金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

ガラス両面MLAを量産 三重野計滋氏(ワークス社長)【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められている。既存の事業を強化するのか、派生技術を伸ばすのか、あるいは新事業に手を伸ばすのか。さまざまな戦略が考えられる。金型メーカー経営者にインタビューし、次の10年を勝ち残るための戦略について聞いた。

成形へと拡大する

ワークスは昨年、世界最小クラスのガラス製両面マイクロレンズアレイ(MLA)の金型を開発した。研究を重ね技術を確立し、2025年にもMLAを量産し次世代自動車や半導体製造装置などの光学レンズの需要を開拓する。

ワークス 三重野計滋社長

MLAの金型は、円柱状の上面の縦13×横13㎜のスペースに直径0・1㎜の凹んだ球面が1万個並ぶ。これを向かい合わせにしてガラス素材を挟みMLAを成形する。従来工法(ドライエッチング)と比べて格段に薄く、大量生産できる。

需要を見込んでいるのが自動車の自動運転や半導体露光装置、プロジェクタなどに用いる光学レンズ。レンズを薄くすることができれば製品を小型化でき、量産効果でコストも下げられる。おそらく数年後には400億円の需要が生まれるとみている。

最先端の金型と量産に取り組むのは中国や台湾などの追従を許さないため。かつて日本は技術力や生産力などあらゆる分野で世界一だった。しかし中国や台湾は日本の生産技術を取り入れ、いまや量や価格では日本を上回る。

日本の金型が勝ち残るにはどうすればいいか。それは、①「真似できない最先端の技術を追求する」ことと、②「金型や成形、組立などによる複合技術を発展させる」ことだと感じている。MLAの量産はまさにこの2つを融合したものだ。

短期の利益を重視する中国と比べ、日本は実用化に結び付きにくい技術開発にも熱心に取り組む。これは最先端の技術追求にとてもマッチする気質。その強みを生かし、素材や成形、組立など様々な企業と連携すれば日本はこれからも成長できる。

他の特集記事は以下から

金型新聞 2023年1月10日

関連記事

新規参入目立つ微細精密加工向け機械・工具 成長分野で需要拡大【特集:2022年金型加工技術5大ニュース】

金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…

金型でも金属AM技術の活用が広がる理由

コスト低減、用途開発進む 金型分野でも金属粉末を使った付加製造(AM)技術の活用が広がりつつある。背景には、装置を始めとしたAM技術の進化やユーザーの改善などによって、これまで課題とされていた製造コストが低下していること…

フタバ産業 超ハイテンを冷間で量産【特集:プレス加工最前線】

自動車のボデー部品や排気系部品など手掛けるフタバ産業は1470MPa超ハイテン材の冷間プレス部品の量産を確立、今年1月に発売した新型プリウスに採用された。先代プリウスはホットスタンプを用いた部品を採用していたが、冷間プレ…

【特集:技能レス5大テーマ】3.研削加工

誰でも高精度な研削 金型づくりで欠かせない研削加工。仕上げに近い工程のため、熟練技能を必要とする領域は多い。しかし近年、長年培った経験やノウハウを持っていなくても高精度の研削加工ができる機械や装置などが登場している。人手…

【特集】どうなる、5Gで求められる金型技術

高速通信規格「5G」の社会実装が本格化することで、金型にはどんな影響があるのか。また、どんな金型技術が求められるようになるのか。日本情報技術産業協会(JEITA)や先進企業などへの取材を通じ、今後の方向性を探る。 目次P…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト