金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

03

新聞購読のお申込み

【鍛造金型特集】
日本鍛造協会 八木議廣会長に聞く
熱間鍛造の動向

 鍛造は大きく熱間と冷間に分かれるが、重量ベースでは圧倒的に熱間が多い。成形品が比較的大きいことも理由の一つだ。一方で、金型はコストや納期の問題から圧倒的に内製率が高いという。自らも熱間鍛造部品を手掛ける、日本鍛造協会の八木議廣会長(八木工業社長)に熱間部品や熱間鍛造型の動向などを聞いた。

八木会長

八木会長

ー熱間部品では金型の調達はどうなっているのか。
 「当社は4割が内製で6割が外注だが、業界全体では9割が内製ではないか。基本内製という考えが主流だ」。

ーその理由は。
 「熱間鍛造は素材をつぶす、成形、バリを取るなど複数の工程に分かれるが、成形工程の金型は、1回でダメになることもあり、納期面で外注では間に合わない。また、成形条件の設定が複雑で、金型にノウハウが詰め込まれており、競争力の面からも外には出せない。消耗品として金型を費用計上できるなど、コストメリットもある」。

ー日本の鍛造部品メーカーの競争力はどうか。
 「納期やコスト、精度いずれでも競争力はあると思う。海外では自動車メーカーが鍛造を内製していないので、鍛造部品メーカーの力も強い。このため、価格は高い傾向にあり、特にコスト競争力は高い。そうした海外の需要を取り込むことが課題だ」。

ーそのほか課題は。
 「熱や潤滑などのパラメータが多く、1200℃に熱した材料でも、成形条件は打つたびに代わる。そうした状況を安定させ、再現性を高めることも課題だろう。材料や電気代が高くなっているなか、安くつくることも重要になっている。二つの部品を一つにするなど一体成形したいという声は増えているほか、最近では一貫加工の要望も増えている」。

ー一貫加工とは。
 「成形だけでなく、穴あけ、熱処理なども後工程も行うことだ。ユーザーも発注しやすく、管理しやすいからだ」。

ー市場の見通しは。
 「熱間鍛造では約75%が自動車関連で、なかでも、足回り、クランクシャフトやコンロッドなどエンジン関連、トランスミッションなどの部品が多い。足元では、海外の自動車メーカーが日本国内の部品メーカーへの発注量が増えていて、忙しい。17年は05年以来の240万tを超えた。この水準は18年も続く」。

ーエンジンやミッションとなるとEV化への対応も必要ですね。
 「長期的には部品点数の減少により、厳しくなり統廃合は必要になるかもしれない。とはいえ、そこは個々の企業で対応していくしかない」。

【関連記事:【鍛造金型特集】鍛造型、好調を持続 その背景や今後は

金型新聞 平成30年(2018年)3月10日号

関連記事

設計、見積もり時間を短縮 サイベックコーポレーション【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】

ギア部品など高難度な加工にも対応 プレス用金型メーカーのサイベックコーポレーションは金属成形加工シミュレーションを活用し、設計や見積もりにかかる時間の短縮を実現した。EV関連など高難度部品への対応を進めている。 同社は冷…

自動化で変わる人材 マルチ技術者を育成【自動化で変わる金型メーカー】

生産性の向上、人手不足への対応、人を介さないことによる品質向上—。目的や狙いは様々だが、金型メーカーにとって自動化は待ったなしだ。しかし、自動化には様々な変化が伴う。機械設備の内容もこれまでとは異なるし、自動化を進めるた…

微細加工でブランド化 稲垣哲也氏(アイジーエヴァース社長)【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…

MOLDINO ギガキャスト、燃料電池の金型向け切削工具を販売開始

大型化、難削化、微細化に対応 切削工具メーカーのMOLDINO(東京都墨田区、03・6890・5101)は2月17日、ギガキャストや燃料電池の金型加工に適した新製品を販売すると発表した。今年1~2月にかけて3製品を販売開…

アイジーエヴァース 5軸+APCで稼働率向上

デジタル技術の進化で、相次いで登場する新技術。次世代の匠はそれらの技術を金型づくりにどのように活かしているのか。また、それら能力を習得するには、どのようなスキルや育成が必要なのか。本特集では、様々ある新技術の中でも、次世…

トピックス

関連サイト