金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

21

新聞購読のお申込み

【検証】変わる金型基金 新たな船出5
次世代への投資を

 前号では、日本金型工業厚生年金基金の制度移行に伴い、年金を退職金化することで得られるメリットなどを紹介した。では、そうした場合に加入者にはどの程度の負担や効果があるのか。より分かりやすく解説するために、モデルケースをもとにみていく。

【検証】変わる金型基金 新たな船出  解散後、新制度に移行
【検証】変わる金型基金 新たな船出2 3つの大きな課題解決へ
【検証】変わる金型基金 新たな船出3 年金有期化で安定運用
【検証】変わる金型基金 新たな船出4 退職金の一部を年金化

金型基金 給付モデル

 いずれにせよ、まずは退職金規程に年金基金を組み込むことを明記することが前提だ。そのうえで、具体的な数字をみていきたい。例えば22歳で入社し、60歳まで勤務する技術者に対して、仮に1000万円の退職金を出す場合。年金で積み立てられる額はいくらになり、月々の積立はいくらになるのか。

 年金額は給与に対して、掛け金率を乗じて算出するため、38年間の平均標準給与を33万4000円と仮定する(入社時20万程度で定年時45万程度)。掛け金率を新制度で最も低い0・90%とすると、月々の平均積立額は3000円程度で、定年時に200万円程度になる。最も高い掛け率の3%にすると、月々1万円強で、積み立ては640万円を超える(表参照)。

 つまり、掛け率によって異なるが、退職金の1000万円のうち、200万円から650万円程度を年金資産でカバーできる。しかも月々の掛け金額は前号でも紹介したが、税控除の対象だ。これを10人の事業所で想定すると、企業としての負担は、最安で月々3万円から最高でも10万円強で、退職金の積み立てが可能になる。

 業界の先行きが見通しづらいうえ、繁閑の差が大きい金型業界で、退職金給付を多く積み立てるのは難しい側面もある。しかし、みてきたように、年金基金を使えば、比較的軽い負担で、ある程度の退職金を積み増すことも可能だ。経営者だけでなく、従業員にとっても安心材料の一つと言える。実際に、制度が充実している看護師の業界などでは「年金基金の有無が採用の決め手となることもある」(荒木健太郎常務理事)という。

 2016年現在、日本全国の中小企業で、厚生年金基金の恩恵を受けられるのは237万人しかいない。先代らが作り上げた金型基金を、新たな形に作り替え、活用することは、これからの未来の世代のためでもある。

金型新聞 平成30年(2018年)5月14日号

関連記事

【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題 -事業承継-

PART3 狭山金型製作所 社長・大場治氏に聞く「事業承継」 60歳で「引退宣言」経営以外にやりたいことを「朝活」で考え方を伝える 55歳の時に60歳で社長を退くと社内外に「引退宣言」をしました。今59歳なので、あと1年…

ソディック 情報伝達の自動化、ハードつなげる提案も【特集:金型づくりを自動化する】

自動化の仕組みづくりを支援 ソディックはハードだけでなく、工程間のさまざまなデータをつなぐ自動化の仕組みづくりを提案している。その肝となるのが、加工や計測プロググラムなどの「情報伝達を自動化する」(プロダクションイノベー…

鉄やアルミをマグネシウムに置き換え 藤岡エンジニアリングが進める軽量化提案

脱炭素社会に向けた取り組みがものづくりで加速し、金型業界でもその動きが広がりつつある。先手を打つ金型メーカーの対応には大きくは2つの方向性がある。一つは、太陽光パネルの設置や設備の省エネ化などによる自社の生産活動でCO2…

〜精度よく、早く、安く・作る〜特集

〜精度よく、早く、安く・作る〜特集

高難度型を早く安く 自動化活用し品質安定  難易度の高い金型や、オンリーワン技術に高い付加価値があるのは当然。しかし、全てがそんな金型ばかりではない。大半の金型は、高精度は当然ながら「早く、安く」作ることが求められている…

三井化学、共和工業 M&Aで事業展開にシナジー【特集:連携・M&Aで乗り越える】

部品開発や共同研究 2014年に共和工業が三井化学グループに入ってから9年。グループ内で共同開発した部品が自動車メーカーに採用されたり、共同研究を進めたり、協業による相乗効果を高めている。近年は住宅設備部品開発でも手を組…

トピックス

関連サイト