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人に紐づく作業をデータ化 岡田電機工業が自社ソフト導入し、生産性を30%向上

ステアリングガイドやホイール、エンブレムなどの自動車部品をはじめ、建築関連やオフィス家具といった多様なプラスチック製品を製造する岡田電機工業(神奈川県横須賀市、岡田英城社長)。同社は50~280tの小型、中型クラスの製品を得意とし、金型から成形、量産、組み立てまで一貫体制で仕事を引き受ける。自社開発ソフトを導入し、現場業務の生産性を向上したことなどが評価され、令和7年度「かながわ中小企業モデル工場」に選ばれた。

金型から成形、量産、組み立てまでの一貫体制で仕事を引き受ける
高い生産性が強みで、多様なプラスチック製品を製造する

日報作成の手間を大幅削減、現場の作業分析も可能に

同社が重視するテーマは「生産性向上」。岡田社長は「無駄な作業を極力減らし、生産性を向上しなければ、利益は上がらない」と話す。生産性向上のため、近年注力するのが自社開発ソフト「軽減くん」を活用した現場業務の効率化だ。軽減くんは製造現場で働く従業員の活動をデータ化し、自動で日報作成まで行う業務改善システム。使い方も簡単で、必要なものはQRコードとスマートフォン。従業員が作業現場に貼ってあるQRコードをスマートフォンで読み取り、マスター登録された業務内容から自分の作業を選択するだけで記録できる。記録されたデータから必要なデータが抽出され、自動で日報作成まで行われるため、現場の従業員の手間を大幅に削減できる。

作業現場に貼ってあるQRコードを読み取り、作業を選択するだけで日報を作成

同社は事業再構築補助金を利用し、2022年に軽減くんを導入した。「人を介する作業で無駄が多かった。従業員には生産活動へ注力してもらい、さらなる生産性向上を実現したいと考え、導入を決めた」(岡田社長)。軽減くんの導入を進めた岡田祐作生産本部長は「以前は日報を紙で書いたり、Excel入力したりしていた。手間が多いことに加え、データを集計し、分析に活かせなかった。軽減くんの導入により、自動でデータ集計ができ、分析しやすい形で整形されるため、現場の作業分析が可能になった」と話す。軽減くんはクラウド管理のため、リアルタイムでデータ確認、集計、分析が可能。誰が何をやっているかが一目瞭然となり、タクトタイムや稼働率などの詳細なデータも記録できる。「取得したデータから管理者が生産計画の問題点を洗い出し、改善アクションをすぐに起こせるようになったのは大きな成果。軽減くんを活用することで、人が介する作業に関して、生産性が約30%向上した」(岡田社長)。

同社は23年から軽減くんの外販も開始した。外販を進めるにあたり、新会社「FACTORIZE」を設立。製造業を中心に、現在約30社へサービスを提供している。岡田社長は「現場の効率化において、同様の悩みを抱えている企業が自社以外でもあると考え、外販を始めた」と話す。また、「実際に自社で運用しているソフトウェアのため、説得力を持って提案できる。今後、整形した集計データを自動でメール配信できる機能などを追加し、さらなる改良を進める予定だ」と語った。

新会社「FACTORIZE」で軽減くんの外販を行う

生産性向上のための取り組みは「軽減くん」の活用だけではない。定位置(置く場所を決める)、定品(置くものを決める)、定量(置く量を決める)の「3定」の徹底も進めている。「作業時に工具や部品を探すなどの無駄な作業時間を減らし、生産活動に集中させるのが狙い。部品や材料などの置く位置が常に決まっていれば、余分な時間がなくなる」(岡田社長)。当初は中々定着しなかったが、岡田社長自らが「3定」を徹底することで、従業員の意識も少しずつ変わってきたという。「配置場所の番地を決め、置く場所を固定した。また、使用するもの以外は置かないなどのルールを徹底し、徐々に定着してきた」(岡田社長)。

今後について岡田社長は「生産性の高いものづくりは継続して、しっかり取り組む。これに加えて、顧客の開拓も重要だ」と話す。同社は「軽減くん」の外販を始めたことをきっかけに、他業種の顧客から仕事を受注するケースが出てきた。また、フェイスシールドや廃プラスチック材を再利用したテーブルホーキなどのオリジナル製品の販売にも取り組んでいる。「このような新しい取り組みにより、営業の提案領域は拡大している。生産性向上と顧客開拓を進め、さらなる成長を目指したい」(岡田社長)。

定位置、定品、定量の「3定」を徹底

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