自動車の電動化などによる金型需要の変化、少子高齢化による人手不足、アディティブ・マニファクチャリング(AM=付加製造)を始めとした新たな製造技術や技術革新―。金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型…
【検証】変わる金型基金 新たな船出5
次世代への投資を
前号では、日本金型工業厚生年金基金の制度移行に伴い、年金を退職金化することで得られるメリットなどを紹介した。では、そうした場合に加入者にはどの程度の負担や効果があるのか。より分かりやすく解説するために、モデルケースをもとにみていく。
【検証】変わる金型基金 新たな船出 解散後、新制度に移行
【検証】変わる金型基金 新たな船出2 3つの大きな課題解決へ
【検証】変わる金型基金 新たな船出3 年金有期化で安定運用
【検証】変わる金型基金 新たな船出4 退職金の一部を年金化
いずれにせよ、まずは退職金規程に年金基金を組み込むことを明記することが前提だ。そのうえで、具体的な数字をみていきたい。例えば22歳で入社し、60歳まで勤務する技術者に対して、仮に1000万円の退職金を出す場合。年金で積み立てられる額はいくらになり、月々の積立はいくらになるのか。
年金額は給与に対して、掛け金率を乗じて算出するため、38年間の平均標準給与を33万4000円と仮定する(入社時20万程度で定年時45万程度)。掛け金率を新制度で最も低い0・90%とすると、月々の平均積立額は3000円程度で、定年時に200万円程度になる。最も高い掛け率の3%にすると、月々1万円強で、積み立ては640万円を超える(表参照)。
つまり、掛け率によって異なるが、退職金の1000万円のうち、200万円から650万円程度を年金資産でカバーできる。しかも月々の掛け金額は前号でも紹介したが、税控除の対象だ。これを10人の事業所で想定すると、企業としての負担は、最安で月々3万円から最高でも10万円強で、退職金の積み立てが可能になる。
業界の先行きが見通しづらいうえ、繁閑の差が大きい金型業界で、退職金給付を多く積み立てるのは難しい側面もある。しかし、みてきたように、年金基金を使えば、比較的軽い負担で、ある程度の退職金を積み増すことも可能だ。経営者だけでなく、従業員にとっても安心材料の一つと言える。実際に、制度が充実している看護師の業界などでは「年金基金の有無が採用の決め手となることもある」(荒木健太郎常務理事)という。
2016年現在、日本全国の中小企業で、厚生年金基金の恩恵を受けられるのは237万人しかいない。先代らが作り上げた金型基金を、新たな形に作り替え、活用することは、これからの未来の世代のためでもある。
金型新聞 平成30年(2018年)5月14日号
関連記事
次の成長市場はどこだ インド、ブラジル、メキシコ、トルコに期待 本紙 山本さんは今後金型需要が伸びる市場はどこだとみていますか。 山本 松野さんが指摘されたようにインドは間違いなく拡大します。松野さんの提携先がある地域は…
特殊な型内積層技術を開発 電動車を始め次世代車で採用が増えるモータ。脱炭素の観点からも、その効率化は欠かせない。その一つとして注目を集めるのが、磁気特性の高いアモルファス箔を採用したモータコア。金型からプレスまで一貫して…
PART1:デジタル活用 精密金型の生産性を向上 トヨタ自動車が型造りで注力する取り組みの一つがデジタル活用だ。精密部品向けの金型を手掛けるモノづくりエンジニアリング部では、デジタルデータを活用することによって、金型だけ…
部品の一体化や多数個取りなどに加え、ギガキャストが登場したことで、金型の大型化は進んでいる言われる。しかし、大型化の定義が明確でなく、客観的に示すデータもない。ただ、型重量の増加=大型化とは言い切れないが、一型当りの重量…



