省略され、手戻りの軽減につながっている。

また、スキャニング機能を活用したリバースエンジニアリングにも対応する。「図面がない大型金型をスキャンし、図面化したり、そのデータをもとに削り出したりもできる。こうした需要は今後さらに高まっていくとみている」(青木社長)。部品加工事業でも製缶加工を始めとした大物部品の加工ニーズが増えており、「(5面門型MC導入によって)基礎技術を応用し、幅広い要求に対応できるようになった」(青木社長)。

「スレッドミル」で大きな効果

同社では現在、使用する工具の半分程度をMOLDINOが占めているという。特に刃先交換式工具はほとんどがMOLDINO。「アルファ高送りラジアスミル TD4N」や「アルファ高送りラジアスミル ASRFmini」などを使用している。

これほど高いシェアになったのは、6年前に超硬ねじ切りカッタ「スレッドミル」を使用してから。「従来、タップを切り忘れて焼入れに出した場合、放電加工か焼きなまして再加工するしかなかった」(青木社長)。「スレッドミル」は焼入れ鋼でもめねじ加工が可能。放電加工や焼きなます必要がなくなり、工程短縮とコスト削減につながったという。

3D部品とMOLDINO工具

また、同社は「スレッドミル」を同様の課題を抱える加工メーカーにも紹介する。「業界の発展のためにも良い情報は同業他社とも共有し、産業として成長していきたい」(青木社長)。

「スレッドミル」以降、次々とMOLDINOの工具を導入。「TD4N」は金型メンテナンス事業でも用いており、トリムパンチなど焼入れ材部品の加工で使用。加工時間を短縮し、短納期化を実現した。「MOLDINOと出会っていなければ、現在の当社はなかったかもしれない」(青木社長)。

MOLDINO成田工場の講習会に参加

工具だけでなく、MOLDINOが提案する荒工程から高精度に仕上げる加工方法「Hi-Pre²(ハイプレツー)」などを取り入れ、加工効率の向上に取り組んでいる。さらに、今年2月にはMOLDINO成田工場(千葉県成田市)で開かれた講習会にも全社員で参加。工具から工法改善、教育までと総合的なサポートを受けている。

トリムパンチの自由形状を特急加工

今後は同時5軸MCを駆使し、トリムパンチの「特急加工サービス」を自由形状や小径サイズにも拡大していく考え。「同時5軸加工により、小径工具が入らないような隅部の加工ができ、プロファイル加工を早くこなすことが可能になる。自由形状であっても焼入れ後の完成品が中2日で納入できる」(青木社長)。

青木孝悌社長

同時5軸加工をさらに発展させるため、バレル(たる)形状の異形工具「GALLEA(ガレア)シリーズ」の活用も検討している。「やりたいことは挑戦し、失敗から加工を学ぶ。2か月に1本は新しい工具をテストしている」(青木社長)。

また、同社では同業他社や近隣企業との交流、連携も進める。「業界が活性化しなければ、個社の発展もない。みんなで成長し、製造業の素晴らしい文化をしっかりと次世代へ残していきたい」(青木社長)。

会社概要

  • 本社: 愛知県みよし市福田町桶場15-2
  • 電話:0561・34・4239
  • 代表者:青木孝悌社長
  • 創業:1985年
  • 従業員: 15人
  • 事業内容:
  • プレス金型設計・製作、プレス部品加工など

金型新聞 2024年4月10日

関連記事

テラスレーザー 光技術のコンテストで「最優秀チャレンジ賞」受賞

レーザー溶接・金型補修機器メーカーのテラスレーザー(静岡市駿河区、054-270-7798)はこのほど、光産業創成大学院大学(浜松市西区)主催の光技術を使った事業計画を競うビジネスコンテスト「フォトニクスチャレンジ202…

スリーディー・システムズ・ジャパン データ化で金型の課題解決【金型応援隊】

 スリーディー・システムズ・ジャパンは今年、ソフトウエア製品群のブランドを「OQTON」に統一。3Dスキャンデータを活用した金型製造や、保守・メンテナンスの効率化を提案している。 「データ化することで、金型の保管や起こし…

黒田精工 モータコア金型の生産強化【金型の底力】

2025年までに2.5倍に 黒田精工は昨年12月、モータコア金型などを手掛ける長野工場(長野県池田町)を拡張した。新たに設立した工場棟には300t大型高速プレス機や磁石の樹脂固着システムなどを導入。電気自動車(EV)市場…

三起精工 大関専務が社長に就任

油圧プレスメーカーの三起精工(栃木県足利市、0284-72-2002)は4月1日、大関敏也専務が社長に就任したと発表した。仙波勝弘社長は代表権のない会長に就任した。 大関俊也(おおぜき・としや)氏は1971年生まれ。88…

パンチ工業 精密機器関連が好調 22年4-9月期

パンチ工業(東京都品川区、03-6893-8007)の2022年4‐9月期売上高は、11%増の216億6500万円だった。営業利益は13.1%減の15億3700万円で、原材料・資源価格の高騰が大きく影響し、増収減益となっ…

トピックス

関連サイト