脱炭素社会に向けた取り組みがものづくりで加速し、金型業界でもその動きが広がりつつある。先手を打つ金型メーカーの対応には大きくは2つの方向性がある。一つは、太陽光パネルの設置や設備の省エネ化などによる自社の生産活動でCO2…
成形品の一体化や多数個取り【特集:進む設備の大型化】
既設機よりも大型の設備を導入する金型メーカーが増えている。成形品の一体化や成形工数の増加、多数個取りなどによって、金型が大型化し、既設機だけでは対応が難しくなっていることなどが背景にはあるようだ。各社、大型の加工機やプレス、成形機などを導入し、新規受注獲得に向けて取り組みを進めている。機械メーカーも大型機の生産能力を増強し、対応している。補助金制度による後押しもあり、今後さらに大型設備への投資が進みそうだ。

黒田製作所(岐阜県岐南町)は昨年、本社南側に新工場を建設し、型締力3000tの射出成形機を導入。これまでの最大だった1600tを超える大型金型の社内確認・トライを可能にした。年初には大型放電加工機も増設した。EV化に伴う樹脂部品の増加や部品の大型化などに対応し、新たな受注獲得を目指している。
こうした部品の大型化対応で代表的なのが、大型鋳造技術「ギガキャスト」。一部の金型メーカーが対応に向けて動きを進めている。共立精機(三重県松阪市)の中国子会社、共立精機(大連)もその1社。同社では最大120tのクレーンを設置した他、門型MCや2ヘッドの大型彫放電加工機といった大型機を導入した。すでに量産金型の製作実績も持っているという。
一方で、部品の複雑化による成形工数の増加や、多数個(多列)取りによって大型化する金型に対応する企業も少なくない。黒田精工(川崎市幸区)は昨年12月、モータコア金型などを手掛ける長野工場(長野県池田町)を拡張し、300t大型高速プレスを導入した。モータコア形状の複雑化による金型の工数増加、金型の多列化などによって大型化が進むモータコア金型の需要に対応する。
こうした金型メーカーによる大型設備導入の動きは金型の大型化に加え、補助金額や補助率の大きい補助金によって、大型投資が行いやすくなっていることも背景にある。特に「事業再構築補助金」は1社あたりの補助金額が最大1億円、補助率は3分の2と規模が大きく、多くの企業が活用している。黒田製作所や黒田精工も同補助金制度を活用して設備を導入した。
大型機の需要拡大を受け、機械メーカーも対応を進める。牧野フライス製作所(東京都目黒区)は昨年末、山梨県富士吉田市に大型機の組立工場を新設し、生産能力を現状から2倍に引き上げる計画を発表した。同社執行役員の高山幸久氏は大型機の強化に取り組む理由について「軽量化や部品点数の削減を目的に部品の一体化が進んでいる。今後需要が拡大する可能性が高い」と語る。
労働人口減少による人手不足や、環境対応など、金型産業は多くの課題を抱える。また、顧客からの要求はますます高度化が進み、今後対応していくには既存の技術や設備だけでは難しくなっていく。大型設備の導入はこうした未来を見据えた対策の一つ。来年度も設備投資を後押しする補助金制度の実施が予定されており、大型投資に踏み切る金型メーカーが増える可能性は高い。
金型新聞 2024年3月10日
関連記事
材料費や電気代の高騰が続き値上げが不可避の中、金型メーカーのユーザーへの価格転嫁は進んでいるのか。本紙はその実態を調べるため、金型メーカーにアンケートを実施した。結果から、値上げが受け入れられるようになりつつあるものの道…
部品開発や共同研究 2014年に共和工業が三井化学グループに入ってから9年。グループ内で共同開発した部品が自動車メーカーに採用されたり、共同研究を進めたり、協業による相乗効果を高めている。近年は住宅設備部品開発でも手を組…
自社商品の生産性アップ 大阪銘板は自動車などのプラスチック内外装製品などを中心に金型から成形、二次加工までを手掛ける。グループ全体で4つの生産拠点を持ち、型締め力100~2000tクラスのプラスチック製品を生産している。…
金型の品質高めトライ減らす 明星金属工業が手掛けるのは、ボンネットやドアなど自動車ボディー部品のプレス金型。トライ&エラーを重ねて品質を高めていくため完成までの時間が予測しにくい。受注は新車開発の時期に集中するな…