金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

16

新聞購読のお申込み

―成形をゆく―
笠原成形所(新潟県)

IT活用したスマート工場

情報をリアルタイムで把握

 精密部品の射出成形を手掛ける笠原成形所(新潟県南魚沼市、025・776・2141、笠原利博社長)はIT技術を駆使した、スマートな工場づくりを進めている。その中心にあるのが経営理念にもある「21世紀型の職人」だ。その職人像とは「勘だけに頼らず理論づけができ合理的判断ができる技術者」(笠原社長)のこと。独自の手法でそうした職人を育成したり、金型の能力を最大限引き出したりするなど、IT技術を最大限活用し、21世紀型の成形メーカーを目指している。

タブレットから一目で

つながるスマート工場

 同社が強みとするのは、型締め力20~120tまでの微細精密な樹脂成形。現在は自動車関連の電装部品のほか、内視鏡関連など医療部品の成形が柱だ。金型は購入、支給合わせて年300型程度使っている。

 その中心にあるのが生産管理システム「MICS」(ムラテック情報システム)で、あらゆる情報をつなげるスマート工場の頭脳の役割を担う。受注から発注までを行う一般的なシステムにとどまらない。成形機の稼働状況、作業標準管理などを工場全体で必要な情報をリアルタイムに把握、伝達することができるようにした。

 その情報を最大限活用すべく、全員にタブレット端末を配布。製造、検査、金型保守などそれぞれが必要なデータがすべて紐づけられており、ある製品をタップすれば、図面、履歴、注意すべきポイントなどが一目でわかるようになっている。

 さらに必要な機能をカスタマイズ化し、笠原流にアレンジしている。例えば品質管理。成形品質は金型、成形機、温調機など様々な要素が複合的に絡み合う。追加した品質監視システム「MultiEDTL」(ソディック)は1ショットごとに、温度や圧力などのデータを蓄積、不良品判定にも活用している。トレーサビリティでは、生産指示書にQRコードを付け、照合精度の向上を図っている。

 成形条件の分析用にスーパーエンプラ用の成形支援システムも開発した。樹脂は同じ素材を同じ成形機、同じ条件で成形しても「重さが異なったり、製品ができなかったりすることもある」(関正隆部長)。大抵は樹脂圧を上げるか、樹脂温度を上げるかで対応するが「どちらが正解かわからない」ため、成形条件を数値化し、ベストな選択をできるようにしている。

金型能力を最大限に活用

 笠原社長は「金型を大事に使う」と話す。その意図は金型の持つ能力を最大限まで引き出すためだ。「金型は数ミクロン、最近ではナノレベルになるほど進化している。それを最大限引き出せてないのは成形メーカーの責任でもある」との思いがあるからだ。そのための工夫も徹底している。
 例えば金型の取り付け。クレーンで取り付ける際、キャビとコアの数ミクロンレベルの微妙なずれも生じる。「そのまま成形すれば製品ができても、金型に負荷をかけている」。どのくらいの負荷が金型にかかりセットされるか、正確に判断するために質量をはかるデジタルスケールを使うという。
 加えて、専用治具も開発し、取り付け時の微妙な誤差を抑えるようにしている。

笠原成形所が手掛けた精密な樹脂成形品

人材育成も笠原流

 同社では積極的に資格取得も推奨している。検査部門ではパート従業員も含めた全員が品質管理検定4級以上を取得している。製造現場であれば、射出成形技能士という風に必要な資格を明確化。
 支援も「笠原流」で行う。それが、関正隆部長らが中心となって作成した約180ページにわたる専用プログラムだ。射出成形、成形材料、成形条件の決め方、成形後の作業など全8章からなる本を作成し、教育を行う。またここも同社らしく、教育前と後での理解度も数値化。「実は曖昧だった知識がクリアになった」という声もあるなど、評判は上々だ。

小ロット化への対応カギ適正在庫を数値化

 近年同社が注力する医療機器部品は、成形点数は比較的多いが、コネクタなどと比べると大半が小ロット生産。しかも、ユーザー企業から発注計画が出ることも稀だ。
 そうなると、ある程度の在庫を持つ必要も出てくる。ここでも、MICSが活躍している。これまで直近の1年や数カ月といった出荷情報をデータ化しており、それに基づいて適正在庫を割り出している。その効果は大きい。「以前はその見込みも立たず、無駄な廃棄も出ていたが、最近ではかなり削減された」(関部長)という。
 笠原社長は「小ロット対応は今後も重要になる」とみており、ほかの取り組みも模索中だ。小ロット品では耐久性も問題なく、早く作れる可能性があることから、金属3Dプリンタによる金型製造も検討している。複数の企業とその実用化に向けて話し合いを進めているという。
 さらにMICSも進化させる予定だ。MICSを核に、品質管理、成形機、温調機などをネットワーク化し、トータルでの管理を行うほか、監視カメラによる良否確認などにもつなげ、高品質で安定した製品づくりを目指す。


会社メモ

笠原社長
笠原利博社長

本社工場=新潟県南魚沼市五日町335―1
創  業=1973年
代表者=笠原利博社長
売上高=3億9200万円(2015年度)
従業員数=50人
主な事業内容=精密プラスチック成形(型締め力20t〜120tクラス)
保有設備=プリプラ式成形機34台(ソディック)など。


金型新聞 平成28年(2016年)6月3日号

関連記事

リョーエイ ダイカスト向け離型剤塗布システムを開発

産業用設備の設計・製作やアルミダイカスト製品の検査サービスを手掛けるリョーエイ(愛知県豊田市、0565-29-6060)はダイカスト向け離型剤塗布システムである「小型エコスプレーシステム」を開発した。従来システムより離型…

【鍛造金型特集】<br>日本鍛造協会 八木議廣会長に聞く<br>熱間鍛造の動向

【鍛造金型特集】
日本鍛造協会 八木議廣会長に聞く
熱間鍛造の動向

 鍛造は大きく熱間と冷間に分かれるが、重量ベースでは圧倒的に熱間が多い。成形品が比較的大きいことも理由の一つだ。一方で、金型はコストや納期の問題から圧倒的に内製率が高いという。自らも熱間鍛造部品を手掛ける、日本鍛造協会の…

イスカルジャパン °90肩削りフェースミルを販売開始

高効率加工と高い経済性 イスカルジャパン(大阪府豊中市、06-6835-5471)はこのほど、90度肩削りフェースミル「NEODO(ネオドゥー)」の販売を開始した。高い剛性を持ち、高能率加工を可能にする一方、経済性も高め…

がんばれ!日本の金型産業特集  <br>エムアイ精巧 宮田 和久社長

がんばれ!日本の金型産業特集
エムアイ精巧 宮田 和久社長

目指すは金型総合メーカー 量産と切り離された開発部門  「とにかくやってみることが大事。ときには背水の陣で臨むくらいでないと新しいものは生まれない」と話すのは、金型開発からプレス加工までを手掛けるエムアイ精巧の宮田和久社…

日本金型工業会 創立60周年迎える<br>第44回「金型の日」記念式典開催

日本金型工業会 創立60周年迎える
第44回「金型の日」記念式典開催

11月24日 ホテルインターコンチネンタル東京ベイ 業界功労者など表彰  日本金型工業会(牧野俊清会長・長津製作所会長)は11月24日、ホテルインターコンチネンタル東京ベイ(東京都港区)で、創立60周年記念式典及び第44…

トピックス

関連サイト