成形技術の進化で変わる金型 構造部品など増える 電気自動車(EV)が金型づくりにも大きな影響を及ぼすことは間違いない。とりわけ、エンジンがなくなることでダイカスト型の減少を懸念する声も多い。元リョービで、日本ダイカスト…
ガラス両面MLAを量産 三重野計滋氏(ワークス社長)【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】
EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められている。既存の事業を強化するのか、派生技術を伸ばすのか、あるいは新事業に手を伸ばすのか。さまざまな戦略が考えられる。金型メーカー経営者にインタビューし、次の10年を勝ち残るための戦略について聞いた。
成形へと拡大する
ワークスは昨年、世界最小クラスのガラス製両面マイクロレンズアレイ(MLA)の金型を開発した。研究を重ね技術を確立し、2025年にもMLAを量産し次世代自動車や半導体製造装置などの光学レンズの需要を開拓する。

MLAの金型は、円柱状の上面の縦13×横13㎜のスペースに直径0・1㎜の凹んだ球面が1万個並ぶ。これを向かい合わせにしてガラス素材を挟みMLAを成形する。従来工法(ドライエッチング)と比べて格段に薄く、大量生産できる。
需要を見込んでいるのが自動車の自動運転や半導体露光装置、プロジェクタなどに用いる光学レンズ。レンズを薄くすることができれば製品を小型化でき、量産効果でコストも下げられる。おそらく数年後には400億円の需要が生まれるとみている。
最先端の金型と量産に取り組むのは中国や台湾などの追従を許さないため。かつて日本は技術力や生産力などあらゆる分野で世界一だった。しかし中国や台湾は日本の生産技術を取り入れ、いまや量や価格では日本を上回る。
日本の金型が勝ち残るにはどうすればいいか。それは、①「真似できない最先端の技術を追求する」ことと、②「金型や成形、組立などによる複合技術を発展させる」ことだと感じている。MLAの量産はまさにこの2つを融合したものだ。
短期の利益を重視する中国と比べ、日本は実用化に結び付きにくい技術開発にも熱心に取り組む。これは最先端の技術追求にとてもマッチする気質。その強みを生かし、素材や成形、組立など様々な企業と連携すれば日本はこれからも成長できる。
他の特集記事は以下から
- 金型経営者アンケート 次の10年を勝ち残るために取り組むこととは?【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】
- 金型製作の効率化を追求 笹山勝氏(ササヤマ社長)【金型を強化する】
- 低廉化金型を開発 魚岸成光氏(魚岸精機工業社長)【金型を強化する】
- 微細加工でブランド化 稲垣哲也氏(アイジーエヴァース社長)【派生技術を伸ばす】
- メンテナンスに革命を 清水一蔵氏(福井精機工業社長)【成形へと拡大する】
- 自ら商品を生み出す道に 山添重幸氏(かいわ社長)【自社商品を創る】
- BtoC向け開拓に力 浦竹重行氏(東亜成型社長)【自社商品を創る】
金型新聞 2023年1月10日
関連記事
業界の弱体化は顧客にマイナス ユーザーと金型メーカーはどちらかが欠けても成り立たない「イコールパートナー」だと訴えてきました。我々の事業を安定させるためにも、値上げは粘り強く要求していくべきで、そのためには足並みをそろえ…
100年に一度の変革期と言われる自動車業界。それを語るときに欠かせないキーワードが「CASE」だ。「C=コネクテッド(つながる)」、「A=オートノマス(自動運転)」、「S=シェア(共有)」、「E=エレクトリック(電動化…
金型メーカーの生産性向上が急務だ。少子高齢化による人手不足の深刻化に加え、金型メーカー事業所数の減少により1社当たりの生産負担が増加し、より多くの金型を生産できるかが金型メーカーの持続的成長の重要な要素の一つとなっている…
昨秋、日本金型工業会は6年ぶりに改訂した「令和時代の金型産業ビジョン」で、金型メーカーはこれまでのように単に言われたものを作るだけの「工場」から、顧客に価値提供する「企業」への変革が必要だと指摘した。これまで続けてきた…


