金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

13

新聞購読のお申込み

【検証】変わる金型基金 新たな船出5
次世代への投資を

 前号では、日本金型工業厚生年金基金の制度移行に伴い、年金を退職金化することで得られるメリットなどを紹介した。では、そうした場合に加入者にはどの程度の負担や効果があるのか。より分かりやすく解説するために、モデルケースをもとにみていく。

【検証】変わる金型基金 新たな船出  解散後、新制度に移行
【検証】変わる金型基金 新たな船出2 3つの大きな課題解決へ
【検証】変わる金型基金 新たな船出3 年金有期化で安定運用
【検証】変わる金型基金 新たな船出4 退職金の一部を年金化

金型基金 給付モデル

 いずれにせよ、まずは退職金規程に年金基金を組み込むことを明記することが前提だ。そのうえで、具体的な数字をみていきたい。例えば22歳で入社し、60歳まで勤務する技術者に対して、仮に1000万円の退職金を出す場合。年金で積み立てられる額はいくらになり、月々の積立はいくらになるのか。

 年金額は給与に対して、掛け金率を乗じて算出するため、38年間の平均標準給与を33万4000円と仮定する(入社時20万程度で定年時45万程度)。掛け金率を新制度で最も低い0・90%とすると、月々の平均積立額は3000円程度で、定年時に200万円程度になる。最も高い掛け率の3%にすると、月々1万円強で、積み立ては640万円を超える(表参照)。

 つまり、掛け率によって異なるが、退職金の1000万円のうち、200万円から650万円程度を年金資産でカバーできる。しかも月々の掛け金額は前号でも紹介したが、税控除の対象だ。これを10人の事業所で想定すると、企業としての負担は、最安で月々3万円から最高でも10万円強で、退職金の積み立てが可能になる。

 業界の先行きが見通しづらいうえ、繁閑の差が大きい金型業界で、退職金給付を多く積み立てるのは難しい側面もある。しかし、みてきたように、年金基金を使えば、比較的軽い負担で、ある程度の退職金を積み増すことも可能だ。経営者だけでなく、従業員にとっても安心材料の一つと言える。実際に、制度が充実している看護師の業界などでは「年金基金の有無が採用の決め手となることもある」(荒木健太郎常務理事)という。

 2016年現在、日本全国の中小企業で、厚生年金基金の恩恵を受けられるのは237万人しかいない。先代らが作り上げた金型基金を、新たな形に作り替え、活用することは、これからの未来の世代のためでもある。

金型新聞 平成30年(2018年)5月14日号

関連記事

〜特集〜 金型づくりをスマート化する

生産現場を訪ねて三豊機工 鹿児島工場(南九州)  5台のAIV(Autonomous  Intelligent  Vehicle)が10棟の工場を跨いで縦横無尽に運行する金型工場。冷間圧造用金型を材料から製品まで一貫生産…

加工プログラムの効率化 テンプレートで時間短縮、3DCADで自動作成【特集:2022年金型加工技術5大ニュース】

金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…

金型ニューフロンティア 記者の目

新分野の開拓に挑む金型メーカーを取材した。各社、これまで金型で培ってきた技術を生かし、既存の顧客分野から新しい分野に進出したり、自社で独自商品を開発し、製品メーカーに転身を図ろうとしたり、その挑戦は様々だった。 その中で…

電動化3種の神器に挑む
〜生産現場を訪ねて〜 ニシムラ(愛知県豊田市)

特集  次世代車で変わる駆動部品の金型(バッテリー、モータ、電子部品)  「自動車向けの金型を手掛ける企業は今後、バッテリー、モータ、電子部品、この3部品に携わっていないと生き残れない時代になる」と話すのはプレ…

約40億円投じ新工場設立 超ハイテン技術を核に事業展開[プレス加工技術最前線]

自動車の電動化や軽量化ニーズの高まり、短納期化、熟練作業者の減少など、プレス加工を取り巻く環境は大きく変化している。プレス加工メーカーへの要求も高度化しており、これまで以上に技術革新を進め、変化するニーズに対応することが…

トピックス

関連サイト