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元本田技研工業 田岡秀樹氏に聞く【特集:自動車金型の未来】

電動化に3つの方向性

電動化やギガキャストで変わる自動車づくり。元本田技研工業で型技術協会の会長も務めた田岡秀樹氏は「自動車業界はゲームチェンジの局面を迎えており、破壊的なイノベーションが起きている」とみる。一方で「中小企業が持つコア技術が重要になる」と話す同氏に、自動車業界の変化や方向性などを聞いた。

田岡秀樹(たおか・ひでき)氏
1990年ホンダエンジニアリング(現本田技研工業)入社、2005年車体塑性研究科開発部長、10年執行役員、13年本田技研工業四輪事業本部設備金型企画推進室室長。現在は狭山金型製作所、エリコンジャパンなどのアドバイザーを務める。徳島県生まれ、66歳。

電動化の流れをどうみるか。

22年の自動車販売台数は8160万台で、電気自動車(EV)は520万台と約6%。ある調査では、30年には全体で1・19億台になると言われており、EVは3470万台と予想されている。

この数字は実現するか。

不確定要素が多く、30年に現状の500万台を7倍にするのは正直難しいと思う。電動化は進むが、全ての自動車メーカーが同じ動きをするのでなく、3つの方向に分かれる仮説を立てた。

3つとは。

BMWやテスラなどの「スーパープレミアムブランド」、トヨタに代表される「グローバルプレーヤー」、スズキなどの「グローバルサウスプレーヤー」の3つだ。30年に向け、プレミアムプレーヤーからグローバルプレーヤーの順に電動化は進む。一方、南半球を市場とするサウスグローバルメーカーは独自の商品戦略を展開していくとみる。

なぜこの順で電動化は進むのか。

投資の観点から見て明らか。電池、工場、EVプラットフォームの開発などを考えると、自動車業界全体で50~70兆円の投資が必要になると試算した。この投資に耐えられるのは内部留保が大きいか、販売価格が高く、高収益メーカーしかない。

2030年までの世界の自動車販売予測

ギガで変わる生産システム

ギガキャストも破壊的なイノベーションの一つで注目を集めている。

一体化するという考え自体は新しい話ではない。BMWが13年に発売した電動車「ⅰ3」では、客室部と駆動部に分割したモジュール構造を採用するなど一体化の考えが含まれている。今のギガキャストはこの流れに沿っていると思う。

一体化する狙いは。

車づくりのシンプル化と軽量化が目的。従来の車づくりでは、300~400の部品を溶接で組み立て、4000~4500の溶接打点がある。ギガでシンプルな構造になると、溶接を大きく減らせる可能性がある。また、アルミによる軽量化はバッテリーで重くなる電動車では不可欠だ。

ギガでも色々なアプローチがある。

トヨタが発表したリアとセンタとフロントの3分割が興味深い。車一体で鋳造するより3分割のほうが組み立ての作業性が良く、品質も安定する。自動車メーカーにとって、約240工程ある組み立てラインの簡素化は大きな課題。3分割でもラインも大幅に減らせるし、コスト削減効果も大きい。

また、ギガに加え、電動車が自走化したり、デジタルを活用したりしてコストや納期を半減させる「BEVハーフ構想」は生産システムを大きく変える可能性がある。

一気に変わるか。

トヨタは30年に350万台の電動車のうち170万台をBEVハーフで作るとしているが、30年までは先に言った3つの方向で段階的に進むので、一気には変わらない。

その前にもっとできることはある。例えば、複雑な構造部位やインナーパネルの一体成形、差圧外販樹脂パネル、異材接合など、中小企業が持つコア技術をオープンイノベーションで集結させることが重要だ。

金型新聞 2024年1月10日

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