金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

【検証】変わる金型基金 新たな船出5
次世代への投資を

 前号では、日本金型工業厚生年金基金の制度移行に伴い、年金を退職金化することで得られるメリットなどを紹介した。では、そうした場合に加入者にはどの程度の負担や効果があるのか。より分かりやすく解説するために、モデルケースをもとにみていく。

【検証】変わる金型基金 新たな船出  解散後、新制度に移行
【検証】変わる金型基金 新たな船出2 3つの大きな課題解決へ
【検証】変わる金型基金 新たな船出3 年金有期化で安定運用
【検証】変わる金型基金 新たな船出4 退職金の一部を年金化

金型基金 給付モデル

 いずれにせよ、まずは退職金規程に年金基金を組み込むことを明記することが前提だ。そのうえで、具体的な数字をみていきたい。例えば22歳で入社し、60歳まで勤務する技術者に対して、仮に1000万円の退職金を出す場合。年金で積み立てられる額はいくらになり、月々の積立はいくらになるのか。

 年金額は給与に対して、掛け金率を乗じて算出するため、38年間の平均標準給与を33万4000円と仮定する(入社時20万程度で定年時45万程度)。掛け金率を新制度で最も低い0・90%とすると、月々の平均積立額は3000円程度で、定年時に200万円程度になる。最も高い掛け率の3%にすると、月々1万円強で、積み立ては640万円を超える(表参照)。

 つまり、掛け率によって異なるが、退職金の1000万円のうち、200万円から650万円程度を年金資産でカバーできる。しかも月々の掛け金額は前号でも紹介したが、税控除の対象だ。これを10人の事業所で想定すると、企業としての負担は、最安で月々3万円から最高でも10万円強で、退職金の積み立てが可能になる。

 業界の先行きが見通しづらいうえ、繁閑の差が大きい金型業界で、退職金給付を多く積み立てるのは難しい側面もある。しかし、みてきたように、年金基金を使えば、比較的軽い負担で、ある程度の退職金を積み増すことも可能だ。経営者だけでなく、従業員にとっても安心材料の一つと言える。実際に、制度が充実している看護師の業界などでは「年金基金の有無が採用の決め手となることもある」(荒木健太郎常務理事)という。

 2016年現在、日本全国の中小企業で、厚生年金基金の恩恵を受けられるのは237万人しかいない。先代らが作り上げた金型基金を、新たな形に作り替え、活用することは、これからの未来の世代のためでもある。

金型新聞 平成30年(2018年)5月14日号

関連記事

金型メーカーアンケート 値上げ進むも道半ば【特集:どうする値上げ】

材料費や電気代の高騰が続き値上げが不可避の中、金型メーカーのユーザーへの価格転嫁は進んでいるのか。本紙はその実態を調べるため、金型メーカーにアンケートを実施した。結果から、値上げが受け入れられるようになりつつあるものの道…

金型メーカー座談会<どうなる2014年 どうする今後の展開003>

金型メーカー座談会<どうなる2014年 どうする今後の展開003>

経営者が語る 精密加工や新分野に挑戦 2月10日号のつづき 司会 次年度には設備投資の一括償却が可能になるという話も出ていますが、投資計画に変更などありますか。 鈴木 毎年の積み重ねが重要ですからね。日本でどのようにもの…

三光化成 エアと水のハイブリッド冷却【特集:金型づくりで広がる金属AM活用】

ラティス構造を採用し、材料費と造形時間を削減 自動車関連を中心に6000品目を超える樹脂成形部品を生産する三光化成。ソディックの金属3Dプリンタ「OPM350L」を活用し、水とエアを冷却媒体として活用する「ハイブリッドコ…

多様化するニーズに応えるプレス加工機5選[プレス加工技術最前線]

自動車の電動化に伴い、モータやバッテリーといった電動化部品の加工需要が増加している。また、プレス加工時の状況をリアルタイムに把握して、生産性の向上や品質の安定化につなげる技術を開発する動きも進む。プレス加工機メーカー各社…

電動車で変わるプレス機械のニーズ 高精度、大型化が加速する[プレス加工技術最前線]

高張力鋼板(ハイテン材)の増加や、自動車の電動化で必要となるプレス部品の精密化などにより、プレス金型は高度化している。金型はプレス機の精度や剛性に倣ってしまうため、これまで以上に金型とプレス機の両方の知見が重要になってい…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト