金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

25

新聞購読のお申込み

コアコンセプトテクノロジー CTO 田口紀成氏に聞く
〜DXがなぜ必要か〜

 あらゆる業界で叫ばれているDX(デジタルトランスフォーメーション)。各企業には、デジタル技術を使い、ビジネスモデルや組織、働き方など会社そのものの構造を大きく変えていくことが求められている。金型業界も例外ではない。次代を勝ち抜くためには、DXを実現し、競争力を高める必要がある。では、そもそも金型におけるDXとは何か。そして、どうすればDXを実現できるのか。「DXリーディングカンパニー」を掲げ、システム開発やITコンサルを手掛けるコアコンセプトテクノロジーのCTOである田口紀成氏に聞いた。

・田口紀成氏
 1977年生まれ、茨城県出身。2002年明治大学大学院卒業後、インクス入社。製造業向け三次元CAD/CAMシステムの開発に従事。09年コアコンセプトテクノロジーの設立メンバーとして参画し、15年取締役CTOに就任。14年からは理化学研究所客員研究員も兼務する。

暗黙知を定量化

貴社について。

 2009年創業で、業務・ITコンサルティング、システム開発、構造解析や熱解析などの解析サービス、IoTソリューションなどを手掛けてきた。現在はこれらを個別に提供するだけでなく、顧客のあらゆる課題に対して、DXをキーワードに総合的なサポートを行っている。

DXへの関心は高い。

 当社への引き合いも年々増加傾向にある。おそらく多くの人が期待されているのは、コスト削減だろう。ただ、それではこれまでのコスト削減策と変わらない。DXで重要なのは、定性的なものを定量化すること。熟練技能者の勘やコツといった暗黙知を形式知化したり、データを駆使した「データドリブン」での営業活動を展開したり。こうした取り組みがDXにつながる。

なぜ今、必要か。

 例えば、人に依存した活動が中心だと、今回のコロナ禍で既存の受注が減少し、新規受注の獲得に動こうとしても難しい。インターネットを活用したマーケティング活動ができれば、新しいニーズを掘り起こすことができ、海外市場も見えてくる。これまでの業種、分野、エリアから大きく商機が広がる。また、人手不足という課題も解消できる。デジタル技術を取り入れることで、あらゆる可能性が広がる。

DXを実現するには。

 まずは、どういう製造工程で、どのくらいのコストで作れるのかを「見える化」することが大事。見積もりは人への依存度が高く、DX実現のボトルネック。この「入り口」を変えれば、仕事を大きく変えられるはずだ。

データ分析し加工や営業に

どう「見える化」を。

 加工形状をパターン化して整理する。加工形状を分類すれば、その分類ごとに使う機械や工程など加工の流れが決まり、原価も分かる。これは一品一様の金型でも可能だ。ただ、それには製造工程の整備、工具やCAMの標準化などが必要になる。これが実現できれば、見積りにかかる工数の削減、人材の問題などが解消でき、今よりも多くの仕事をとれるようになる。一方でデジタル化にも課題はある。

どんな課題か。

 デジタルデータは完璧ではなく、CAD/CAM間のデータ受け渡し誤差やコンピュータの演算精度などによってばらつく。開発から設計、製造まで、デジタルデータによる一気通貫のエンジニアリングチェーンを構築するのは難しい。これを解決するために、全く新しいコンセプトのCAMシステムの開発に挑んでいるが、課題も多い。現状は人の力が必要。人は設計などの上流工程か磨きなどの最終工程で、中間の工程はコンピュータに任せ、自動化もしくは半自動化という形で進めていくのが現実的だろう。

金型メーカーが目指すべきところは。

 DXでより高精度を目指し、今までにない新しいものをつくってほしい。デジタル技術を駆使することで、これまで人の手に頼っていた鏡面加工や微細加工もより簡単に実現できるようになる。既存の機械でも一桁上の精度の世界が見えてくる。新しい世界をつくるためのツールとして取り入れてほしい。

金型新聞 2020年8月10日

関連記事

成形不良を出さない生産システムの確立
岐阜大学 王志剛副学長に聞く、スマート金型開発の行方

 岐阜大学が2018年に3カ年の研究開発である「スマート金型開発拠点事業」を始めた。労働人口減少時代を想定し、従来にはない高効率な生産システムの確立を目指し、金型を使った量産システムの不良率ゼロを目標に掲げる。同事業は文…

【インタビュー】扶桑精工・松山広信社長「攻めの企業を目指す 」

営業改革や自社ブランド開発 まつやま・ひろのぶ1980年生まれ、東京都出身。2004年立教大学卒業後、UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、営業、企画などを経験した。19年扶桑精工に入社、20年同社社長に就任し、現在に…

三嶋商事 仕上げに専念したいというニーズに応える

ねじ転造盤やローリングマシンなどの販売や転造技術の開発を手掛ける三嶋商事(愛知県日進市、0561-72-2657)は部品加工部門を立ち上げ、冷間鍛造用金型のダイスケースなど1次加工(荒加工)の受託加工サービスを開始した。…

【新春特別インタビュー⑤】稲垣金型製作所取締役・稲垣 武洋氏「イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る」

常識にとらわれない金型 イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る 〜新ビジネス〜  1975年生まれ、静岡県出身。98年立命館大学卒業後、富士通に入社し、システム販売などに従事。2004年稲垣金型製作所に入社、18年…

【金型の底力】エフアンドエム 5軸機導入をコンサル

企業間連携でフィールド広げる 自動車骨格部品などのアルミ押出金型を手掛けるエフアンドエムは今年1月、5軸加工機の導入コンサルティングサービスを始めた。長年運用してきた経験やノウハウを活かし、金型や部品メーカーのニーズにマ…

トピックス

関連サイト