金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

23

新聞購読のお申込み

中辻金型工業 切削工具を自社開発

培った技術活かす

自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えており、医療関連や半導体関連ではこれまで以上に部品の複雑化や微細化が進んでいる。多くの金型メーカーが、こうした変化をチャンスと捉え、自社の高い金型技術や加工技術などを生かし、新しい需要を上手く取り込もうと動き始めている。新規設備に投資したり、独自の商品や技術を開発したり、その取り組みは様々だ。政府も補助金などの支援制度を設け、金型メーカーの新分野の開拓を後押ししている。金型メーカーの新分野はどこにあるのか。“ニューフロンティア”を目指す各社の挑戦に迫る。

中辻金型工業 自社開発の切削工具

刃長は少し長めの3D

金型加工に特化

幅広い金型材に対応

プレス金型や量産、溶接・組立などを手掛ける中辻金型工業は自社開発のスクエアエンドミル『N‐CUT』(4枚刃)を販売。「金型屋がプロデュースしたエンドミルで、金型加工における課題を解決したい」とは中辻隆社長。金型加工をコンセプトにアイデアを織り込んだエンドミルで、加工に悩む金型メーカーの課題解決に挑む。

「現在開発されている切削工具はアルミやステンレスに対応したものが多く、金型材など鉄系に特化したものは稀だ」と中辻社長は指摘する。

そこで金型材として使用されるss材から焼入れ鋼まで幅広く対応するために、母材に超微粒子超硬ウルトラマイクログレイン0.4μを採用し、高靭性や高硬度を実現。特殊なコーティングを施し、耐熱は1000度、表面硬度は最大3800Hvと非常に硬く、耐熱性や耐摩耗性、高滑り性に優れ、焼入れ鋼の加工も切込み量を多く取れる形状で、加工時間短縮にも貢献する。

また、金型加工で使いやすいように刃長を少し長めの3Dに設定。「市販工具は2.5Dの場合が多く、刃長が足りないといったケースがある。金型メーカーの観点から使いやすい刃長にした」。

工具開発した背景にはオペレータによって工具選定や加工条件が異なり、加工時間や品質にバラツキが出る課題があった。昨今は新人や外国人採用も増えおり、安定した加工を行うには工具選定の重要性は高く、加工時間や品質のバラツキは金型製作のリードタイムにも影響を及ぼす。「同じ工具、同じ加工条件で標準化ずれば、誰が加工しても品質のバラツキは生じない」と工具選定と加工条件を統一にするために工具開発を進めた。

さらに、価格面でも購入しやすい低価格で販売。刃径1.0㎜で1650円から販売している。その理由は「高価な工具は破損した場合のデメリットを危惧する。価格をギリギリまで調整し、購入しやすさを重視した」。

今後はボールやラジアスエンドミルも視野に入れると中辻社長は話すが、「工具メーカーになるつもりはない」ときっぱり。次なる事業展開の一環として工具開発があるとし、新ビジネスの可能性に触れた。

会社概要

  • 本社 :大阪府東大阪市長田西4-1-16
  • 電話 :06-6746-0056
  • 代表者 :中辻隆社長
  • 従業員数:26人
  • 事業内容:プレス金型設計・製作、デジタルモールド設計・製作、プレス加工、メンテナンスなど。

金型新聞 2022年3月10日

関連記事

ウエブサイトやSNS活用し、見込み顧客発掘 【特集:営業ってどうする?】

金型メーカーの新規顧客の開拓方法が変わりつつある。これまでの直接訪問やテレアポといった手法から、インターネットやスマホの普及、コロナ禍で急速に進展した非対面活動の拡大によって、ウエブサイトやSNSなどを使って情報を発信し…

進化する技能伝承【特集:技能伝承最前線】

金型メーカーやプレス部品メーカーがデジタル技術や暗黙知の定量化による技能伝承にチャレンジしている。MR(複合現実)によるマニュアルで新人が経験者並みの作業をできたり、トライ結果を蓄積し改善方法を導きやすくしたり。熟練技能…

武林製作所 「マスクのほね」がヒット」

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

鋳造に独自の新工法
マツダ

特集 次世代車で変わる駆動部品の金型鋳造に独自の新工法  次世代自動車の技術は電動化に限らない。注目されるのがエンジンの進化だ。燃費性能を追求する新型エンジン「スカイアクティブ」。多くの自動車メーカーが電動化に力を入れる…

特集〜世界需要をどう取り込む
どう取り込む 変わる金型の世界地図

 国際金型協会(ISTMA)の統計によると、2008年以降の10年近くで金型生産額は約3割増加した。新興国の経済発展に伴う消費財の需要増や、自動車の生産台数の増加などを背景に金型需要が拡大したからだ。ただ、かつて日本が金…

トピックス

関連サイト