金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

25

新聞購読のお申込み

元本田技研工業 田岡秀樹氏に聞く【特集:自動車金型の未来】

電動化に3つの方向性

電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小企業が持つコア技術が重要になる」と話す同氏に、自動車業界の変化や方向性などを聞いた。

田岡秀樹(たおか・ひでき)氏
1990年ホンダエンジニアリング(現本田技研工業)入社、2005年車体塑性研究科開発部長、10年執行役員、13年本田技研工業四輪事業本部設備金型企画推進室室長。現在は狭山金型製作所、エリコンジャパンなどのアドバイザーを務める。徳島県生まれ、66歳。

電動化の流れをどうみるか。

22年の自動車販売台数は8160万台で、電気自動車(EV)は520万台と約6%。ある調査では、30年には全体で1・19億台になると言われており、EVは3470万台と予想されている。

この数字は実現するか。

不確定要素が多く、30年に現状の500万台を7倍にするのは正直難しいと思う。電動化は進むが、全ての自動車メーカーが同じ動きをするのでなく、3つの方向に分かれる仮説を立てた。

3つとは。

BMWやテスラなどの「スーパープレミアムブランド」、トヨタに代表される「グローバルプレーヤー」、スズキなどの「グローバルサウスプレーヤー」の3つだ。30年に向け、プレミアムプレーヤーからグローバルプレーヤーの順に電動化は進む。一方、南半球を市場とするサウスグローバルメーカーは独自の商品戦略を展開していくとみる。

なぜこの順で電動化は進むのか。

投資の観点から見て明らか。電池、工場、EVプラットフォームの開発などを考えると、自動車業界全体で50~70兆円の投資が必要になると試算した。この投資に耐えられるのは内部留保が大きいか、販売価格が高く、高収益メーカーしかない。

2030年までの世界の自動車販売予測

ギガで変わる生産システム

ギガキャストも破壊的なイノベーションの一つで注目を集めている。

一体化するという考え自体は新しい話ではない。BMWが13年に発売した電動車「ⅰ3」では、客室部と駆動部に分割したモジュール構造を採用するなど一体化の考えが含まれている。今のギガキャストはこの流れに沿っていると思う。

一体化する狙いは。

車づくりのシンプル化と軽量化が目的。従来の車づくりでは、300~400の部品を溶接で組み立て、4000~4500の溶接打点がある。ギガでシンプルな構造になると、溶接を大きく減らせる可能性がある。また、アルミによる軽量化はバッテリーで重くなる電動車では不可欠だ。

ギガでも色々なアプローチがある。

トヨタが発表したリアとセンタとフロントの3分割が興味深い。車一体で鋳造するより3分割のほうが組み立ての作業性が良く、品質も安定する。自動車メーカーにとって、約240工程ある組み立てラインの簡素化は大きな課題。3分割でもラインも大幅に減らせるし、コスト削減効果も大きい。

また、ギガに加え、電動車が自走化したり、デジタルを活用したりしてコストや納期を半減させる「BEVハーフ構想」は生産システムを大きく変える可能性がある。

一気に変わるか。

トヨタは30年に350万台の電動車のうち170万台をBEVハーフで作るとしているが、30年までは先に言った3つの方向で段階的に進むので、一気には変わらない。

その前にもっとできることはある。例えば、複雑な構造部位やインナーパネルの一体成形、差圧外販樹脂パネル、異材接合など、中小企業が持つコア技術をオープンイノベーションで集結させることが重要だ。

金型新聞 2024年1月10日

関連記事

【この人に聞く】テクノア社長・山﨑耕治氏「システムにおける中小企業の専門医として導入検討時の不安を取り除く」

 一品一様の世界である金型産業は生産や技術面で人に頼ることが多く、デジタル化が喫緊の課題。そこで生産管理システムで生産性向上や経営のサポートに取り組んでいるのがテクノア(岐阜県岐阜市)だ。金型など中小企業向けで多品種少量…

マイクロヴェルト 技能問わずどこでも使える測定機【金型応援隊】

マイクロヴェルトは4月にもレーザー式の回転工具外径測定機「マイクロヴェルトナノ9」を発売する。設置環境や技術者のスキルを問わず、極めて短い時間で高精度に測定できる。 工具を独自のVブロックにセット。ボタンを押すと工具が回…

平岡工業 精密部品加工・調達代行【特集:金型メーカーのコト売り戦略】

調達の効率化サポート 自動車のウェザーストリップのゴム金型や切断折曲機などを手掛ける平岡工業のもう一つの事業が、精密部品加工・調達代行サービスだ。金型や切断折曲機で培った技術や協力企業とのネットワークを活かし様々なニーズ…

直彫加工のニーズに応え、横型の微細加工機を開発 塚田良彦氏(東洋機械製作所 取締役Th事業部長)【この人に聞く】

長年、工作機械や放電加工機メーカーのOEMやODMを手掛けてきた東洋機械製作所。鋳造から機械設計、製作、塗装、組立までを手掛ける能力の高さから多く機械メーカーの製品の設計や製造を請け負ってきた。そんな同社が35年ぶりに自…

守りから攻めへ<br>ー本紙金型メーカーアンケートー

守りから攻めへ
ー本紙金型メーカーアンケートー

生産性向上や技術開発 守りから攻めの設備投資に転じる金型メーカーが増えている。日本工作機械工業会によると、金型メーカー向けの受注額の4―9月期累計は前年度比で4割超増加した。これまでの買い控えの反動や、補助金や減税などの…

トピックス

関連サイト