需給ギャップが改善し、明るさも戻り始めた金型業界。後押しの一つとなっているのが、一部で言われる金型の国内回帰だ。果たして本当に国内に回帰しているのか。どんな金型が戻っているのか。一方、ここにきて「職人」不足を危惧する金型…
ネットワーク化進む 金型関連企業
技術力を誇る日本の金型メーカーが、連携・組織化なりチーム・ネットワーク化を始めている。何れも好調な滑り出しで、20人以下の事業所が89%(2012年工業統計)を占める業界に新たな事業創造を吹き込んでいる。金型メーカーはこれまでにも、景気の後退が長く続いた時期に「集合」し、その後の景気の立ち直りで「離散」する経験をしたことがあるが、今回は、時代の背景(グローバル化、地産地消)も、事情(国内生産の縮小)も、内容も90年代とは異なる連携が始まっている。技術を持ち寄り、連携を強めるケースを報告する。
以前、弊社の金型座談会で「行列のできる小さなラーメン屋」がヒントになる、と大垣精工上田勝弘社長が言った言葉を思い出す。中小金型メーカーが生き残り成長を続けるには、他社より優れた技術・技能を持ち、絶対的な差別化を持つことだ、と上田社長はラーメン屋を説いた。
また、新たな市場(医療・航空機など)、新たな加工(成形)領域を切り拓くことも海外に活路を求めることも重要になる。
されど言うは易く行い難し。特に10人以下の金型メーカーは、簡単なことでない。人・物・資金・情報がままならない。
こうしたジレンマの時代にあって、再び得意な技術力を持ち寄り、連携・組織化、チーム・ネットワーク化で新たな事業創造を始める金型メーカーがある。
一つは、金型しんぶん5月14日で紹介した一般社団法人「モノづくりネットワーク九州」の活動が上げられる。九州工業大学情報工学部を退官した鈴木裕氏を理事長に、九州の金型、成形メーカー6社(アトラス化成、九州池上金型、東洋プレシジョン、藤井精工、豊洋エンジニアリング、ワークス)が集合し、共同で金型設計・製作、金型技術者の育成、金型メーカーと成形メーカーとの交流などを積極的に取り組んでいる。「会員数は14、15企業・人に、沖縄に設立のモノづくりネットワーク沖縄とも連携を取り、九州地区の元気の源になっている」(鈴木理事長)。
その連携先の一般社団法人「モノづくりネットワーク沖縄」(金城盛順金型技術研究センター長)も製造業が不毛の地に沖縄発の金型技術を生み出すために立ち上がった。
既に高速・5軸MCやNC複合旋盤、熱処理炉など機械加工や金型製造に使われる先端機器が設備され、県内外企業との連携が始まっている。このセンター内には、大垣精工(上田勝弘社長)も進出し、機械加工を始めている。
民間企業の連携も始まっている。埼玉県入間市周辺の金型・成形・加工メーカー5社が「チーム入間」を結成し、共同で仕事を請け負う体制を整えた。それぞれの得意分野を持ち寄りスマートフォンから人工衛星に至る最先端分野の部品を加工し供給をするもので、「1社の力ではとても無理な仕事が取れるようになった」(狭山金型製作所大場治社長)と言う。
中小企業同士が手を結び、行動範囲を広げる動きが加速している。
金型新聞 平成26年(2014年)7月2日号
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