ササヤマが今期スタートした新中期経営計画「SAIMS247」。その中核事業となるのが金型製作期間の半減だ。デジタル技術や経験を駆使し金型づくりの大改革が進む。 全ての部品をQRで管理 材料に書かれたシリアルナンバー。入力…
金型経営者アンケート 次の10年を勝ち残るために取り組むこととは?【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】
自動車の電動化などによる金型需要の変化、少子高齢化による人手不足、アディティブ・マニファクチャリング(AM=付加製造)を始めとした新たな製造技術や技術革新―。金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくために、未来を見据えた取り組みが求められている。次の10年を勝ち残るために、金型事業をさらに強化していくのか、金型で培った技術を生かして新市場に挑むのか、成形分野へと事業領域を拡大していくのか、または自社で製品を生み出していく道に進むのか。さまざまな戦略が考えられる。先行きが見通しにくい中、多くの金型メーカーがこれから進むべき道を模索している。どのように光明を見出していくか。金型メーカーの未来を考えていく。
培った力 活かし、磨く
金型しんぶんが実施した事業の未来に関するアンケートで、7割の金型メーカー経営者が自社の事業の未来に対して不安を感じていることが明らかになった。顧客のニーズや工法がどのように変化し、現在手掛けている仕事はどうなっていくのか。多くの金型メーカーが将来を案じている実態が浮かび上がった。
金型経営者アンケート
7割が事業の先行きに不安
貴社の事業の未来についてどう感じているかとの問いに、「とても不安」としたのは30%、「不安」は40%、これに対して、「安心」は10%、「とても安心」が2.5%だった。「不安でも安心でもない」は17.5%だった。
理由を尋ねると、不安を抱える経営者の多くは「今手掛けている仕事が減っていきそう」と回答。海外への生産移管のほか、自動車の電動化や部品の共通化などによって金型需要の減少を危惧する声が多かった。そのほか、「原材料費の高騰」、「金型の価格が下がり、設備投資と労務費が合わない」とコストや利益面での課題を挙げる人も少なくなかった。
一方、事業の未来について安心と回答した人の理由では、「今手掛けている仕事が増えていきそう」という回答が多くを占めた。不安と回答する人が自動車の電動化による需要減少を危惧する中、モータコアやバッテリーなど電動化部品向け金型などで需要増加を期待する声が多かった。モータコア金型を手掛けるメーカーでは、売上高が昨年に比べて倍近く増加。さらに伸びることを見通している。
勝ち残るために、金型を強化する / 派生技術を伸ばす / 成形へと拡大する / 自社商品を創る
今後取り組むことを尋ねたところ、複数選択式で、70%が「金型で培った技術を生かし、部品加工など新分野の仕事に挑戦する」を選んだ。現在手掛けている金型の需要減少を見据え、半導体製造装置部品や医療機器など成長産業への参入を目指す企業が目立った。「事業再構築補助金」を活用して、新規設備を導入する企業も少なくない。
「金型の事業をさらに強化」は約5割が選択した。工場の新設や、設備の増強などによって、金型の生産能力を高める企業があった。また、金型の付加価値を高める技術の開発などに取り組む企業もみられた。手掛ける金型に競争力があり、優位性をさらに伸ばしたいことが選んだ要因の一つにあるようだ。
次いで多かったのが、「金型の技術を生かして自社製品を開発する」(37.5%)。強みの生産技術を生かして治具や周辺機器を開発する企業や、自社で企画から製造、販売までを一貫してこなす企業がみられた。一方で、中小規模の企業が多い金型メーカーで企画から製造、販売までを全てこなすには課題も多く、成功事例は少ない。さらに「プレスや成形による部品の量産に力を入れる」(25%)が続いた。
一方で、課題には82.5%が「人(技術者・指導者・経営者)が足りない」を選択した。次いで、「技術力が足りない」(62.5%)、「資金が足りない」(32.5%)、「設備が足りない」(30%)が続いた。
工業統計によると、金型製造業は19年で6696事業所。1990年の1万3115事業所に比べると、ほぼ半減している。少子高齢化が進展し、人材不足が深刻化する中、金型メーカーは今後も減少傾向が続くことが予測される。そうした事業環境のもとで、この先どう勝ち残っていくか。未来に向け、各社の戦略が問われている。
アンケートは金型しんぶんが作成したグーグルフォームから回答できるようにし、11月24日から12月16日まで実施した。金型メーカーの取締役以上の方にメールを通じて回答を依頼。計40人の回答があった。
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金型新聞 2023年1月10日
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