金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

07

新聞購読のお申込み

加速する高硬度直彫り

工程短縮、精度安定に利点

 超高張力鋼板やガラス繊維など成形材料が高度化していることから、HRC60を超える焼入れ鋼や超硬材を使うなど金型の高硬度化が進んでいる。こうしたニーズに合わせて、高硬度材料を効率よく高精度に加工できる方法の一つとして、直彫りする動きが加速している。最近では、工具メーカーや機械メーカーの技術革新も進み、超硬を切削したり、鏡面加工できたりとその領域もますます広がっている。

直彫りで磨きレス


 高硬度材を直彫りするメリットには「工程短縮」、「複雑化・高度化する金型への対応」、「最終精度の安定化」の大きく3つが挙げられる。これらの利点は、直彫りで磨きが不要になる「磨きレス」によるところが大きい。

 まず「工程短縮」では、磨き工程が省けるため、単純に1工程少なくて済む。特に人の手が不可欠で、手間やコストが多くかかる磨き工程を削減できれば、全体の生産性向上につながるのは当然だ。

 2つ目の「複雑化・高度化する金型への対応」は、手仕上げが難しい複雑な金型や、手磨きでは不可能な金型など、技術的に機械化せざるを得ない金型が増えてきたことが背景にある。最近では自動車のヘッドライトのような面粗度の高い金型のほか、長寿命化、離型性の向上のために「鏡面ピカピカ」に加工するニーズも高い。

 最後の「最終精度の安定化」では、切削することで手仕上げによる加工精度のバラつきを抑えることができ、安定した精度が得られる。実際にこうした利点を活かして、金型づくりに取り組む企業も増えている。

 ある電機メーカーの金型内製部門では、手磨きで不可能なナノオーダーの金型を要求され、直彫り化に着手。超精密加工を実現したのに加え「切削一発で鏡面に加工できるため、大幅な工程短縮、生産コストの低減につながった」と話す。

 また、ある自動車部品メーカーの金型部門は、手磨きによる加工精度のバラつきをなくすために、直彫り化を進めている。技能差に加え、電極の加工誤差も反映されないため、より安定した精度での高品質な金型づくりを実現している。

 こうした高硬度材の直彫りが可能となったのは、機械や工具メーカーの研究開発の賜物といえる。フレや振動の少ない高速加工機、PCD(多結晶焼結ダイヤモンド)やCBN(単結晶ダイヤモンド)工具、刃数を増やした工具など、高硬度材切削を支える加工技術も日々進化し続けている。

金型新聞 平成28年(2016年)7月4日号

関連記事

金型メーカーの新分野展開が加速する

事業再構築補助金を活用 金型メーカーの新分野展開、業態転換が加速している。コロナ禍や、自動車の電動化などによって事業環境が大きく変化する金型業界。多くの金型メーカーが2021年からスタートした「事業再構築補助金」を活用し…

リーダーの条件[part1] 経営のカリスマが心掛けていること

サイベックコーポレーション 顧問 平林 健吾氏  1944年生まれ、長野県出身。工作機械メーカー、プレス部品メーカーを経て、73年に信友工業(現サイベックコーポレーション)を設立。2009年顧問。18年旭日単光章を受賞。…

EV化が進む中、金型メーカーはどう動くか?【特集:自動車の電動化とダイカスト】

自動車の電動化はダイカスト業界に大きな変化をもたらし始めている。バッテリーEVが増えるとエンジン関連の金型の減少は必至だ。一方で、バッテリーケースのアルミ化や、シャシーなどを一体造形する「メガキャスト」などで金型の大型化…

関東製作所 渡邉社長インタビュー 【特集:営業ってどうする?】

デジタルマーケティングで見込客を獲得 近年は国内の金型市場が縮小しており、いかに新規開拓を行うかが大きな課題となっており、効率良く営業活動を展開するための仕組みやシステムの構築も求められる。年間の新規引き合い件数500件…

【特集】2030年の自動車と、金型と

PART1:電動化というチャンス、新たな需要が生まれるPART2:この10年を振り返るPART3:新潮流に挑むチャレンジャーたちPART4:記者の目 PART1 電動化というチャンス、新たな需要が生まれる  電子部品、モ…

トピックス

関連サイト