金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

26

新聞購読のお申込み

メンテナンスに革命を 清水一蔵氏(福井精機工業社長)【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められている。既存の事業を強化するのか、派生技術を伸ばすのか、あるいは新事業に手を伸ばすのか。さまざまな戦略が考えられる。金型メーカー経営者にインタビューし、次の10年を勝ち残るための戦略について聞いた。

成形へと拡大する

ベアリングリテーナーや自動車部品用プラスチック金型を製作する福井精機工業は表面から少量の潤滑油が染み出す給油部品「キッブス」を開発。50%以上が油で構成され、持続的な潤滑性能で機械要素部品などメンテナンスフリーを実現。ロボットや自動化設備など幅広い分野で注目されている。

福井精機工業 清水一蔵社長

顧客からペースト状の潤滑材料を機械部品として成形できないかと相談され、開発に取り組んだ。試行錯誤の結果、成形することができ、さらに技術開発を進めてきた。

「キッブス」は超高分子量PE(UHMWPE)に潤滑油を混合させ、プラスチックに近い成形ができる固形潤滑材。50%は油で構成されており、給油するための部品として使用することができるため、固形油と言ったところだろう。独自で材料を混合するため、工業用から食品用など様々な潤滑油を活用できる。

超高分子量PEは流動性がなく、従来の射出成形では成形できないため、成形するには特殊な材料、潤滑油の知識、配合ノウハウ、金型構造、成形時の温度コントロールなどノウハウが必要になる。この技術を確立したことで、オイル供給を必要とする部品のメンテナンスフリーを実現し、人手不足や自動化に貢献できる。今後は機械要素やロボット部品への活用、狭所、危険な場所の安全対策につながると期待している。

当社のミッションは、新しい『価値』を追求し、すべての人に『笑顔』を提供すること。キッブスは義足や義手など障害者向けの器具や人工関節にも貢献できる。社会の課題をものづくりの技術で解決できれば、多くの人が笑顔になり、我々も嬉しい。それをベースに、すべての人を笑顔にする会社を目指したい。

他の特集記事は以下から

金型新聞 2023年1月10日

関連記事

【特集:2024年 金型加工技術5大ニュース】4.AM

造形ワークの大型化 近年盛り上がりを見せるAM(アディティブマニュファクチュアリング)。ここ数年のJIMTOFやインターモールドでもAMに特化した特設展が併催されるなど、国内外での注目度が高まっており、高精度な積層造形を…

金型メーカーに「働き方改革」は実現できるのか

課題多き働き方改革 働き方改革関連法案の施行から4年。金型業界でも労働時間短縮や生産性の向上など、働き方改革は進んでいるのか。現状を調べるため、本紙ではアンケートを実施した。調査からは、改革には前向きに取り組んでいるもの…

匠の技を自動化し、技能を伝承【特集:自動車メーカーの金型づくり】

自動化と人材育成—。自動車産業に関わらず、あらゆる製造現場において共通の課題となっている。人手不足は深刻化しており、課題解消に自動化、省力化は欠かせない。いかに若手に技能を伝承していくかも喫緊の課題となっている。一方で、…

自動車の電動化想定し、大型で複雑・高精度なプレス技術を開発[プレス加工技術最前線]

自動車の電動化や軽量化ニーズの高まり、短納期化、熟練作業者の減少など、プレス加工を取り巻く環境は大きく変化している。プレス加工メーカーへの要求も高度化しており、これまで以上に技術革新を進め、変化するニーズに対応することが…

【新春特別インタビュー】時代をリードする8人

 「CASE」による自動車業界の大変革は金型メーカーに大きな変化を迫ってきた。そして昨年から続くコロナ禍。リモート環境への対応やデジタルツールの活用など、変化せざるを得ない状況はさらに加速している。こうした混迷の時代に合…

トピックス

関連サイト