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アルム 多品種少量部品を完全自動切削加工【金型テクノラボ】

「TTMC‐タイプF」は、金属加工未経験者でも多品種少量の高精度加工ができる完全自動切削加工機だ。ワークの3Dデータを入力し素材を手でセットするだけで、製造AIが素材や工具の段取り、加工指令、工具交換など一連のプロセスを自動で行う。ものづくりの人材不足を解消するために開発したというその技術のコンセプトや特長を解説する。

世界で広がる人材不足

金属・樹脂部品やその他切削加工の製造現場における人材不足は深刻化している。ドイツ、中国、そして日本でもその波は年々大きくなっている。人材不足の主な原因は「高齢化社会による技能継承の問題」とされてきた。しかし本当だろうか。

私は総務省の事業で東南アジア3カ国を実際に訪問して製造業の実態を調べることにした。すると、部品加工企業10社全てが「人材不足で大変な状況だ」と回答した。

人材不足の原因については「IT、観光業に若手人材が流れている。技術習得に長い時間と労力が必要な製造業よりも簡単に稼げるからだ」との回答であった。現地の大学生は製造業に就きたいと思わないと回答し、「AIやIT関連に就きたい」との回答が100%であった。

人材不足を解決するためTTMC‐タイプFを研究開発

世界同時多発的に発生している人材不足は政府の制度や教育で解決できないレベルに到達している。アルムは「製造AIと完全自動化」のアプローチで問題解決するべく完全自動切削加工機「TTMC‐タイプF」を研究開発することとなった。

TTMC‐タイプF BPモデル 
立型3軸切削加工
ベースプレートや真空チャンバなどの
中サイズモデル

3DCADデータの入力と素材を所定の位置に置くだけ

TTMC‐タイプFの開発コンセプトは「加工未経験者でも簡単操作で多品種少量生産の高精度加工を実現する」ことである。人間の作業は3DCADデータをTTMCに入力することと、加工対象の素材をフリーハンドで所定の位置に置くだけである。

加工に必要な工程設計・NCプログラム作成は製造AI「ARUMCODE」が、素材・工具の段取りはロボットが完全自動で行なう。工具の摩耗は高精度カメラ(アルムが開発)が測定し、その測定データをARUMCODEの工具データベースにフィードバックする。次回の加工からは工具の摩耗状況を加味して(補正して)工程設計・NCプログラミングがなされるわけだ。

最適なモーション・プログラムの組み合わせを思考

TTMCの制御はARUMCODEと連動したPCがTTMCの9のユニットと3000を超える機器を統括制御している。TTMCの外観のみでは単純にロボットや機器をつなぎ合わせただけのようにも見えるが、完全自動ともなるとその制御は非常に複雑である。

例えばTTMC内では5つのレイヤにデータベースが分けられており、10000のモーション・プログラムが組み込まれている。人間が入力する3DCADデータの工程設計に基づいて、最適なモーション・プログラムの組み合わせをコンピューターが思考する。

TTMCでカバーできる切削部品

これらの複数のデータベースが緻密に制御されながら、工具や素材の段取りから芯出し、切削加工指令、工具交換、工具測定とフィードバック、切削条件の補正、ワーク測定と追加工指令生成、そして完成品の払い出しまでを一貫して実施する。

もちろん、段取り不良、異常停止などのロジックも150を超えて、その復帰動作までプログラムされている。多品種少量生産かつ完全自動はメカニックよりも、その制御ソフトウェアに深い技術と、膨大なデータやプログラムを扱うノウハウが張り巡らされている。この点がアルムの自動化と他社の自動化に一線を画するのである。

大型で複雑な形状の加工も

TTMCの心臓部にあたるARUMCODEの性能の成長も著しい。GPU(NVIDIA製CUDA)での演算にすることで通常の100倍以上の速度で形状解析を完了する。

つまり、自動車、航空機、ロケットのようなサイズが大きく、複雑な形状でも短時間で工程設計とNCプログラムを完了できる。ARUMCODEの性能が成長することでTTMCの加工領域は日々広がっているわけだ。

我々アルムの「製造AIと完全自動化によって世界の製造現場を変える」ための長くハードな闘いは始まったばかりだ。日本発のグローバル・ソリューションを日本の製造企業と共に育てていきたい。これが筆者の願いである。

アルム

  • 執筆者:代表取締役CEO 平山京幸氏
  • 住所:石川県金沢市戸水1-61
  • 電話番号:076・225・7743

記者の目

金型業界では人手不足が深刻になっている。一方、生産財の進化で加工や段取りの仕事の付加価値は下がっている。TTMC‐タイプFは金型部品の加工にも活用できる。金型でこうした自動化技術を活かせば人手不足を解消し、人は新たな技術開発など付加価値の高い仕事に専念できるのではないか(中)。

金型新聞 2024年8月10日

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