岐阜大学が2018年に3カ年の研究開発である「スマート金型開発拠点事業」を始めた。労働人口減少時代を想定し、従来にはない高効率な生産システムの確立を目指し、金型を使った量産システムの不良率ゼロを目標に掲げる。同事業は文…
型種や工法の壁無くし、デジタルを活用 【変わるトヨタの型づくり】
モビリティカンパニー目指し、金型づくりを大変革
クルマを造る会社から、多様な移動手段を提供する「モビリティカンパニー」に変化するトヨタ自動車。モノづくりでも変革を進めている。2020年に試作や量産など内製部門を集約した「モノづくり開発センター」を設立。車両系と駆動系の金型を手掛ける2つの部も同センター内に集約した。型種や工法別の垣根をなくし、新たなモビリティ開発のために、新たなモノづくりが必要だからだ。デジタル技術を駆使しながら、大きく変わるトヨタの型づくりを取材した。
モノづくり開発センター
自動車開発のスピードアップ・新たなモビリティの開発目指し、2020年に発足
モビリティツーリング部
- 所在地:元町工場、貞宝工場
- 従業員数:695人
- 製造する金型:ボデーやバンパーなど大型の樹脂金型やプレス金型
モノづくりエンジニアリング部
- 所在地:貞宝工場、本社、元町工場
- 従業員数:1589人
- 製造する金型:エンジンや駆動部系の金型や精密部品加工
「モビリティカンパニーになる」—。豊田章男社長が2020年にそう宣言し、単にクルマを造る自動車会社から、あらゆる移動手段を提供する会社にモデルチェンジを進めている。最近では「新たなモビリティを通じて幸せを量産する」(豊田社長)ため、カバーする領域は自動車に留まらず、街づくりにまで及ぶ。
その変化は加速し続けている。昨年末には30年までに電動車30車種を投入すると発表。水素エンジンの車両開発など次世代自動車には全方位で挑む。さらに、新たなモビリティやデータ活用を模索する実験都市「ウーブン・シティ」を静岡県裾野市に建設中だ。
こうした変化や事業領域の拡大は、モノづくりひいては金型づくりにも変化をもたらしている。では、トヨタの型づくりはどう変化しているのか。
その象徴的な組織の一つが20年に発足したモノづくり開発センターだ。「社内の試作・設備・金型などの内製部門を集約したセンター」(同センターのモビリティツーリング部大澤晋一郎部長)。狙いは金型も含め、車の開発スピードを上げることだが、「新たなモビリティを生み出すには、新たなモノづくりが必要」(同センターのモノづくりエンジニアリング部堀田政嗣部長)だからだ。
金型づくりも同じ流れにある。元々同社の金型部門は工法や型種別に分かれていた。ボデーやバンパーなど大型の樹脂やプレス金型はスタンピングツール部、エンジンや駆動系はダイエンジニアリング部が担っていた。
その後、スタンピングツール部は板金プレスや樹脂金型など大型の外装部を中心とした「モビリティツーリング部」となった。ダイエンジニアリング部は、これまでの金型領域に加え、試作・設備を統合し、1μmクラスの精密加工や新たなモビリティに関する部品を手掛ける「モノづくりエンジニアリング部」と改称。両部ともモノづくり開発センター内にある。
両部は今も分かれているものの、大澤部長は「境目の意識はない」。堀田部長も「モビリティの変化により車両系、パワートレーン系ではくくれないものが増えている」とし、金型を中心にモノづくり力を結集し、新たなモビリティ開発を進めている。
そのツールの一つが、デジタルのフル活用だ。CAEを活かした後戻りのない金型づくり、匠の技の見える化、新たなモビリティ開発—。以降では、モビリティツーリング部、モノづくりエンジニアリング部の両部で取り組む、新たなモノづくりや型づくりをみていく。
PART1:デジタル活用(7月4日公開)
PART2:匠の技をデジタルに帰す(7月4日公開)
PART3:新たなクルマづくり(7月6日公開)
PART4:両部長インタビュー(7月6日公開)
金型新聞 2022年6月9日
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