金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

日本金型工業会 学術顧問
横田 悦二郎 氏(日本工業大学客員教授)
〜鳥瞰蟻瞰〜

コロナを好機にするには

営業など中間層の変革を
ICTの活用が絶対条件

 コロナで金型業界は難しい状況にありますが、大変だと騒いだり、パラダイムシフトを心配したりしても何も生まれません。むしろ、やり方次第では、ピンチをチャンスに変えることができるのではないかと考えています。それには冷静になって、変わるもの、変わらないものを考える必要があります。

 まず、変わらないものは何でしょうか。コロナでも、金型を「作る」部分は変わりません。新技術が登場し、作り方は変化しますが、本質的に鉄を削って任意の形を「作る」ことは不変です。また、自動車や家電メーカーが製品を作ることも変わらないので、量産の道具として金型を必要とする構造は変わらないでしょう。

 一方、変わるのは何でしょうか。人と人の接触が最も多い、金型づくりでは中間層にあたる営業や受注のあり方だと思います。すでにユーザーが訪問制限をかける中、リモートワークが浸透し、コミュニケーションの方法は変化しています。リモートが便利だと分かれば利用が増える可能性が高い。しかし、対応次第では金型メーカーにとってチャンスになるのではないかと思います。

 まず、リモートワークが広がれば営業のための事務所を持つ必要がなくなる。リモートで対応できることが増えれば、訪問回数が減り、営業コストが減らせます。マンパワーに限りがある金型メーカーは助かるはずです。

 もう一つはユーザーとの関係性です。つながることが常態化すれば、打ち合わせに技術者も加わりやすくなり、顧客との距離は近くなる可能性が高い。技術者同士が直接やり取りしたり、金型図面を見ながら「ああでもない」、「こうして欲しい」とリアルタイムで話をしたりできるかもしれない。伝言ゲームが多い金型づくりでは、技術者同士が会話できるメリットが大きいのは誰もが分かるはずです。

 一方で、気を付けなければならないこともあります。距離や時間の障壁がなくなるので、ユーザーとの物理的な距離は強みではなくなります。簡単につながれるので、生産途中の報告が求められたり、納期が短くなったりするかもしれない。

 いずれにしても、こうした変化に対応するには「ICT技術の活用」が絶対条件になります。ホームページのようなものではなく、リアルタイムで納期や生産プロセスなどの情報を発信したり、常に技術相談に応じたりできる、ウェブ上の営業所のような仕組みを構築することが必要になるかもしれません。

 コロナは金型メーカーに変化を迫りますが、やり方次第でチャンスになりえます。ただ、これまでの延長線上で考えていてはダメです。従来型の金型経営は終焉を迎えたと思ったほうがいい。今までの常識を捨てるのではなく、いったん横に置いて考える必要があると思います。

金型新聞 2020年6月4日

関連記事

5年で売上高30億円
ジェービーエム 小谷 幸次社長に聞く

 Mastercamの世界販売1位を記録するジェービーエムは今年、創業50周年を迎えた。同社は近年、CAD/CAMのほか、ロボットシミュレーション、計測、積層技術など幅広い分野のソフトウェアを拡充し、生産現場の自動化・省…

鈴木工業 デジタル技術を駆使し、スピード追求した金型づくり【金型の底力】

自動車用プレス金型を手掛ける鈴木工業は、スピードを追求した金型づくりを進める。これまでにシミュレーションソフトなどのデジタルツールを導入したほか、金型部品の分散加工などに取り組み、金型製作のスピードを向上させてきた。足元…

【金型応援隊】太陽テクニカ ダメ元でも相談を

一桁ミクロンの加工精度 「マシニングで出せない精度の穴加工は、是非任せてほしい」と語るのは、長年ジグボーラー加工やジグ研削加工に携わってきた、太陽テクニカの大畠正陽社長。同社は、航空・宇宙産業の部品から工作機械の主要精密…

「新規事業に挑戦、やってみなければ分からない」藤井精工社長・藤井福吉氏

会社の未来を考え新規事業に挑戦やってみなければ分からない 金型メーカーに生産計画はありません。受注産業で顧客次第ですから。「来月どうしようか」。これを毎月のように繰り返しています。当社も創業から46年間、同じように事業を…

現場の思いを尊重<br>天青会 野口 賢太郎 会長

現場の思いを尊重
天青会 野口 賢太郎 会長

企業見学会に注力  日本金型工業会東部支部の若手経営者らが集まる天青会の会長に今年5月、就任した。現場至上主義を自身のテーマとして掲げ、「今年は、工場見学会など現場に足を運ぶということをメインに活動していきたい」と意気込…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト