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―スペシャリスト―ミルテック
精密加工の何でも屋
五感使うものづくり
精密打抜き用プレス金型、非球面レンズ金型、二次電池用金型及び部品、三次元形状部品、精密治具―。超精密金型や部品加工のミルテックがこれまで手掛けてきた品目の一部だ。『金と銀以外何でも加工する』と話す渡邉誠社長の言葉通り、まさに精密加工の「何でも屋」。ただ、特長的なのは多様な仕事を引き受けながら、全ての加工で高い品質を維持していること。実際に「面倒なモノしか来ない」(渡邉社長)と言うように、ユーザーからは「駆け込み寺」の様に位置付けられている。
面白味と挑戦に矜恃 失敗は成功への近道
同社の創業は製造業としては遅く、バブル崩壊後の1992年。「よくそんな時期に創業したと思う」と渡邉社長が自嘲するように世相は厳しい時。実際に「水道もお金も設備もない、全てがないモノ尽くしだった」と振り返る。
ただそんな時期でも、渡邉社長の頭にあったのは、「機械加工技術で世の中に貢献し、機械加工で飯を食べて行きたい」と言うモノづくりへの純粋な思いだ。だから「エポックがあったわけではない。近所のユーザーからの請負仕事から始め、これも出来ないか、あれも出来ないかと応えているうちに次々と色んな加工を手掛け、同時に技術やノウハウの蓄積も進み現在に至っている」。
そして、当然ながら顧客は高品質な加工品を望む。それに応えるように「品質最優先を掲げ、仕事の間口を広げていった」。実際に、納入後に行った顧客満足度調査でも「品質最優先が上位を占めている」とそのブランドイメージは浸透している。これだけ多様な仕事を受注しているが、共通していることがあるとすれば「真円度、平行度、平面度など、誰がいつ測定しても同じ精度が出るようなごまかしのきかない仕事を全社的に徹底させた」ことだ。
例えば最近手掛けた超硬部品の鏡面加工の要求面粗度は0・2S以下。またプレート加工は、180㎜□(角)のサイズで常に2μm以下の平行度に抑えなければならない。「どの加工も最初は苦労したが、多くの仕事を手掛けたことで技術・ノウハウの蓄積もでき、現在では、高品質は当たり前のようになっており、顧客はそれらを評価してくれていると思う」。
そして、もう一つ渡邉社長が重視するのは「面白味と挑戦」だ。ある自動車部品の金型を手掛けた時のこと。「3ヶ月ぐらい毎日徹夜のような状況。不良も山ほど作ったが『どうすれば顧客が満足する製品を実現できるか』と考え続け、難問に挑戦し、解決させるプロセスが楽しかった。結果として解決させた」。「難易度が高く、精密度が要求されるモノを果敢に取り組み、そして解決する挑戦力を誇りにしている」。
この「こだわりと挑戦」の姿勢は失敗に対する考え方にも現れている。日頃から渡邉社長は「失敗や不良は罪ではない。成功への近道と思え」と言っているという。失敗したことは結局ノウハウともなるからだ。先のプレート加工でも本当のノウハウを得るまで、5、6年間かかったそうだ。渡邉社長自身も何度も挫折を重ね、「挫折の回数が加工技術の蓄積となり顧客の信頼に繋がっていると思う」。
モノ造りの中でも「特に精密加工は高精度の機械だけで成立するものではない。円を加工してもミクロ的にみると決して真円ではなく、線と点の繋がりからできており、そこに人間の五感という媒体が不可欠になる。その機械を稼働させている人間の視、聴、嗅、味、触を研ぎ澄ませた時に真の円が出来上がる」と渡邉社長は職人としての矜持を話す。
職人を重視する同社だからこそ、人の育成は非常に重要であり、企業存続のカギとなるテーマだ。渡邉社長は「従業員はコストか、資産かという議論があるが、間違いなく人は資産。だから育成にお金を使うのは、全て投資」と話す。実際に20人の従業員の内13種の技能検定有資格者が在籍し、資格取得の推進を強力に進めている。
こうした人材育成重視の経営を今後も加速させる。「人の成長に合わせて会社も育って行く。それは町工場でも大企業であっても人を育てて行くことは同じ。待遇や環境を更に見直し、地域に貢献できる夢を持てる企業にしたい」。
会社概要
本 社=〒963―7733
福島県田村郡三春町大字山田字菖蒲作147
電 話=0247・62・8491
代表者=渡邉誠社長
従業員=20人
創 業=1992年
製造品目=超精密金型、精密治具、部品加工、各種組立
主要設備
ジグ研削盤(ハウザーなど)4台、円筒研削盤(スチューダなど)7台、平面研削盤(長島精工など)15台、ジグボイラー(安田工業など)6台、放電加工機(ソディックなど)5台、ワイヤー放電加工機(ソディックなど)6台、その他多数。
金型新聞 平成28年(2016年)9月10日号
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