金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

23

新聞購読のお申込み

レーザパンチングで金属箔に連続穴あけ ワイヤード【金型テクノラボ】

自動車の電動化などによって、金属箔、樹脂フィルムへの穴あけ加工のニーズが増している。今後、量産化を実現していくためには、より高速に加工できる技術が求められている。レーザ開発ベンチャー企業のワイヤードは、金型レスによる金属箔や樹脂フィルムへの連続穴あけ加工を実現するレーザパンチング技術を開発した。同技術の特長を紹介する。

世界最高速のレーザ穴あけ加工

ワイヤードはレーザ開発ベンチャー企業。特に複数のドラム・ロールを使用して製品を製造・搬送するRoll to Roll(ロール・ツー・ロール)によるフィルムや金属箔などへの高速パターンニング・穴あけ・加飾などのレーザ開発に特化してきた。今までは高速で搬送されるフィルムや箔に穴加工、パターンニング加工を付与する技術は、金型や刃物に比較してレーザの加工速度は追随しないと思われてきた。

しかし、ワイヤードでは、一般的なレーザのスポット径であるφ10μm~φ20μmで直接穿孔するスキャナ機構「GHS(グランド・スキャン・システム)を開発。毎秒20万穴という世界最高速度を実現した。

一方で、スポット径以上の穴加工(φ500μm以上)の場合、レーザ光を円形に走査させて1穴ずつの加工となるため、プレスパンチ工法などに比較して生産性で劣るため、高速化が課題となっていた。

ロール・ツー・ロールでの高速多穴加工

金属箔、樹脂フィルムへの穴あけが可能

近年の塑性加工技術では、従来不可能と思われていた微細穴の加工が可能になり、量産性のある高精度微細穴加工技術として注目されている。加圧方法の工夫や加工油の選択もさることながら、例えばレーザで表面にナノ周期構造を付与することにより、摩擦抵抗の軽減を図り、高精度金型加工技術とトライボロジーが融合した高機能金型も出現している。

一方で、厚み20μm程度の金属箔、樹脂フィルムなどへのロール・ツー・ロールでの高速多穴加工に対しては課題も多く、より精密でメンテナンスフリーの金型が求められるだけでなく、打ち抜き時の基材への加圧力による変形が生じる恐れもある。このような課題を解決するため。レーザでの直接パンチング技術を開発するに至った。

厚み20μm程度の金属箔にφ500μ〜φ1mmの穴を加工

生産性が大幅に向上

開発したレーザパンチング技術は厚み数μmから20μm程度の金属フィルムおよび樹脂フィルムに対して、φ500μ~φ1mmの穴を高速で加工できる。特筆すべきは搬送されるフィルムに対して300mmの距離を同時一列加工でき、生産性が大幅に向上した点。

また、実績値では穴の隔壁間が100μmの僅少の寸法であっても、同時加工が可能。加工後の基材の強度が許せば100μm以下の隔壁間隔も実現可能である。プレス金型で考えると、例えば、φ1mmのポンチが、100μmの間隔を空けて、272本一列に並んでいることになる。

レーザパンチング技術はわずかな隔壁間寸法でも多数の穴の同時打ち抜き加工が可能だが、その技術はワイヤードの高度なレーザ光学設計技術と高精度の搬送技術によって実現したもの。今後、二次電池、有機合成・分解などでの活用が期待できる。すでに特許申請しており、装置販売に加え、受託加工も検討している。

重要性増すレーザ加工技術

金属加工業界におけるレーザは切断や溶接に多用されている加工法であり、なじみの深い加工法。レーザの加工原理は材料の特性に合わせた波長やパルス幅を選択することで、材料内部の分子構造が破壊、溶融し、加工が開始される。最近では超短パルスレーザの金型への加工技術も発達し、現場への採用は多くなるものと想像する。最終的には金型技術を採用するにしても、例えば金型が立ち上がるまでの補完技術としてレーザを活用する方法も考えられる。優れた加工技術者の技術承継やDXの普及を考えるとき、レーザ加工技術は必要な技術となるだろう。

ワイヤード

  • 執筆者:佐藤  龍氏
  • 住所:新潟県三条市北新保2–4–15
  • 電話番号:0256・47・1255

記者の目

自動車の電動化などによって、これまでとは異なる加工ニーズが増している。従来の金型技術だけでは対応できない案件も少なくない。今後、さまざまな市場ニーズに対応するためには、金型メーカーもこうしたレーザ加工などといった新たな技術をこれまで以上に取り込んでいく必要があるだろう(平)。

金型新聞 2023年6月10日

関連記事

ダイジェット工業 ストライクドリルに面取り刃付きを追加

ダイジェット工業(大阪市平野区、06-6791-6781)は、超硬コーティングソリッドドリル「ストライクドリル」に、穴あけと面取り加工が一度にできる面取り刃付きタイプを追加し、発売した。 穴あけと面取り加工が一度にできる…

【Breakthrough!】平面研削加工

平面研削加工はこれまで、加工条件の設定や砥石の管理に高い技能が必要なため熟練技能者の存在が不可欠だった。しかし近年、自動化技術をはじめとする様々な機能を搭載する平面研削盤の登場で、誰でも簡単に加工できるようになりつつある…

C&Gシステムズ 「キャムツール」の新版を発売

加工工程を標準化 C&Gシステムズはこのほど、5軸マシニングセンタ対応のCAD/CAM「キャムツール」の新版「V18・1」をリリースした。加工工程の標準化をサポートする機能を追加するなど、作業者の工数削減に貢献す…

松野金型製作所 顧客レビューサイト「金型ミシュラン」を開始

顧客から正当な評価を プラスチック金型メーカーの松野金型製作所(佐賀県基山町、0942・81・7000)は、ユーザーから自社の金型を評価してもらうビューサイト「松野金型ミシュラン」を開始した。評価を社内の改善に活かすほか…

牧野フライス製作所 中大型金型向け立形5軸

形状部と側面部を1台で 牧野フライス製作所はこのほど、自動車部品などの中大型金型向けの5軸立形マシニングセンタ「D2」を発売した。独自の構造を採用し、金型の形状部と横形MCで行っていた冷却穴など側面部の加工が1台ででき、…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト