金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

AUGUST

27

新聞購読のお申込み

がんばれ!日本の金型産業特集
三恵金型工業 山田 俊影 社長

多段式金型を第2の柱に

技術開発に精密金型のノウハウ

三恵金型工業 技術 射出成形機に、金型が2つ重ねて取り付けられている。樹脂素材を充填し金型が開くと、無数の成形品がバラバラと落ちてくる。これは複数の金型で一度に大量に成形できる「多段式射出成形型」。プラスチック金型メーカーの三恵金型工業がここ数年、技術の確立に取り組む課題だ。

多段式射出成形型は多数個取りの金型を数セット連ねたもので、素材は一筋のランナーで全ての金型に送られる。このためノズルに近い金型には樹脂が溜まり、遠い金型には届かないなど、全ての金型に同じ条件で素材を行き渡らせ、成形品の品質を均一にするのが難しい。

三恵金型工業の主力製品は自動車の電装部品やエアコンなど、いくつもの凹凸のある部品の金型。その凹凸は細くて長く、多いもので1000にも及ぶ。山田俊影社長は「極めて複雑な形状の製品の金型は得意分野。これまでのノウハウを生かし研究を重ねてきた」。

多段式射出成形型に挑み始めたのはホームページを見て技術力に魅かれたある部品メーカーの依頼がきっかけ。新たな技術に挑戦しようと組み始め、昨年はものづくり補助事業にも選ばれた。

多段式射出成形型の特長は、既存の成形機を使って量産化できること。山田社長は「例えばリベットなど小さな部品なら旧型の成形機でも一度に60~80個もの成形ができる。新たな量産手段として技術を確立し新たな事業の柱にしていきたい」。

金型の技術高め次世代へ

三恵金型工業 人 三恵金型工業がこのところ取り組んでいるのは、金型をつくる技術力のさらなる向上や、これまでに培った技術の伝承、そして新たなことにチャレンジする風土の醸成だ。山田社長は「金型づくりの基礎の力をもう一段レベルアップさせ、ベテランが持つノウハウを若手に受け継ぐ。その一方で、新しいことに挑むことを楽しめる精神を育み、会社の力を高めたい」と話す。

その一つが、2カ月に1度開く社内研修会だ。金型づくりに携わる企業や技術者として日々の業務で取り組むべき姿勢や、金型の品質向上や品質改善の新たな技術を学ぶことが目的で、元自動車部品大手の工機部の工場長が指導する。

研修のテーマは「5Sの目的とそのプロセス」や「金型の原価低減の方法」など様々で、技術者の金型づくりへの基礎となる姿勢や、改善への意識が変わってきたという。さらに、研修の課題は全社で共有し、ベテランも若手も力を合わせ取り組むため、それが技術を次世代に教える機会にもなっている。

その一方で、多段式射出成形型など新たな技術に挑むことが、若手に金型づくりの魅力や、挑戦することの楽しさを教える場になっている。山田社長は「これからは今まで以上に金型の品質を高め、効率を良くしていかないといけない。そのためにもしっかりと基盤をつくり、未来を勝ち抜きたい」。


会社メモ

山田俊影社長

山田 俊影社長

代表者=山田 俊影社長
創業=1966年
所在地=富山県南砺市松木38-2
資本金=1,250万円
URLhttp://s-yamada98.wix.com/sankeikanagata
TEL=0763・52・1157
FAX=0763・52・0726
従業員数=50人
事業内容=プラスチック金型の設計製作、成形品製造販売
主な設備=立型高速MC2台(牧野フライス製作所)、立型MC12台(牧野フライス製作所など)、形彫放電加工機11台(牧野フライス製作所)、高精度ワイヤ放電加工機3台(牧野フライス製作所)、ワイヤ放電加工機3台(牧野フライス製作所)、2D―3D CAD12台(ソリッドワークスジャパン)、3D CAD2台(日本ユニシス)、CAD/CAM7台(C&Gシステムズ)、三次元測定機1台(東京精密)―など。


金型新聞 平成28年(2016年)9月10日号

関連記事

南海モルディ 金型補修を自動化【金型応援隊】

特殊鋼材料の販売や金型のメンテナンスを手掛ける商社の南海モルディ(22年9月に南海鋼材から社名変更)は、オリジナル製品「予熱くん」や「肉盛りくん」を開発、販売し好評を得ている。 「予熱くん」は、製造前の金型予熱、焼き嵌め…

高精度、省人化ニーズが高まる国内市場で注力すること 田代勝氏(三菱電機 産業メカトロニクス事業部長)【この人に聞く】

三菱電機は50年以上に渡って、高精度、高性能な放電加工機を開発し、付加価値の高い金型づくりに貢献してきた。近年では省人化ニーズへの対応に注力する他、金属3Dプリンタを開発するなど技術領域を広げている。同社は今後、金型業界…

【INTERMOLD・金型展・金属プレス加工技術展 総集編】
金型展編

自動化や離型の新技術 センサや工具の自社製品も  金型展では金型メーカーの独自技術を披露する場となっている。今回は特に自動化や離型性向上につながる提案が多く見られた。また、自社製品の開発や量産も含めた一貫生産体制で新たな…

牧野フライス製作所 人の作業やミス減らす、各種データを一元管理【特集:金型づくりを自動化する】

金型加工支援システム 「人が介在する作業をどう効率化するか」—。牧野フライス製作所は工具やワーク、加工情報などのデータを自動でつなぎ、一元管理することで、人による作業を減らす提案を強化している。 加工の自動化は進化する一…

―成形をゆく― <br>佐藤金属工業(堺市堺区)

―成形をゆく―
佐藤金属工業(堺市堺区)

板厚3〜6㎜を三次元成型 年産100種類、1,700万個  3~6㎜の板厚を3次元成型するところに得意技術を持つ。3、4工程掛かる鍛造加工を順送加工にする、切削加工をプレス加工に置き換える、焼結やダイカストをプレス加工す…

トピックス

関連サイト