金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

02

新聞購読のお申込み

ポートフォリオ拡大し、製造工程の全体最適を支援 鈴木渉氏(オートフォームジャパン社長)【この人に聞く】

オートフォームジャパン(東京都港区、03・6459・0881)はスイス・オートフォーム社の日本法人として2007年に設立された。シミュレーションソフトメーカーでは後発となる同社はプレス成形に特化し、圧倒的な計算速度を強みに自動車産業を中心にユーザー数を拡大してきた。最近ではアッセンブリシミュレーションを製品ラインアップに追加するなど、車体製造工程の全体最適を支援する。22年7月に社長に就任した鈴木渉氏に現在注力している取り組みや、今後の展開などを聞いた。

解析が生む価値を顧客と議論

オートフォームジャパン社長 鈴木 渉(すずき・わたる) 氏。
1979年生まれ、千葉県出身。横浜国立大学院工学府修了後、IT専門商社を経て、2011年オートフォームジャパン入社。19年副社長、22年社長就任。現在に至る。

日本での事業を振り返って。

1995年にオートフォーム社がプレス成形シミュレーションソフト「Forming」の販売を開始し、同時に日本でも発売された。日本で最初に広がったのは金型メーカーだった。計算速度が速く、素早く検証できることで、導入が進んだ。その後、自動車メーカーにも普及し、現在では多くの企業に採用してもらっている。

製品の特長は。

一つは、プレスに特化したソルバーを採用し、計算速度を格段に速めたこと。ものにもよるが、従来品の5~50倍で計算できることもある。また、もう一つはオプションモジュールの「DieDesigner」。このモジュールを使うことで、CADを使わずにモデルを作成でき、素早く検討、修正を行うことができるようになった。

現在注力しているのは。

シミュレーションによってどういう価値を生み出すことができるのかを顧客と議論し、提案していくことだ。これまでも課題ごとのソリューション提案は行っていたが、それぞれの課題を解決することが顧客のどんな価値につながるかまでは提案できていなかった。今後は製造プロセス全体で最適化が図れるような提案に力を入れていく。

そのためには。

製品ポートフォリオを広げている。21年にアッセンブリ工程のシミュレーションソフト「Assembly」を発売した。このソフトはデジタル上で部品を組み付け、修正箇所などを事前に検証することができる。プレスとアッセンブリの工程を最適化できる製品を揃えたことで、全体最適に向けた提案が可能になった。

開発の方向性は。

スマートマニュファクチャリングに対応した製品を開発している。センシングによって取得した現場のデータをシミュレーションに活用することで、自律的に問題を解決できる製品を目指している。すでにパイロット版が開発されており、2年後には実用化できるはずだ。

今後の目標は。

日本はまだまだ潜在的な需要が高く、重要な市場の一つと位置付けている。金型メーカーを始めとした日本の製造業の競争力強化に貢献し、年率15~20%程度の成長を目指していきたい。

金型新聞 2023年3月10日

関連記事

植田機械 植田 修平社長に聞く<br>UMモールドフェアの見どころ

植田機械 植田 修平社長に聞く
UMモールドフェアの見どころ

ものづくりのお役に立ちたい 未来を拓く新技術  来場者の技術革新に貢献  JIMTOFで展示された工作機械や機器、ソフトなど金型や部品加工における最新技術を一堂に集めて披露するUMモールドフェア。今回は新型の5軸加工機や…

「金型業界で働く女性の声や悩みにも耳を傾けて」名古屋精密金型営業部部長・渡邊祐子氏

インターモールド大阪では4月20日、女性雇用のメリットや現場の男女共同参画などを討論する特別イベントが開かれる。労働人口減少により製造業は女性の活躍が課題で、金型業界も働き方改革など取組みが始まっている。日本金型工業会で…

鳥羽工産 甦れ!往年の名車たち【金型の底力】

「コロナ禍で航空機など需要が落ち込み、試作車市場も変化している」と語ったのは鳥羽工産の傍島聖雄社長。同社は金型製作(プレスや射出成形)から量産(少ロット)まで一貫生産体制を強みに、これまで自動車の試作型や試作車の製作、航…

「新規事業に挑戦、やってみなければ分からない」藤井精工社長・藤井福吉氏

会社の未来を考え新規事業に挑戦やってみなければ分からない 金型メーカーに生産計画はありません。受注産業で顧客次第ですから。「来月どうしようか」。これを毎月のように繰り返しています。当社も創業から46年間、同じように事業を…

新中期経営計画「SAIMS247」スタート【ササヤマ challenge!Next50】

自動車部品などのプレス金型を手掛けるササヤマは設立50周年を迎えた昨年度、新たな中期経営計画をスタートした。その3カ年のプロジェクトは金型製作期間を半減するなど競争力の再強化を目指す。EV化が加速するなど取り巻く経営環境…

関連サイト